【応用】三項間漸化式(特性方程式が重解を持つ)
ここでは、三項間漸化式から一般項を求める問題のうち、特性方程式が重解を持つ場合を見ていきます。
三項間漸化式から一般項を求めるの復習
【応用】三項間漸化式や【応用】フィボナッチ数列の一般項で三項間漸化式について考えました。ここで、もう一度一般項の求め方を振り返っておきましょう。
$a_{n+2}+pa_{n+1}+qa_n=0$ という漸化式があった場合、次の特性方程式\[ x^2+px+q=0 \]を満たす $\alpha,\beta$ を求めればいいのでしたね。これらの特殊解 $\alpha,\beta$ を用いれば、もとの漸化式は
\begin{eqnarray}
a_{n+2}-(\alpha+\beta)a_{n+1}+\alpha\beta a_n=0
\end{eqnarray}と書けるので、移項すれば次の2つの式が得られます。
\begin{eqnarray}
a_{n+2}-\alpha a_{n+1} &=& \beta(a_{n+1}-\alpha a_n) \\[5pt]
a_{n+2}-\beta a_{n+1} &=& \alpha(a_{n+1}-\beta a_n)
\end{eqnarray}比が一定なので、それぞれの式から、次のような関係式が2つ得られます。
\begin{eqnarray}
a_{n+1}-\alpha a_n &=& \beta^{n-1} (a_2-\alpha a_1) \\[5pt]
a_{n+1}-\beta a_n &=& \alpha^{n-1} (a_2-\beta a_1) \\[5pt]
\end{eqnarray}どちらの式も、右辺を計算することはできます。また、左辺同士を引けば、 $a_n$ の項だけが残ります。
以上から、 $a_n$ の一般項が求められる、というのが三項間漸化式から一般項を求める方法です。
ここで、1つ注意が必要なのは、 $\alpha,\beta$ が同じ場合は、最後の部分がうまくいかない、ということです。最後で「左辺同士を引けば、 $a_n$ の項だけが残る」と書きましたが、もし $\alpha=\beta$ のとき、つまり、特性方程式が重解を持つときには、 $a_n$ も消えてしまいます。
このときは、別の攻め方が必要です。以下で、例題を見てみましょう。
三項間漸化式(特性方程式が重解を持つ場合)
特性方程式は\[ x^2-4x+4=0 \]なので、 $x=2$ となり、重解を持つこととなります。よって、
\begin{eqnarray}
a_{n+2}-2a_{n+1}=2(a_{n+1}-2a_n)
\end{eqnarray}が成り立ちます。これから、
\begin{eqnarray}
a_{n+1}-2a_n
&=&
2^{n-1}(a_2-2a_1) \\[5pt]
&=&
2^{n+1} \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。ここで得られる式\[ a_{n+1}-2a_n=2^{n+1} \]は、特性方程式が重解を持つため1種類しか出てきません。そのため、この式だけからどうにか一般項を求めるしかありません。
ただ、これの一般項の求め方は、すでに見ています。【標準】漸化式(べき乗型)で見たように、両辺を $2^{n+1}$ で割ればいいんですね。
これによって、\[ \frac{a_{n+1} }{2^{n+1} }=\frac{a_n}{2^n}+1 \]となります。ここで、 $b_n=\dfrac{a_n}{2^n}$ とおけば、数列 $\{b_n\}$ は等差数列であり、初項は $0$ となることがわかります。よって、\[ b_n=n-1 \]となります。よって、\[ a_n=2^n b_n=2^n(n-1) \]となります。
特性方程式が重解の場合は、等比数列の式、つまり、冒頭の例でいうところの\[ a_{n+1}-\alpha a_n = \alpha^{n-1} (a_2-\alpha a_1) \]は、両辺を $\alpha^{n+1}$ で割って、べき乗型の漸化式として解いていくことになります。
なお、重解ではない場合も、べき乗型として解いていくことは可能ですが、冒頭で見たような「2つの等比数列の式」を使った方が計算が楽になることが多いです。
おわりに
ここでは、特性方程式が重解を持つときの、三項間漸化式について見てきました。後半部分の解き方は少し変わりますが、今まで見た内容の組合せなので、一つ一つをしっかり押さえていきましょう。