【標準】漸化式(べき乗型)
ここでは、漸化式に $n$ 乗が入った場合を考えていきます。
なぜべき乗型を特殊解型で解くことができないか
漸化式は、【基本】漸化式(特殊解型)や【標準】漸化式(特殊解型)で見たように、特殊解型によく似ています。違う点は、 $+3^n$ がついているところですね。ここが $n$ 乗になっている点が異なります。
この違いのせいで、特殊解型の解法は使えません。まずは、このことを確認していきます。
特殊解型の場合、まずは、 $a_{n+1},a_{n}$ を $\alpha$ とおいた式(特性方程式)を考えて、特殊解を求めるのでしたね。
\begin{eqnarray}
\alpha &=& 2\alpha+3^n \\[5pt]
\alpha &=& -3^n \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。このことから、次の2つの式
\begin{eqnarray}
a_{n+1} &=& 2a_n+3^n \\[5pt]
-3^n &=& 2\cdot (-3^n)+3^n \\[5pt]
\end{eqnarray}を辺々引いて、次の式が得られます。
\begin{eqnarray}
a_{n+1}+3^n &=& 2(a_n+3^n)
\end{eqnarray}ここまで見るとうまくいってそうですが、ここからマズいことが起こります。\[ b_n=a_n+3^n \]とおいてみましょう。こうすると、右辺は $2b_n$ となりますね。しかし、左辺は $b_{n+1}$ にはなりません。なぜなら、\[ b_{n+1}=a_{n+1}+3^{n+1} \]となるからです。 $3^n$ ではなく、 $3^{n+1}$ になっている点がポイントです。このことから $b_{n+1}=2b_n$ が成り立たないため、等比数列に帰着する、という技が使えないんですね。
こういう理由で、今の場合は、特殊解型の解法は使えません。
べき乗型の解き方
先ほど見た通り、漸化式\[ a_{n+1}=2a_n+3^n \]の $3^n$ の部分がやっかいでしたね。やっかいな理由は、ここに $n$ が入っている点です。ここが $n$ の入っていない定数なら、特殊解型に帰着できます。
そのため、 $n$ 乗を取り除くことを考えましょう。つまり、両辺を $3^n$ で割るということです。そうすると、 $+3^n$ の部分からは $n$ 乗がなくなります。
でも、そうしたら、 $a_n$ のところが問題になるのではないか、と思うかもしれませんね。実際、 $3^n$ で割ると、次のようになります。\[ \frac{a_{n+1} }{3^n}=2\cdot\frac{a_n}{3^n}+1 \]右辺の1項目を見てピンと来る人もいるかもしれませんが、\[ b_n=\frac{a_n}{3^n} \]とおけば、きれいになることがわかります。\[ b_{n+1} = \frac{a_{n+1} }{3^{n+1} } = \frac{a_{n+1} }{3^n}\times\frac{1}{3} \]となることから、以下のように変形できます。
\begin{eqnarray}
3b_{n+1} &=& 2b_n+1 \\[5pt]
b_{n+1} &=& \frac{2}{3}b_n+\frac{1}{3} \\[5pt]
\end{eqnarray}これは、特殊解型の漸化式です。最後の項には $n$ がないので、特殊解型に帰着されるんですね。もとの漸化式にあった $n$ 乗は、数列の方に押し込んだ形になります。(なお、 $3^n$ で漸化式を割るのではなく、はじめから $3^{n+1}$ で割っても同じ結果になります)
こうなれば、後は特殊解を求めて解いていけばいいですね。
\begin{eqnarray}
\alpha &=& \frac{2}{3}\alpha +\frac{1}{3} \\[5pt]
\alpha &=& 1 \\[5pt]
\end{eqnarray}と特殊解を求めることができるので、
\begin{eqnarray}
b_{n+1} &=& \frac{2}{3}b_n+\frac{1}{3} \\[5pt]
1 &=& \frac{2}{3}\cdot 1+\frac{1}{3} \\[5pt]
\end{eqnarray}を辺々引いて
\begin{eqnarray}
b_{n+1}-1 &=& \frac{2}{3} (b_n-1)
\end{eqnarray}が成り立ちます。ここで
\begin{eqnarray}
b_1-1 &=& \frac{a_1}{3^1}-1 &=& -\frac{2}{3}
\end{eqnarray}となるので、
\begin{eqnarray}
b_n-1 &=& -\frac{2}{3} \cdot \left(\frac{2}{3}\right)^{n-1} = -\left(\frac{2}{3}\right)^n \\[5pt]
b_n &=& 1-\left(\frac{2}{3}\right)^n
\end{eqnarray}となります。
これより、
\begin{eqnarray}
a_n=3^nb_n=3^n-2^n
\end{eqnarray}となることがわかります。これが答えです。
おわりに
ここでは、べき乗型の漸化式から一般項を求める問題を見ました。べき乗の部分が残っていると計算がうまくいかないので、漸化式の両辺をべき乗で割る、というポイントをおさえておきましょう。