【応用】2つの円の交点を通る円や直線
ここでは、2つの円の交点を通る円や直線の方程式について考えていきます。
2つの円の交点を通る直線
(1) 2つの共有点を通る直線の方程式を求めなさい。
(2) 2つの共有点と、原点を通る円の方程式を求めなさい。
図をかくと、次のようになります。
(1)は、素直に求めるなら、1つ目の式と2つ目の式を辺々引いて
\begin{eqnarray}
14x+2y-25 &=& 25 \\[5pt]
y &=& -7x+25 \\[5pt]
\end{eqnarray}と変形し、これを1つ目の式に代入して交点を求め、直線の方程式を求める、という手順になります。共有点の x 座標は
\begin{eqnarray}
x^2+(-7x+25)^2 &=& 25 \\[5pt]
50x^2-350x+600 &=& 0 \\[5pt]
(x-3)(x-4) &=& 0 \\[5pt]
x &=& 3,4 \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。辺々を引いたときに得られた式 $y=-7x+25$ にこれらを代入すれば、共有点の座標は $(3,4)$, $(4,-3)$ となります。これらを通る直線を $y=ax+b$ とおけば
\begin{eqnarray}
4&=&3a+b \\[5pt]
-3&=&4a+b \\[5pt]
\end{eqnarray}の2つの式が出てくるので、辺々引けば $a=-7$ が得られ、 $b=25$ も得られます。ということで、求める直線の方程式は\[ y=-7x+25 \]となります。
これが答えなのですが、この答えをよく見てみましょう。これは、2つの円の方程式を辺々引いて得られた式そのものです。もう、一番初めに答えが出ています。これは偶然でしょうか。
「辺々引く」というのを、次のような式で考えてみましょう。
\begin{eqnarray}
(x^2+y^2-25)-(x^2-14x+y^2-2y+25)=0
\end{eqnarray}円の方程式の右辺が $0$ になるようにしてから、引いています。このとき、左辺は $x^2,y^2$ の項が消えるため、これは直線の方程式となります。また、 $(p,q)$ が2つの円の共有点だとすると、これをこの式に代入すれば、どちらのカッコの中も $0$ となるため、この直線は、2つの円の共有点をすべて通ることになります。
つまり、2つの円の方程式を辺々引いた時点で、「2つの円の共有点を通る直線」が得られていた、ということです。求めようとして求めたというよりは、「たまたま目的のものが得られていた」という感じがしますが、2点(2つの共有点)を通る直線は1つしかないので、これが答えになります。
これは、2つの方程式を引きましたが、同じように考えれば、次のことが成り立つことはわかるでしょう。
(1)では、 $k=-1$ として、 $x^2,y^2$ の項を消して、直線の方程式を出したわけですね。
なお、ここで見た内容は、【基本】2つの円の共有点(方程式に注目)とも関連しています。
2つの円の交点を通る円
先ほどの内容を使って、次は円の方程式を考えてみましょう。
先ほど見た内容から\[ (x^2+y^2-25)+k(x^2-14x+y^2-2y+25)=0 \]は2つの円の共有点を通る図形を表しています。これが原点を通るとすると
\begin{eqnarray}
-25+25k &=& 0 \\[5pt]
k &=& 1 \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。これより
\begin{eqnarray}
(x^2+y^2-25)+(x^2-14x+y^2-2y+25) &=& 0 \\[5pt]
2x^2+2y^2-14x-2y &=& 0 \\[5pt]
x^2+y^2-7x-y &=& 0 \\[5pt]
\end{eqnarray}が得られます。これは円の方程式ですね。2つの円は原点を通らないため、「2つの円の共有点と原点」は異なる3点です。異なる3点を通る円は1つしかないので、これが答えとなります。
共有点の座標がわからなくても、共有点を通る図形の方程式がわかるというのは不思議ですね。
なお、 k の値を変えれば、2つの共有点を通るいろいろな円が得られますが、 k が掛けられているカッコの中にある\[ x^2-14x+y^2-2y+25=0 \]だけは表すことができません。この円の方程式は k にどんな値を入れても得られません。
また、似たような話は、【応用】2直線の交点を通る直線でも扱っています。 k が掛けられているカッコの中に対応する直線は表せない、ということも共通しています。
おわりに
ここでは、2つの円の交点を通る円や直線の方程式を見ました。2つの円の方程式を定数倍して足せば、共有点を通る図形の方程式が得られる、ということがポイントでしたね。知らないと思いつかないですし、知らないと計算が大変になるので、ぜひともマスターしておきたい考え方です。