京都大学 理学部特色入試 2020年度 第4問 解説
(2019年11月に行われた特色入試の問題です。2020年に行われた特色入試の問題はこちら)
問題編
問題
四面体 $\mathrm{ ABCD }$ の面および内部から一直線上にない3点 P, Q, R を選ぶ。このとき、三角形 PQR の面積は四面体 ABCD の4つの面の面積のうち最大のものを超えないことを示せ。
考え方
イメージとしては、「そりゃそうでしょ」って感じなのですが、なぜかと言われるとどういえばいいのかわからないですね。3点を動かして、面積がより大きくなるようにすると、どれかの面と一致する、という方針で示すのがやりやすいでしょう。その場合には、2点を止めて1点ずつ動かすのがいいと思います。
解答編
問題
四面体 $\mathrm{ ABCD }$ の面および内部から一直線上にない3点 P, Q, R を選ぶ。このとき、三角形 PQR の面積は四面体 ABCD の4つの面の面積のうち最大のものを超えないことを示せ。
解答
P, Q, R が四面体の内部にあるとする。このとき、直線 QR は、四面体と2点で交わる。この2点を $\mathrm{Q'}$, $\mathrm{R'}$ とおくと、三角形 $\mathrm{ PQ'R' }$ の面積は三角形 PQR の面積以上である。よって、このようにして、四面体の内部に三点があるときは、四面体の表面に点を取り直して面積をもとの面積以上にできるので、3点は四面体の表面上にある場合のみを考えればよい。
Q, R を固定し、点 P を面 ABC 上で動かすとする。この点から直線 QR に引いた垂線の足を H とする。このとき
\begin{eqnarray}
\overrightarrow{ \mathrm{ QH } } &=& h \overrightarrow{ \mathrm{ QR } } \\[5pt]
\overrightarrow{ \mathrm{ QP } } &=& \overrightarrow{ \mathrm{ QA } } +s\overrightarrow{ \mathrm{ AB } } +t\overrightarrow{ \mathrm{ AC } } \\[5pt]
\end{eqnarray}とおく。ここで、 $0\leqq s+t\leqq 1$, $s\geqq 0$, $t\geqq 0$ である。また、 $\overrightarrow{ \mathrm{ QR } }=\vec{r}$, $\overrightarrow{ \mathrm{ QA } }=\vec{a}$, $\overrightarrow{ \mathrm{ AB } }=\vec{b}$, $\overrightarrow{ \mathrm{ AC } }=\vec{c}$ とおく。
まず、 $\overrightarrow{ \mathrm{ QH } }$ と $\overrightarrow{ \mathrm{ HP } }$ は垂直に交わるので、
\begin{eqnarray}
\overrightarrow{ \mathrm{ QH } } \cdot (\overrightarrow{ \mathrm{ QP } }-\overrightarrow{ \mathrm{ QH } }) &=& 0 \\[5pt]
h\vec{r} \cdot \overrightarrow{ \mathrm{ QP } } -h^2|\vec{r}|^2 &=& 0 \\[5pt]
\end{eqnarray}なので\[ h=\frac{\vec{r} \cdot \overrightarrow{ \mathrm{ QP } } }{|\vec{r}|^2} \]が成り立つ。
三角形 PQR の面積が最大になるのは、 HP の長さが最大になるときである。この長さの2乗は
\begin{eqnarray}
& &
|\overrightarrow{ \mathrm{ HP } }|^2 \\[5pt]
&=&
|\overrightarrow{ \mathrm{ QP } }|^2 -|\overrightarrow{ \mathrm{ QH } }|^2 \\[5pt]
&=&
|\overrightarrow{ \mathrm{ QP } }|^2 -h^2|\vec{r}|^2 \\[5pt]
&=&
|\overrightarrow{ \mathrm{ QP } }|^2 -\frac{(\vec{r} \cdot \overrightarrow{ \mathrm{ QP } })^2}{|\vec{r}|^2} \\[5pt]
&=&
|\vec{a} +s\vec{b} +t\vec{c}|^2 -\frac{\{ \vec{r} \cdot (\vec{a} +s\vec{b} +t\vec{c})\}^2}{|\vec{r}|^2} \\[5pt]
\end{eqnarray}と表すことができる。点 P が面 ABC 上を動くとき、最後の式で変化するものは $t,s$ のみである。
