【応用】円と直線の共有点を通る円
ここでは、円と直線の共有点を通る円の方程式について見ていきます。
円と直線の共有点を通る円
図をかくと、次のようになります。
素直に考えれば、2つの共有点の座標を求め、「それらと原点を通る」という条件から、円の方程式を出すことになります。
この例題では、共有点の x 座標は
\begin{eqnarray}
x^2+(-x+2)^2 &=& 10 \\[5pt]
2x^2-4x-6 &=& 0 \\[5pt]
(x-3)(x+1) &=& 0 \\[5pt]
x &=& 3,-1
\end{eqnarray}と求められるから、共有点の座標は $(3,-1)$, $(-1,3)$ となります。これらと $(0,0)$ の3点が\[
x^2+y^2+lx+my+n=0 \]上にある、という条件から、l, m, n を求めることはできます。
しかし、もっと簡単に解く方法があります。
知っていないとなかなか思いつかないのですが、「円と直線の共有点を通る円」の方程式を、無理やり作る、という方法があるんですね。【標準】定点を通る円で見た内容を、逆に使うことになります。
定数 k を用いて、次のような式を考えてみます。\[ (x^2+y^2-10)+k(x+y-2)=0 \]1つ目のカッコは円の方程式、2つ目のカッコは直線の方程式に対応しています。
円と直線の共有点 $(p,q)$ を上の式に入れてみると、どちらのカッコの中も $0$ となるので、上の式は「円と直線の共有点を通る図形」であることがわかります。しかも、円の方程式の形をしていますね(半径が正の場合に限ります)。これを使いましょう。
2つの共有点を通る円はたくさんあるのですが、それは k にいろいろな値を入れることができることと対応しています。今求めたい円の方程式は、さらに原点も通るものなので、上の方程式に代入してみましょう。
\begin{eqnarray}
(0+0-10)+k(0+0-2) &=& 0 \\[5pt]
-2k &=& 10 \\[5pt]
k &=& -5 \\[5pt]
\end{eqnarray}が得られます。これを上の式に代入すると、
\begin{eqnarray}
(x^2+y^2-10)-5(x+y-2) &=& 0 \\[5pt]
x^2+y^2-5x-5y &=& 0 \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。半径が正になるので、これは円の方程式ですね。異なる3点を通る円は1つしかないので、これが答えになります。
k の値を求めるだけで答えが得られます。共有点の座標を求めなくてもいいので、かなり計算が楽になりますね。
円と直線の共有点を通る円の方程式
先ほどの例題を解く中で、\[ (x^2+y^2-10)+k(x+y-2)=0 \]は円と直線の共有点を通ることを見ました。ここでは、逆に、円と直線の2つの共有点を通る円は、すべてこの形で書けるのか、を一般的な状況で考えてみましょう。
平行移動をして、円の中心が原点になるようにしましょう。そして、円の方程式を $x^2+y^2-r^2=0$ とし、直線の方程式を $ax+by+c=0$ とします。このとき、\[ (x^2+y^2-r^2)+k(ax+by+c)=0 \]について考えましょう。
この式を変形すると
\begin{eqnarray}
\left(x+\frac{a}{2}k\right)^2 +\left(y+\frac{b}{2}k\right)^2 &=& r^2+\frac{a^2+b^2}{4}k^2-ck
\end{eqnarray}となります。これが円を表すのは、右辺が正のときだけですが、円を表すときは、中心の座標は\[ \left(-\frac{a}{2}k,-\frac{b}{2}k\right) \]となります。
さて、もし、ある円が、円 $x^2+y^2-r^2=0$ と直線 $ax+by+c=0$ の2つの共有点を通るとしましょう。このとき、2つの共有点を結んだ線分の垂直二等分線上に、この円の中心が来るはずです。そのため、円の中心は、直線 $bx-ay=0$ の上にあることがわかります。このことと、上で求めた中心の座標を比較すれば、円に対してただ1つの k が対応することがわかります。また、中心の座標が決まれば、共有点を通る円はただ1つに決まるので、この円の方程式は、対応する k を使って、\[ (x^2+y^2-r^2)+k(ax+by+c)=0 \]と書けることがわかります。
つまり、円 $x^2+y^2-r^2=0$ と直線 $ax+by+c=0$ の2つの共有点を通る円の方程式は、すべて\[ (x^2+y^2-r^2)+k(ax+by+c)=0 \]の形で書けることがわかります。
なお、【標準】定点を通る直線のときは、表せないものがありました。「 k がついているカッコの中が $0$ となる式は表せない」のでした。上の例題では、共有点を通る直線 $y=-x+2$ は k の値をどう変えても表せないということです。共有点を通る円については、すべてを表すことができます。
おわりに
ここでは、円と直線の共有点を通る円の方程式について見ました。この方程式は、円の方程式と k 倍した直線の方程式の和で表すことができるのでしたね。計算が楽になるので、使えるようになっておきましょう。