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京都大学 理学部特色入試 2021年度 第3問 解説

(2020年11月に行われた特色入試の問題です。2021年に行われた特色入試の問題はこちら

問題編

問題

 以下の条件(i), (ii), (iii) を満たす実数の列 $x_1,x_2,\cdots,x_{1000}$ は存在するか。

(i) $x_1=\dfrac{1}{2}$

(ii) $k=2,3,\cdots, 1000$ に対し、 $x_k$ は\[ \frac{x_{k-1}+99}{100},\ -\frac{100x_{k-1} }{99x_{k-1}-1} \]のいずれかに等しい。ただし、 $x_{k-1}=\dfrac{1}{99}$ のときは $x_k=\dfrac{x_{k-1}+99}{100}$ とする。

(iii) $\dfrac{49}{100}\lt x_{1000}\lt\dfrac{51}{100}$

考え方

なんだかよくわからない式で、 $99$ もどこから出てくるのかわからず、考えにくいです。

とりあえず、 $x_2$ を考えてみると、 $1$ か $-1$ にすごく近いことがわかります。それ以降にどのような値をとりうるか考えてみましょう。

特に2つ目の式がやっかいで、これを無理やりいろいろ変形しようとすると、泥沼にはまってしまいます。


解答編

問題

 以下の条件(i), (ii), (iii) を満たす実数の列 $x_1,x_2,\cdots,x_{1000}$ は存在するか。

(i) $x_1=\dfrac{1}{2}$

(ii) $k=2,3,\cdots, 1000$ に対し、 $x_k$ は\[ \frac{x_{k-1}+99}{100},\ -\frac{100x_{k-1} }{99x_{k-1}-1} \]のいずれかに等しい。ただし、 $x_{k-1}=\dfrac{1}{99}$ のときは $x_k=\dfrac{x_{k-1}+99}{100}$ とする。

(iii) $\dfrac{49}{100}\lt x_{1000}\lt\dfrac{51}{100}$

解答

問題文にある実数の列が存在しないことを示す。

まず、 $x_2$ が(ii)の1つ目の式で定義されるとき
\begin{eqnarray} \frac{x_1+99}{100}=0.995 \end{eqnarray}である。2つ目の式で定義されるとき \begin{eqnarray} -\frac{100x_1}{99x_1-1}=-\frac{100}{99-2}=-\frac{100}{97}=-1.03\cdots \end{eqnarray}である。いずれの場合も、 $|x_2-1|$ か $|x_2+1|$ は $\dfrac{1}{10}$ より小さくなる。

$k=2,3,\cdots$ とする。 $|x_k-1|\lt\dfrac{1}{10}$ のとき
\begin{eqnarray} \left| \frac{x_k+99}{100}-1 \right| &=& \frac{|x_k-1|}{100}\lt\frac{1}{1000}\lt\frac{1}{10} \end{eqnarray}となり、 \begin{eqnarray} \left| -\frac{100x_k}{99x_k-1}+1 \right| &=& \left| \frac{-100x_k+99x_k-1}{99x_k-1} \right| \\[5pt] &=& \frac{|-x_k-1|}{|99x_k-1|} \\[5pt] &\lt& \frac{|x_k-1|+2}{99 \left(1-\frac{1}{10}\right)-1} \\[5pt] &\lt& \frac{0.1+2}{99 \cdot 0.9-1} \\[5pt] &\lt& \frac{3}{88} \\[5pt] &\lt& \frac{1}{10} \\[5pt] \end{eqnarray}となる。よって、いずれの場合も、 $|x_{k+1}-1|$ か $|x_{k+1}+1|$ は $\dfrac{1}{10}$ より小さくなる。

$|x_k+1|\lt\dfrac{1}{10}$ の場合は
\begin{eqnarray} \left| \frac{x_k+99}{100}-1 \right| &=& \frac{|x_k-1|}{100} \\[5pt] &\leqq& \frac{|x_k+1|+2}{100} \\[5pt] &\lt& \frac{0.1+2}{100} \\[5pt] &\lt& \frac{1}{10} \\[5pt] \end{eqnarray}であり、 \begin{eqnarray} \left| -\frac{100x_k}{99x_k-1}+1 \right| &=& \frac{|-x_k-1|}{|99x_k-1|} \\[5pt] &\lt& \frac{0.1}{99 \left(1-\frac{1}{10}\right)-1} \\[5pt] &\lt& \frac{1}{10} \\[5pt] \end{eqnarray}となる。よって、いずれの場合も、 $|x_{k+1}-1|$ か $|x_{k+1}+1|$ は $\dfrac{1}{10}$ より小さくなる。

以上から、各 $k$ について、 $|x_k-1|$ か $|x_k+1|$ のどちらかが $\dfrac{1}{10}$ より小さいことがわかる。よって、 $|x_{1000}-1|$ か $|x_{1000}+1|$ のどちらかは $\dfrac{1}{10}$ より小さくなるので、 $\dfrac{49}{100}\lt x_{1000}\lt\dfrac{51}{100}$ となることはない。よって、問題文にあるような実数の列は存在しない。

(終)

解説

ざっくりとしたイメージで考えてみます。

$x_{k-1}$ が $1$ に近いなら、1つ目の式に入れるとやはり $1$ に近く、2つ目の式に入れると $-\dfrac{100}{99-1}=-\dfrac{100}{98}$ なので $-1$ に近くなります。 $x_{k-1}$ が $-1$ に近いなら、1つ目に式に入れると $\dfrac{98}{100}$ に近く、2つ目の式に入れると $-\dfrac{-100}{-99-1}=-1$ の近くになります。

なので、どちらにしても、 $1$ か $-1$ に近いまま推移していくので、 $1000$ 番目が $\dfrac{1}{2}$ の近くに来ることはなさそうだとわかります。これを厳密に書いていくと上のような解答になります。

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