$s$ をとめて $t$ を動かす。このとき、動く範囲は $0\leqq t \leqq 1-s$ である。最後の式は、 $t$ の関数とみると、次数は高々2である。 $t^2$ の係数は
\begin{eqnarray}
& &
|\vec{c}|^2 - \frac{(\vec{r} \cdot \vec{c})^2}{|\vec{r}|^2} \\[5pt]
&=&
\frac{|\vec{r}|^2|\vec{c}|^2 -(\vec{r} \cdot \vec{c})^2}{|\vec{r}|^2} \\[5pt]
\end{eqnarray}となる。最後の式の分子は $0$ 以上であり、 $\vec{r}$ と $\vec{c}$ が平行なときに限り $0$ となる。この値が正のときは、 $t$ の関数 $|\overrightarrow{ \mathrm{ HP } }|^2$ のグラフは下に凸の放物線となり、最大となるのは $t=0$ か $t=1-s$ のときしかない。また、 $t^2$ の係数が $0$ のときは、グラフは直線となり、最大となるのは $t=0$ か $t=1-s$ のときしかない。どちらにしても、この $|\overrightarrow{ \mathrm{ HP } }|^2$ は、 $t=0$ のときの値と $t=1-s$ のときの値を同時に超えることはない。
$t=0$ のとき、
\begin{eqnarray}
& &
|\overrightarrow{ \mathrm{ HP } }|^2 \\[5pt]
&=&
|\vec{a} +s\vec{b}|^2 -\frac{\{ \vec{r} \cdot (\vec{a} +s\vec{b})\}^2}{|\vec{r}|^2} \\[5pt]
\end{eqnarray}となる。これを $s$ の関数とみると、次数は高々2であり、動く範囲は $0\leqq s \leqq 1$ である。 $s^2$ の係数は
\begin{eqnarray}
& &
|\vec{b}|^2 - \frac{(\vec{r} \cdot \vec{b})^2}{|\vec{r}|^2} \\[5pt]
&=&
\frac{|\vec{r}|^2|\vec{b}|^2 -(\vec{r} \cdot \vec{b})^2}{|\vec{r}|^2} \\[5pt]
\end{eqnarray}である。先ほどと同様に、この値は0以上であるから、 $|\overrightarrow{ \mathrm{ HP } }|^2$ は、 $s=0$ か $s=1$ のときを同時に超えることはない。
$t=1-s$ のとき、
\begin{eqnarray}
& &
|\overrightarrow{ \mathrm{ HP } }|^2 \\[5pt]
&=&
|\vec{a} +s\vec{b} +(1-s)\vec{c}|^2 -\frac{\{ \vec{r} \cdot (\vec{a} +s\vec{b} +(1-s)\vec{c})\}^2}{|\vec{r}|^2} \\[5pt]
&=&
|\overrightarrow{ \mathrm{ QC } } +s\overrightarrow{ \mathrm{ CB } }|^2 -\frac{\{ \vec{r} \cdot (\overrightarrow{ \mathrm{ QC } } +s\overrightarrow{ \mathrm{ CB } })\}^2}{|\vec{r}|^2} \\[5pt]
\end{eqnarray}となる。これを $s$ の関数とみると、次数は高々2であり、動く範囲は $0\leqq s \leqq 1$ である。 $s^2$ の係数は
\begin{eqnarray}
& &
|\overrightarrow{ \mathrm{ CB } }|^2 - \frac{(\vec{r} \cdot \overrightarrow{ \mathrm{ CB } })^2}{|\vec{r}|^2} \\[5pt]
&=&
\frac{|\vec{r}|^2|\overrightarrow{ \mathrm{ CB } }|^2 -(\vec{r} \cdot \overrightarrow{ \mathrm{ CB } })^2}{|\vec{r}|^2} \\[5pt]
\end{eqnarray}である。この場合も先ほどと同様に、この値は0以上であるから、 $|\overrightarrow{ \mathrm{ HP } }|^2$ は、 $s=0$ か $s=1$ のときを超えることはない。
以上より、 $|\overrightarrow{ \mathrm{ HP } }|^2$ は、 $(s,t)=(0,0),(0,1).(1,0)$ のすべての場合を超えることはない。つまり、三角形 PQR の面積は、三角形 AQR, BQR, CQR の面積のすべてを超えることはない。 Q, R に対しても同様にすれば、面積が最大になるのは、Q も R も四面体の頂点に一致するときであることがわかる。
以上から、四面体の4つの面の面積のうち、最大のものをこえることはないことがわかる。
(終)