京都大学 理学部特色入試 2022年度 第1問 解説
(2021年11月に行われた特色入試の問題です。2022年に行われた特色入試の問題はこちら)
問題編
問題
$n$ を正の整数とする。 $P(x_1,x_2,\ldots,x_n)$ を $x_1,x_2,\ldots,x_n$ の $n$ 個の文字についてのある実数係数の多項式とする。整数の列 $\{a_i\}$ が次の性質 $(*)$ を満たすと仮定する。
(*) $n$ より大きいすべての整数 $i$ に対して $a_i=P(a_{i-n}, a_{i-n+1}, \ldots,a_{i-1})$
ただし、$P(a_{i-n}, a_{i-n+1}, \ldots,a_{i-1})$ は多項式 $P(x_1,x_2,\ldots,x_n)$ の文字 $x_1,x_2,\ldots,x_n$ にそれぞれ $a_{i-n}, a_{i-n+1}, \ldots,a_{i-1}$ を代入したものである。
このとき、ある2つの正の実数 $c,d$ が存在して、すべての正の整数 $i$ に対して\[ a_i \lt c^{d^i} \]が成り立つことを示せ。
考え方
抽象的で何を示せばいいかわかりづらいです。少ない文字、少ない次数で実験してみましょう。不明な値は適当に自分で名前をつけて、存在を示しましょう。
$c,d$ は $i$ とは関係のない値にしないといけない点に注意しましょう。
解答編
問題
$n$ を正の整数とする。 $P(x_1,x_2,\ldots,x_n)$ を $x_1,x_2,\ldots,x_n$ の $n$ 個の文字についてのある実数係数の多項式とする。整数の列 $\{a_i\}$ が次の性質 $(*)$ を満たすと仮定する。
(*) $n$ より大きいすべての整数 $i$ に対して $a_i=P(a_{i-n}, a_{i-n+1}, \ldots,a_{i-1})$
ただし、$P(a_{i-n}, a_{i-n+1}, \ldots,a_{i-1})$ は多項式 $P(x_1,x_2,\ldots,x_n)$ の文字 $x_1,x_2,\ldots,x_n$ にそれぞれ $a_{i-n}, a_{i-n+1}, \ldots,a_{i-1}$ を代入したものである。
このとき、ある2つの正の実数 $c,d$ が存在して、すべての正の整数 $i$ に対して\[ a_i \lt c^{d^i} \]が成り立つことを示せ。
解答
$m_1,m_2,\ldots,m_n$ を非負整数とし、多項式 $P(x_1,x_2,\ldots,x_n)$ の $x_1^{m_1}x_2^{m_2}\cdots x_n^{m_n}$ の係数を $\alpha_{m_1,m_2,\cdots,m_n}$ で表すことにする。また、すべての係数に対して絶対値をとり、その中で一番大きいものを $\alpha$ とする。
多項式 $P(x_1,x_2,\ldots,x_n)$ の項の個数を $M$ とおき、最高次の次数を $N$ とおく。
$|a_1|,|a_2|,\ldots ,|a_n|$ の中で一番大きいものを $A$ とおく。
以上の文字を使って、 $c=\alpha M+A+2$, $d=N+1$ とおく。これは、多項式 $P$ と数列 $\{a_i\}$ の $n$ 項目までを使って定義できる値であり、 $c$ は $1$ より大きな値である。このとき、すべての正の整数 $i$ に対して\[ |a_i| \lt c^{d^i} \]が成り立つことを示す。
(a) $i$ が $n$ 以下の正の整数のとき
$|a_i| \leqq A\lt c \leqq c^{d^i}$ より、成り立つ。
(b) $k$ を $n$ より大きい正の整数とし、 $i=k-n,k-n+1,\cdots,k-1$ のときに $|a_i|\lt c^{d^i}$ が成り立つとする。このとき、 $c\gt 1$ より、特に、 $|a_i| \lt c^{d^{k-1} }$ が成り立つ。
$P(a_{k-n}, a_{k-n+1}, \ldots,a_{k-1})$ の各項の絶対値は、 $\alpha |a_{k-n}|^{m_1} |a_{k-n+1}|^{m_2} \cdots |a_{k-1}|^{m_n}$ 以下である(ただし、 $m_1+m_2+\cdots+m_n\leqq N$ )。仮定より、これは $\alpha ( c^{d^{k-1} } )^N$ 未満である。
これより、$i=k$ とすると、 $d=N+1$ であることも用いて、
\begin{eqnarray}
|a_k|
&=&
|P(a_{k-n}, a_{k-n+1}, \ldots,a_{k-1})| \\[5pt]
& \lt &
\alpha M \cdot ( c^{d^{k-1} } )^N \\[5pt]
& \leqq &
c \cdot c^{N d^{k-1} } \\[5pt]
& \leqq &
c^{1+N d^{k-1} } \\[5pt]
& \leqq &
c^{d^{k-1}+N d^{k-1} } \\[5pt]
&=&
c^{d^k} \\[5pt]
\end{eqnarray}となることから、 $i=k$ のときも成り立つ。
以上より、 $c=\alpha M+A+2$, $d=N+1$ とおくことで、すべての正の整数 $i$ に対して $a_i \lt c^{d^i}$ が成り立つようにできることが示せた。
(終)