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【基本】無限級数の性質

ここでは、無限級数の和の性質について見ていきます。

📘 目次

部分和の極限として無限級数の和を求める

次のような例題を考えてみましょう。

例題
次の値を求めなさい。\[ \sum_{n=1}^{\infty} \left(\dfrac{1}{2^n}-\dfrac{1}{3^n}\right) \]

無限級数の和を定義通りに求めるなら、部分和を求めて極限値を求めることになります。第 $n$ 項までの和は、等比数列の和の公式を用いて(参考:【基本】等比数列の和
\begin{eqnarray} \frac{\frac{1}{2} \left(1-\frac{1}{2^n}\right)}{1-\frac{1}{2} } -\frac{\frac{1}{3} \left(1-\frac{1}{3^n}\right)}{1-\frac{1}{3} } \end{eqnarray}となります。 $n\to\infty$ とすると、 $\dfrac{1}{2^n}\to0$, $\dfrac{1}{3^n}\to0$ となるので、極限値は \begin{eqnarray} \frac{\frac{1}{2} }{1-\frac{1}{2} }-\frac{\frac{1}{3} }{1-\frac{1}{3} } &=& \frac{1}{2-1}-\frac{1}{3-1} \\[5pt] &=& \frac{1}{2} \end{eqnarray}と求められます。

無限級数の性質

先ほどの例題は、定義通りに和を求めましたが、「2つの無限等比級数に分解すればいいんじゃないのか」と思う人もいるかもしれません。つまり、
\begin{eqnarray} & & \sum_{n=1}^{\infty} \left(\dfrac{1}{2^n}-\dfrac{1}{3^n}\right) \\[5pt] &=& \sum_{n=1}^{\infty} \dfrac{1}{2^n} -\sum_{n=1}^{\infty} \dfrac{1}{3^n} \\[5pt] &=& \frac{1}{2}\times \frac{1}{1-\frac{1}{2} } -\frac{1}{3}\times \frac{1}{1-\frac{1}{3} } \\[5pt] &=& 1-\frac{1}{2} =\frac{1}{2} \\[5pt] \end{eqnarray}とすればいいんじゃないか、ということですね。公比の絶対値が1より小さいので、【基本】無限等比級数で見た通り、初項 $a$ と公比 $r$ を使って、極限値が $\dfrac{a}{1-r}$ となることを使えるんじゃないか、ということですね。

この式変形は、それぞれの無限級数が収束するときは正しいです。理屈としては、【基本】数列の極限の性質で見た次の内容に帰着されます。

数列の極限の性質(一部のみ)
数列 $\{a_n\},\{b_n\}$ はどちらも収束し、 $\displaystyle \lim_{n\to\infty} a_n = \alpha$, $\displaystyle \lim_{n\to\infty} b_n = \beta$ とする。このとき、次が成り立つ。ただし、 $k$ は定数。
\begin{eqnarray} & & \lim_{n\to\infty} ka_n = k\alpha \\ & & \lim_{n\to\infty} (a_n+b_n) = \alpha+\beta \\ & & \lim_{n\to\infty} (a_n-b_n) = \alpha-\beta \end{eqnarray}

無限級数の和は、部分和の極限だから、上の性質がそのまま使えるわけです。つまり、数列 $\{a_n\},\{b_n\}$ に対して、\[ S_n=\sum_{k=1}^n a_k,\ T_n=\sum_{k=1}^n b_k \]と置き、 $\{S_n\}$, $\{T_n\}$ がともに収束し、極限値をそれぞれ $S, T$ とすれば、上の性質を使うと
\begin{eqnarray} & & \lim_{n\to\infty} kS_n = kS \\[5pt] & & \lim_{n\to\infty} (S_n+T_n) = S+T \\[5pt] & & \lim_{n\to\infty} (S_n-T_n) = S-T \\[5pt] \end{eqnarray}となります。

上の例題でいえば、\[ \sum_{n=1}^{\infty} \dfrac{1}{2^n},\ \sum_{n=1}^{\infty} \dfrac{1}{3^n} \]が両方とも収束することを示せば、2つの無限級数に分解して計算できる、ということです。

「収束することを示す」といっても難しいことはなく、上の例題なら「公比の絶対値が1より小さいこと」を言うだけです。しかし、注意が必要なのは、両方が収束することをはじめに言わなくてはいけない、という点です。収束するかどうかわからない状態では、2つの無限級数に分解できるかどうかもわからない、ということに注意しましょう。特に、文字を含んだ場合には忘れやすいので注意しましょう。

上の性質を無限級数の場合で書き直すと、次のようになります。

無限級数の和の性質
$\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty} a_n, \sum_{n=1}^{\infty} b_n$ がともに収束し、極限値がそれぞれ $S,T$ であるとき、次が成り立つ。ただし、 $k$ は定数。
\begin{eqnarray} & & \sum_{n=1}^{\infty} ka_n = kS \\ & & \sum_{n=1}^{\infty} (a_n+b_n) = S+T \\ & & \sum_{n=1}^{\infty} (a_n-b_n) = S-T \end{eqnarray}

おわりに

ここでは、無限級数の和の性質について見てきました。無限級数を2つに分解して計算したい場合には、「分解した後の無限級数がそれぞれ収束する」という前提があることに注意しましょう。

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