【基本】文字を使った式の表し方(商や分数との積)
ここでは、文字を使った式の表し方のルールを見ていきます。商に関連するものを見ていきます。
文字を使った式での商の表し方
【基本】文字を使った式の表し方(数字と文字の積)で見たように、数字と文字との積の場合、 $\times$ の記号は省略します。商の場合も、 $\div$ の記号は使いません。商は、分数を使って表します。
$1\div 2$ は、 $\dfrac{1}{2}$ と同じですね。これにならって、 $x\div 2$ は、 $\dfrac{x}{2}$ と書きます。 $a\div 5$ なら、 $\dfrac{a}{5}$ と表します。
$2m\div 3$ の場合は、 $2m$ ごと分子に持っていって、 $\dfrac{2m}{3}$ と表します。
文字を使った式での積の表し方(分数との積)
【基本】文字を使った式の表し方(数字と文字の積)では特に紹介していませんでしたが、分数と文字との積を扱うこともあります。この場合も、数を前に書きます。
例えば、$\dfrac{3}{4}\times x$ なら、 $\dfrac{3}{4}x$ と書きます。 $a\times \dfrac{1}{5}$ なら、 $\dfrac{1}{5}a$ と書きます。
$5$ で割ることと $\dfrac{1}{5}$ を掛けることは同じです。なので、 $a\div 5$ も $a\times \dfrac{1}{5}$ も同じ結果になります。このことから、 $\dfrac{a}{5}$ と $\dfrac{1}{5}a$ は同じことがわかります。実際、どちらを用いても構いません。
$\dfrac{2m}{3}$ も、 $\dfrac{2}{3}m$ と同じ内容です。どちらの表現を用いても構いません。
文字を使った式での商の表し方(負の数)
【基本】正負の数の除法の後半で見た通り、数字同士の割り算の場合、 $-1\div 2$ や $1\div (-2)$ は、 $-\dfrac{1}{2}$ というように、分数の前にマイナスの記号を出します。 $\dfrac{-1}{2}$ や $\dfrac{1}{-2}$ のままにはしません。
文字を使った式でも同様です。 $-5m\div 8$ の場合は、 $\dfrac{-5m}{8}$ のままにせず、マイナスの記号を分数の前に出します。そのため、 $-\dfrac{5m}{8}$ とします。
$5m\div (-8)$ の場合も、 $\dfrac{5m}{-8}$ のままにせず、 $-\dfrac{5m}{8}$ とします。
文字を使った式での商の表し方(カッコのある式)
次のようにカッコのある式の割り算も、分数を用いて表します。\[ (a+b)\div 3 \]これは、 $(a+b)$ をまるまる分子に持っていき、カッコを省略します。その結果、\[ \dfrac{a+b}{3} \]と表すことになります。この分数の形であれば、「分子全体を $3$ で割る」ことを表しているため、カッコを省略しても内容は変わりません。
先ほど、 $\dfrac{a}{5}$ は $\dfrac{1}{5}a$ とも表すと書きましたが、今回のケースで同じように表すと、\[ \dfrac{1}{3}(a+b) \]となります。こう書く場合、カッコは省略できません。\[ \frac{1}{3}a+b \] と書いてしまうと、これは、「 $a\div 3+b$ 」のことになってしまい、もとの式と内容が違ってしまいます。
例題
いろいろルールがありましたが、最後に例題を解いて内容を確認してみましょう。
(1) $3a\div(-5)$
(2) $x-y\div 2$
(3) $(x-y)\div 2$
(1)は、 $\div$ の代わりに分数を使います。分母にあるマイナスを前に出して、 $-\dfrac{3a}{5}$ とします。 $-\dfrac{3}{5}a$ でもかまいません。
(2)は、割り算を先にするので、 $-y\div 2$ の部分を分数にします。 $x-\dfrac{y}{2}$ となります。 $x-\dfrac{1}{2}y$ でもかまいません。
(3)は、カッコ全体を割るので、カッコの中全体が分子にきます。 $\dfrac{x-y}{2}$ となります。 $\dfrac{1}{2}(x-y)$ でも構いません。
(2)と(3)は似ているようでまったく異なります。違いに注意しましょう。
中学以降帯分数はほとんど出てこない
ここで見たように、分数と文字との積は、 $\dfrac{3}{5}a$ というように、 $\times$ の記号を省略します。逆に、数字と文字が続けて書いてある場合は、間の $\times$ が省略されているのだと考えます。
そのため、小学校のときに学んだ帯分数を使うと、いろいろと問題が出てきてしまいます。例えば、 $\dfrac{5}{3}a$ を $1\dfrac{2}{3}a$ と書いたとしましょう。 $1\dfrac{2}{3}$ は、 $1$ と $\dfrac{2}{3}$ とを足したものです。一方、 $\dfrac{2}{3}a$ は掛け算です。 $1\dfrac{2}{3}$ と $a$ との積であることを表すには、足し算のほうが優先される、としなければならず、一般的な計算のルールと整合性がとれなくなってしまいます。
そのため、中学以降の数学では、帯分数はほとんど使いません。
おわりに
ここでは、文字と使った式の表し方のうち、商や分数との積に関連するものを見てきました。数字同士の計算でも、 $\div$ の代わりに分数を使うことはよくあるので、発想は難しくはないでしょう。ただ、式が複雑になってくると、どこまでが分子になるのか、把握しづらくなってくるので、注意して表すようにしましょう。