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【基本】漸化式(分数型)

ここでは、分数を利用した漸化式について見ていきます。

📘 目次

分数の形をした漸化式その1

次の関係式を満たす数列 $\{a_n\}$ を考えます。\[ a_1=1,\ \frac{1}{a_{n+1} }=\frac{1}{a_n}+2 \ (n=1,2,3,\cdots) \]2つ目の式を使えば、 $n$ 番目の項を決めると $(n+1)$ 番目の項が決まるので、各項の数字は確定します。しかし、【基本】漸化式と等差数列・等比数列・階差数列で見た漸化式と比較すると、これは等差数列でも等比数列でもないことがわかります。

違うとは言っても、よく見ると、惜しい形にはなっています。 $+2$ となっているので、等差数列の漸化式と似ていますが、 $a_{n+1},a_n$ が逆数になっているので、等差数列とはいえないんですね。

この「惜しい形」を利用して、逆数の部分を変形することを考えてみましょう。つまり、\[ b_n=\frac{1}{a_n} \]とおいて、新しい数列 $\{b_n\}$ を考えるわけです。このとき、初項は\[ b_1=\frac{1}{a_1}=1 \]となります。また、漸化式は、 $b_{n+1}=\dfrac{1}{a_{n+1} }$, $b_n=\dfrac{1}{a_n}$ であることを利用して\[ b_{n+1}=b_n+2 \]と変形できます。

これらのことから、数列 $\{b_n\}$ は、初項が $1$ で、公差が $2$ の等差数列であることがわかります。よって、 $\{b_n\}$ の一般項は\[ b_n=1+2(n-1)=2n-1 \]となります。

求めたいのは数列 $\{a_n\}$ の一般項の方でしたね。 $b_n=\dfrac{1}{a_n}$ であることから、\[ a_n=\frac{1}{2n-1} \]と求められます。

このように、別の数列に変形することで、等差数列や等比数列の漸化式を導くことができるケースがあります。分数の部分が出てきたときは、逆数を考えてうまくいくか、試してみましょう。

分数の形をした漸化式その2

次の関係式を満たす数列 $\{c_n\}$ を考えます。\[ c_1=1,\ c_{n+1}=\frac{c_n}{2c_n+1} \ (n=1,2,3,\cdots) \]先ほどよりもだいぶ複雑になってきました。漸化式の左辺は $c_{n+1}$ ですが、右辺はよくわからない式ですね。

漸化式の右辺をよく見ると、分子に $c_n$ があり、分母には $c_n$ を含んだ式があります。このような場合、漸化式の逆数を考えると、うまく変形できることがあります。今の場合でやってみましょう。

まず、 $c_n$ はずっと正の値をとることはすぐにわかります。 $c_1$ が正であり、漸化式を見ると、分母にも分子にもマイナスになる要素がないので、ずっと正の値が続いていきます。つまり、 $0$ をとることがない、ということです。なので、両辺の逆数を考えることができます。逆数をとると
\begin{eqnarray} \frac{1}{c_{n+1} } &=& \frac{2c_n +1}{c_n} \\[5pt] &=& \frac{1}{c_n}+2 \\[5pt] \end{eqnarray}となります。この漸化式について考えていけばいいわけですね。ただ、この漸化式は、先ほど上の例で考えた $\{a_n\}$ と同じです。初項も同じなので、このあとの流れは先ほどと全く同じになり、\[ c_n=\frac{1}{2n-1} \]となります。

漸化式がだいぶ違うように見えましたが、 $\{a_n\}$ も $\{c_n\}$ も同じ式だったんですね。試験では\[ \frac{1}{a_{n+1} }=\frac{1}{a_n}+2 \]のように、 $b_n=\dfrac{1}{a_n}$ と置き換えることがバレバレな形で出題されることは少なく、\[ c_{n+1}=\frac{c_n}{2c_n+1} \]のように、少しひねった形で出題されることが多いです。逆数をとったときの式変形をよく見てみると、この漸化式の右辺の分子が $c_n$ で、分母が $( \textsf{定数} )×c_n+1$ の式になっていることがポイントだということがわかります。

なお、さらにひねって\[ 2c_{n+1}c_n+c_{n+1}-c_n=0 \]のような形で出題されることも、まれにあります。この場合は、とにかく、左辺を $c_{n+1}$ だけの式にして、右辺を $c_n$ の式にする、という方針で変形していくと、今まで見た形に変形することができます。

おわりに

ここでは、分数を利用した漸化式について見てきました。漸化式の逆数を考えたり、逆数の数列を考えることで、もとの数列の一般項を求めることができる場合があります。他のパターンと組み合わされることもあるので、まずは単体の場合で慣れておくようにしましょう。

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