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【標準】平均値の定理(具体的にcを求める)

ここでは、平均値の定理に出てくる c を具体的に求めていきます。

📘 目次

平均値の定理の復習

【基本】平均値の定理で見たように、平均値の定理とは、ざっくりいうと「微分可能な関数のグラフなら、2点を結んだ直線の傾きと同じ傾きを持つ接線がその2点間に存在する」という内容で、もう少し厳密に書くと次のようになります。

平均値の定理
関数 $f(x)$ が、閉区間 $[a,b]$ で連続で、開区間 $(a,b)$ で微分可能ならば、\[ \frac{f(b)-f(a)}{b-a}=f'(c) \]を満たす $c$ が、開区間 $(a,b)$ 内に存在する。

図形的に表すと次のようになります。

左辺にある分数は、 $(a,f(a))$ と $(b,f(b))$ とを結んだ直線の傾きを表していて、右辺は接線の傾きを表しています。この2つが一致するような接線が2点の間にある、というのが平均値の定理の内容です。

一般的には、この式にある $c$ がどのような値なのかはわかりません。しかし、特殊な状況であれば、具体的に求めることもできます。以下では、平均値の定理についての理解を深めるため、そのような例をいくつか見ていくことにしましょう。

対数関数と平均値の定理

例題1
$f(x)=\log x$ のとき、\[ \frac{f(e)-f(1)}{e-1}=f'(c) ,\ (1\lt c\lt e) \]を満たす $c$ を求めなさい。

対数関数は $x\gt 0$ の範囲で微分可能なので、平均値の定理から、この式を満たす $c$ が存在する、ということは、平均値の定理で保証されています。その $c$ を具体的に求めてみましょう、というのが、この問題の趣旨です。

まず、左辺は\[ \frac{f(e)-f(1)}{e-1}=\frac{1}{e-1} \]となります。また、右辺は\[f'(c)=\dfrac{1}{c}\]です。この2つが等しいとすると、 $c=e-1$ となります。 $e$ はだいたい $2.7$ くらいの値なので、\[ 1\lt e-1 \lt e \]となることがわかります。よって、 $c=e-1$ が、答えとなります。

実際、 $(1,f(1))$ と $(e,f(e))$ とを結んだ直線と、 $(e-1,f(e-1))$ での接線をかいてみると、上のようになり、2つの直線は平行となります。

無理関数と平均値の定理

例題2
$f(x)=\sqrt{x}$ で $0\lt a\lt b$ のとき、\[ \frac{f(b)-f(a)}{b-a}=f'(c) ,\ (a\lt c\lt b) \]を満たす $c$ を求めなさい。

$f(x)=\sqrt{x}$ も、 $x\gt 0$ の範囲で微分可能なので、平均値の定理が使えます。よって、問題文中にあるような $c$ は存在するのですが、今は具体的にその $c$ が求められるので、求めてみましょう、という問題です。

左辺は\[ \frac{\sqrt{b}-\sqrt{a} }{b-a} \]となり、右辺は\[ \frac{1}{2\sqrt{c} } \]となります。この2つが等しいとすると、
\begin{eqnarray} \frac{\sqrt{b}-\sqrt{a} }{b-a} &=& \frac{1}{2\sqrt{c} } \\[5pt] \sqrt{c} &=& \frac{1}{2}\cdot \frac{b-a}{\sqrt{b}-\sqrt{a} } \\[5pt] &=& \frac{1}{2}\cdot \frac{(b-a)(\sqrt{b}+\sqrt{a})}{(\sqrt{b}-\sqrt{a})(\sqrt{b}+\sqrt{a})} \\[5pt] &=& \frac{1}{2}(\sqrt{b}+\sqrt{a}) \\[5pt] c &=& \frac{1}{4}(\sqrt{b}+\sqrt{a})^2 \\[5pt] \end{eqnarray}となります。

ただ、このようにして求めた $c$ が、 $a\lt c\lt b$ も満たしているかどうかは、あまり明らかではありません。平均値の定理から、問題文中にあるような $c$ が存在することがわかっていて、その $c$ は先ほど求めた値以外ないので、自動的に $a\lt c\lt b$ も満たされることになるのですが、本当にそうなっているか確かめてみましょう。

まず、 $a$ と比べると $b$ の方が大きいので
\begin{eqnarray} \frac{1}{4}(\sqrt{b}+\sqrt{a})^2 \lt \frac{1}{4}(\sqrt{b}+\sqrt{b})^2 = b \\[5pt] \end{eqnarray}であることがわかります。また、 $b$ と比べると $a$ の方が小さいので \begin{eqnarray} \frac{1}{4}(\sqrt{b}+\sqrt{a})^2 \gt \frac{1}{4}(\sqrt{a}+\sqrt{a})^2 = a \\[5pt] \end{eqnarray}であることがわかります。よって、たしかに\[ a\lt \frac{1}{4}(\sqrt{b}+\sqrt{a})^2 \lt b \]であることがわかります。

おわりに

ここでは、平均値の定理に出てくる $c$ を具体的に求めてみました。一般的には、そのような $c$ が簡単に求められるかどうかはわからないし、求められたとしても $a\lt c\lt b$ を示すのがやっかいなこともあります。

平均値の定理は、直接 $c$ が求められなくても、存在することが利用できる点がメリットなのですが、そのメリットを利用して平均値の定理を使う問題は、【応用】平均値の定理と不等式 などで見ることができます。

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