【応用】2つの接点を通る直線
ここでは、円の外部から円に接線を引き、2つの接点を通る直線の方程式を求める問題を考えます。
2つの接点を通る直線
【標準】円に引いた接線の方程式で見た内容の応用です。円の外部の点から円に引いた接線の方程式は、2つの出し方がありましたね。「その点を通る直線が、円に接する」と考えるか「円の接線がその点を通る」と考えるか、です。今の場合、接点の座標を使うことが予想されるので、後者の考え方を使うことにしましょう。
円 $x^2+y^2=5$ 上の点 $(p,q)$ について考えましょう。【基本】円の接線の方程式で見た内容により、この点での接線の方程式は\[ px+qy=5 \]となります。これが点 $(-1,3)$ を通るので、\[ -p+3q=5 \]が成り立ちます。これより、 $p=3q-5$ が成り立ちます。
点 $(p,q)$ は円上の点でもあるので、円の方程式に代入して
\begin{eqnarray}
(3q-5)^2+q^2 &=& 5 \\[5pt]
9q^2-30q+25+q^2 &=& 5 \\[5pt]
q^2-3q+2 &=& 0 \\[5pt]
(q-1)(q-2) &=& 0 \\[5pt]
q &=& 1,2 \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。また、 $p=3q-5$ なので、接点の座標は $(-2,1)$, $(1,2)$ となります。
これら2つの接点を通る直線の方程式を $y=ax+b$ とおけば
\begin{eqnarray}
1&=&-2a+b \\
2&=&a+b \\
\end{eqnarray}となり、辺々引けば $a=\dfrac{1}{3}$ が得られ、1つ目の式に代入すると $b=\dfrac{5}{3}$ が得られます。よって求める直線の方程式は、\[ y=\frac{1}{3}x+\frac{5}{3} \]となります。
何の変哲もない解き方のようですが、実は考え方によって、もっと楽に解くことができます。
2つの接点を通る直線を楽に求める
先ほど求めた式を一般形で書くと\[ -x+3y=5 \]と書くことができます。これと、「接線が点 $(-1,3)$ を通る」ことを式で表したときに得られた\[ -p+3q=5 \]とを見比べてみましょう。なんだかすごく似ている気がしませんか?
これは、偶然ではありません。先ほどの解き方を、見直してみましょう。
円の外部の点から円に引いた接線は、2つ引くことができます。そのため、接点は2つできます。これを $\mathrm{ P }(p_1,p_2)$, $\mathrm{ Q }(q_1,q_2)$ とおくことにしましょう。それぞれの点における接線は、【基本】円の接線の方程式で見た内容により、
\begin{eqnarray}
p_1x+p_2y &=& 5 \\[5pt]
q_1x+q_2y &=& 5 \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。また、ともに、点 $(-1,3)$ を通るので、これらを代入した式が成り立つから
\begin{eqnarray}
-p_1+3p_2 &=& 5 \\[5pt]
-q_1+3q_2 &=& 5 \\[5pt]
\end{eqnarray}が成り立ちます。この式の見方を変えれば、 $\mathrm{ P }(p_1,p_2)$, $\mathrm{ Q }(q_1,q_2)$ が\[ -x+3y=5 \]を満たすことを表している、と考えることもできます。言い換えれば、 $-x+3y=5$ は、2つの接点を通る直線であることを表しているわけなんですね。つまり、この時点で、もう答えであることがわかるんですね。
この見方は、気づきにくいです。普通は、「この点がこの直線上にあるから、代入した式が成り立つ」と考えますが、ここでは、「代入した式が成り立つから、この点はこの直線上にある」と考えています。 $(x,y)$ の組と点とが対応しているので、どちらからも考えることができます。
こうした見方ができれば、接点の座標を求めることなく、 $-x+3y=5$ が求める式だとわかります。先ほどの解き方のうち、後半部分は丸々不要だった、というわけです。
おわりに
ここでは、2つの接点を通る直線の方程式について考えました。途中で得られる式が実は答えだった、ということに気づくのは難しいですが、それに気づけば無駄な計算をしなくても済みます。いろいろな考え方ができるようになって、不要な計算をせずに済むようにしましょう。