【応用】フィボナッチ数列の一般項
ここでは、三項間漸化式の例として、フィボナッチ数列の一般項の求め方を見ていきます。
フィボナッチ数列
次のような有名な数列について考えていきます。
状況によって、少し表現が違ったり、項が1つズレることもありますが、ここでは、この定義のフィボナッチ数列を考えます。具体的にいくつか項を書いていくと\[ 1,1,2,3,5,8,13,21,34,\cdots \]となっていきます。前の2つを足すと次の項になる、という数列です。
この数列は有名でいろいろな性質があるのですが、ここでは、【応用】三項間漸化式で見た内容を用いて、一般項を求める練習問題として見ていくことにします。
フィボナッチ数列の一般項
フィボナッチ数列の漸化式\[ F_{n+2} = F_{n+1}+F_n \]を変形していきましょう。【応用】三項間漸化式で見たとおり、これを次のような形に書ければいいのでしたね。\[ F_{n+2}-\alpha F_{n+1} = \beta(F_{n+1}-\alpha F_n) \]こう書ければ、 $\{F_{n+1}-\alpha F_n\}$ が等比数列であることがわかるため、 $n$ の式で書けるようになります。
右辺を左辺に移行すれば\[ F_{n+2}-(\alpha+\beta) F_{n+1} +\alpha\beta F_n=0 \]となります。同じように元の漸化式も変形すると\[ F_{n+2}-F_{n+1}-F_n=0 \]となります。これらのことから、 $\alpha,\beta$ は\[ x^2-x-1=0 \]の解になることがわかります。これはちょうど漸化式で $F_{n+2}$ を $x^2$ に、 $F_{n+1}$ を $x$ に、 $F_n$ を $1$ に置き換えた式になっています。
これを解くと、\[ x=\frac{1\pm\sqrt{5} }{2} \]となります。このプラスの方を $\alpha$ とし、マイナスの方を $\beta$ とすると、次の2つの式が成り立ちます。
\begin{eqnarray}
F_{n+2}-\alpha F_{n+1} &=& \beta(F_{n+1}-\alpha F_n) \\[5pt]
F_{n+2}-\beta F_{n+1} &=& \alpha(F_{n+1}-\beta F_n) \\[5pt]
\end{eqnarray}1つ目の式から、 $\{F_{n+1}-\alpha F_n\}$ は、公比が $\beta$ の等比数列であることがわかります。初項は
\begin{eqnarray}
F_2-\alpha F_1
&=&
1-\frac{1+\sqrt{5} }{2} \\[5pt]
&=&
\frac{1-\sqrt{5} }{2} \\[5pt]
&=&
\beta
\end{eqnarray}であることがわかります。よって、\[ F_{n+1}-\alpha F_n=\beta^n \]となります。
また、2つ目の式から $\{F_{n+1}-\beta F_n\}$ は公比が $\alpha$ の等比数列であることがわかります。初項は
\begin{eqnarray}
F_2-\beta F_1
&=&
1-\frac{1-\sqrt{5} }{2} \\[5pt]
&=&
\frac{1+\sqrt{5} }{2} \\[5pt]
&=&
\alpha
\end{eqnarray}なので、\[ F_{n+1}-\beta F_n=\alpha^n \]となります。
2つを並べると
\begin{eqnarray}
F_{n+1}-\alpha F_n &=& \beta^n \\[5pt]
F_{n+1}-\beta F_n &=& \alpha^n
\end{eqnarray}となり、下の式から上の式を引けば
\begin{eqnarray}
(\alpha-\beta)F_n &=& \alpha^n-\beta^n \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。ここで、\[ \alpha-\beta=\frac{1+\sqrt{5} }{2}-\frac{1-\sqrt{5} }{2}=\sqrt{5} \]なので、
\begin{eqnarray}
F_n &=& \frac{1}{\sqrt{5} }\left\{\left(\frac{1+\sqrt{5} }{2}\right)^n-\left(\frac{1-\sqrt{5} }{2}\right)^n\right\} \\[5pt]
\end{eqnarray}となることがわかります。これが、フィボナッチ数列の一般項です。
途中で二次方程式が出てくるので、このような一般項になることは理解できると思いますが、少し不思議ですね。漸化式を見れば各項が整数になることはわかりますが、一般項からは整数になることはあまりすぐにはわからないですからね。
ちなみに、この一般項に出てくる $\dfrac{1+\sqrt{5} }{2}$ は黄金比と呼ばれているもので、これもよく数学のいろいろなところで登場します。
おわりに
ここでは、三項間漸化式の一般項を求める練習として、フィボナッチ数列の一般項を求めてみました。直感的には整数にならないような式が出てきましたが、すべて整数になる、というのは不思議な感じがしますね。