【標準】平均値の定理(具体的にcを求める)
ここでは、平均値の定理に出てくる c を具体的に求めていきます。
平均値の定理の復習
【基本】平均値の定理で見たように、平均値の定理とは、ざっくりいうと「微分可能な関数のグラフなら、2点を結んだ直線の傾きと同じ傾きを持つ接線がその2点間に存在する」という内容で、もう少し厳密に書くと次のようになります。
図形的に表すと次のようになります。
左辺にある分数は、 $(a,f(a))$ と $(b,f(b))$ とを結んだ直線の傾きを表していて、右辺は接線の傾きを表しています。この2つが一致するような接線が2点の間にある、というのが平均値の定理の内容です。
一般的には、この式にある $c$ がどのような値なのかはわかりません。しかし、特殊な状況であれば、具体的に求めることもできます。以下では、平均値の定理についての理解を深めるため、そのような例をいくつか見ていくことにしましょう。
対数関数と平均値の定理
対数関数は $x\gt 0$ の範囲で微分可能なので、平均値の定理から、この式を満たす $c$ が存在する、ということは、平均値の定理で保証されています。その $c$ を具体的に求めてみましょう、というのが、この問題の趣旨です。
まず、左辺は\[ \frac{f(e)-f(1)}{e-1}=\frac{1}{e-1} \]となります。また、右辺は\[f'(c)=\dfrac{1}{c}\]です。この2つが等しいとすると、 $c=e-1$ となります。 $e$ はだいたい $2.7$ くらいの値なので、\[ 1\lt e-1 \lt e \]となることがわかります。よって、 $c=e-1$ が、答えとなります。
実際、 $(1,f(1))$ と $(e,f(e))$ とを結んだ直線と、 $(e-1,f(e-1))$ での接線をかいてみると、上のようになり、2つの直線は平行となります。
無理関数と平均値の定理
$f(x)=\sqrt{x}$ も、 $x\gt 0$ の範囲で微分可能なので、平均値の定理が使えます。よって、問題文中にあるような $c$ は存在するのですが、今は具体的にその $c$ が求められるので、求めてみましょう、という問題です。
左辺は\[ \frac{\sqrt{b}-\sqrt{a} }{b-a} \]となり、右辺は\[ \frac{1}{2\sqrt{c} } \]となります。この2つが等しいとすると、
\begin{eqnarray}
\frac{\sqrt{b}-\sqrt{a} }{b-a} &=& \frac{1}{2\sqrt{c} } \\[5pt]
\sqrt{c} &=& \frac{1}{2}\cdot \frac{b-a}{\sqrt{b}-\sqrt{a} } \\[5pt]
&=& \frac{1}{2}\cdot \frac{(b-a)(\sqrt{b}+\sqrt{a})}{(\sqrt{b}-\sqrt{a})(\sqrt{b}+\sqrt{a})} \\[5pt]
&=& \frac{1}{2}(\sqrt{b}+\sqrt{a}) \\[5pt]
c &=& \frac{1}{4}(\sqrt{b}+\sqrt{a})^2 \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。
ただ、このようにして求めた $c$ が、 $a\lt c\lt b$ も満たしているかどうかは、あまり明らかではありません。平均値の定理から、問題文中にあるような $c$ が存在することがわかっていて、その $c$ は先ほど求めた値以外ないので、自動的に $a\lt c\lt b$ も満たされることになるのですが、本当にそうなっているか確かめてみましょう。
まず、 $a$ と比べると $b$ の方が大きいので
\begin{eqnarray}
\frac{1}{4}(\sqrt{b}+\sqrt{a})^2
\lt
\frac{1}{4}(\sqrt{b}+\sqrt{b})^2
=
b \\[5pt]
\end{eqnarray}であることがわかります。また、 $b$ と比べると $a$ の方が小さいので
\begin{eqnarray}
\frac{1}{4}(\sqrt{b}+\sqrt{a})^2
\gt
\frac{1}{4}(\sqrt{a}+\sqrt{a})^2
=
a \\[5pt]
\end{eqnarray}であることがわかります。よって、たしかに\[ a\lt \frac{1}{4}(\sqrt{b}+\sqrt{a})^2 \lt b \]であることがわかります。
おわりに
ここでは、平均値の定理に出てくる $c$ を具体的に求めてみました。一般的には、そのような $c$ が簡単に求められるかどうかはわからないし、求められたとしても $a\lt c\lt b$ を示すのがやっかいなこともあります。
平均値の定理は、直接 $c$ が求められなくても、存在することが利用できる点がメリットなのですが、そのメリットを利用して平均値の定理を使う問題は、【応用】平均値の定理と不等式 などで見ることができます。