東京大学 理系 2013年度 第1問 解説
(現在の出題範囲とは異なる可能性があります)
問題編
問題
実数 $a,b$ に対し平面上の点 $\mathrm{P}_n(x_n,y_n)$ を
\begin{eqnarray} & & (x_0,y_0)=(1,0) \\[5pt] & & (x_{n+1},y_{n+1})=(ax_n-by_n,bx_n+ay_n) \quad (n=0,1,2,\cdots) \end{eqnarray}によって定める。このとき、次の条件(i), (ii)がともに成り立つような $(a,b)$ をすべて求めよ。(i) $\mathrm{P}_0=\mathrm{P}_6$
(ii) $\mathrm{P}_0$, $\mathrm{P}_1$, $\mathrm{P}_2$, $\mathrm{P}_3$, $\mathrm{P}_4$, $\mathrm{P}_5$ は相異なる。
考え方
点の定め方を実験して考えていくよりも、「条件を満たすものは何か」を予想してから考えていくほうが、点の定め方が何を表しているか、わかりやすいかもしれません。旧課程ではよく見る形ですが、現行課程では少し気づきにくいかもしれません。
(現在の出題範囲とは異なる可能性があります)
解答編
問題
実数 $a,b$ に対し平面上の点 $\mathrm{P}_n(x_n,y_n)$ を
\begin{eqnarray} & & (x_0,y_0)=(1,0) \\[5pt] & & (x_{n+1},y_{n+1})=(ax_n-by_n,bx_n+ay_n) \quad (n=0,1,2,\cdots) \end{eqnarray}によって定める。このとき、次の条件(i), (ii)がともに成り立つような $(a,b)$ をすべて求めよ。(i) $\mathrm{P}_0=\mathrm{P}_6$
(ii) $\mathrm{P}_0$, $\mathrm{P}_1$, $\mathrm{P}_2$, $\mathrm{P}_3$, $\mathrm{P}_4$, $\mathrm{P}_5$ は相異なる。
解答
\begin{eqnarray} & & x_{n+1}^2+y_{n+1}^2 \\[5pt] &=& (ax_n-by_n)^2+(bx_n+ay_n)^2 \\[5pt] &=& a^2x_n^2+b^2y_n^2+b^2x_n^2+a^2y_n^2 \\[5pt] &=& (a^2+b^2)(x_n^2+y_n^2) \\[5pt] \end{eqnarray}であり、 $x_0^2+y_0^2=1$ なので、\[ x_n^2+y_n^2=(a^2+b^2)^n \]となる。また、条件(i)より\[ (a^2+b^2)^6=1 \]であり、 $a,b$ は実数だから $a^2+b^2=1$ となり、 $x_n^2+y_n^2=1$ となる。このことから、 \begin{eqnarray} a &=& \cos\theta \\[5pt] b &=& \sin\theta \\[5pt] x_n &=& \cos\theta_n \\[5pt] y_n &=& \cos\theta_n \\[5pt] \end{eqnarray}と置くことができる。このとき \begin{eqnarray} x_{n+1} &=& \cos\theta\cos\theta_n-\sin\theta\sin\theta_n \\ &=& \cos(\theta_n+\theta) \\[5pt] y_{n+1} &=& \sin\theta\cos\theta_n+\cos\theta\sin\theta_n \\ &=& \sin(\theta_n+\theta) \\[5pt] \end{eqnarray}であり、 $\theta_0=0$ とできるから、\[ \theta_n=n\theta+2a_n\pi \]と書ける( $a_n$ は整数)。条件(i)より、 $\cos 6\theta=1$, $\sin 6\theta=0$ なので、\[ \theta=\dfrac{2}{3}m\pi+2k\pi \]と書ける( $m$ は $0$ から $5$ までの整数)が、条件(ii)を満たすものは $m=1,5$ のみ。以上から、 \begin{eqnarray} (a,b) &=& \left(\dfrac{1}{2}, \dfrac{\sqrt{3} }{2}\right), \left(\dfrac{1}{2}, -\dfrac{\sqrt{3} }{2}\right) \end{eqnarray}となる。(解答終)
解説
$\mathrm{P}_n$ の定め方は、はじめはどういうものかよくわからないかもしれません。ただ、条件は「6回繰り返すと元に戻る」ということなので、「回転ぽいな」ですし、もっといえば、正六角形っぽいです。それをもとに点の定め方をよく見れば、加法定理のような形をしていることに気づきやすいかもしれません。
ただ、加法定理だと考えるには、角度を使って表せることを言わなくてはなりません。前半ではそのことを説明しています。
なお、この問題は、以前の出題範囲であった行列を使うほうが自然です。行列で書くと、点の定め方は回転そのものを表すと考えられるからです。前半部分は次のように書き換えることができます。
\begin{eqnarray} A=\begin{pmatrix} a & -b \\ b & a \end{pmatrix},\ \mathrm{P}_n=\begin{pmatrix} x_n \\ y_n \end{pmatrix} \end{eqnarray}とすれば、\[ \mathrm{P}_{n+1}=A\mathrm{P}_n \]と書ける。ここで、 $r=\sqrt{a^2+b^2}$ とし、 \begin{eqnarray} a&=&r\cos\theta \\ b&=&r\sin\theta \end{eqnarray}となる $\theta$ $(0\leqq \theta\lt 2\pi)$ をとれば、条件(i)より \begin{eqnarray} r^6 \begin{pmatrix} \cos6\theta \\ \sin6\theta \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 1 \\ 0 \end{pmatrix} \end{eqnarray}となる。
あとは、 $r,\theta$ を求めていけば同じような流れになります。