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京都大学 理学部特色入試 2019年度 第4問 解説

(2018年11月に行われた特色入試の問題です。2019年に行われた特色入試の問題はこちら

問題編

問題

 $n$ を自然数とする。整数 $k$ に関する次の条件 (C), (D) を考える。
(C) $0\leqq k\lt n$
(D) $\dfrac{k}{n} \leqq \dfrac{1}{m} \lt \dfrac{k+1}{n}$ を満たす自然数 $m$ が存在する。

条件(C), (D) を満たす整数 $k$ の個数を $T_n$ とする。以下の設問に答えよ。

(1) $T_{50}$ を求めよ。

(2) 次の極限値を求めよ。\[ \lim_{n\to\infty} \frac{\log T_n}{\log n} \]

考え方

実際に書き出してみると、ぎっしり詰まっているところと、スカスカの部分とに分かれます。両者を別々に数えて、 $T_n$ を考えましょう。最終的に極限を考えるので、厳密な値がわからなくても、問題ありません。


解答編

問題

 $n$ を自然数とする。整数 $k$ に関する次の条件 (C), (D) を考える。
(C) $0\leqq k\lt n$
(D) $\dfrac{k}{n} \leqq \dfrac{1}{m} \lt \dfrac{k+1}{n}$ を満たす自然数 $m$ が存在する。

条件(C), (D) を満たす整数 $k$ の個数を $T_n$ とする。以下の設問に答えよ。

(1) $T_{50}$ を求めよ。

(1)
条件(D) にある式は、\[ k\leqq \dfrac{n}{m}\lt k+1 \]と変形することができる。これより、条件(D) を満たす整数 $k$ の集合は、 $m$ が自然数全体を動くときに、 $\left[ \dfrac{n}{m} \right]$ が取りうる値の集合と一致する。

$n=50$ のとき、 $m$ を小さい順から代入していくと、 $\left[ \dfrac{n}{m} \right]$ が取りうる値は、\[ 50,25,16,12,10,8,7,6,5,4,3,2,1,0 \]となる。このうち、条件(C) を満たさないものは $50$ だけなので、\[ T_{50}=13 \]である。

解答編 つづき

問題

(2) 次の極限値を求めよ。\[ \lim_{n\to\infty} \frac{\log T_n}{\log n} \]

(2)
(1)と同様に、 $\left[ \dfrac{n}{m} \right]$ が取りうる値について考える。ただし、 $m=1$ のときは、この値は $n$ となり、条件(C)を満たさないので、 $m$ は $2$ 以上の自然数全体を動くものとする。

$m\gt \sqrt{n}$ のとき、つまり、 $m\geqq [\sqrt{n}]+1$ のときは、\[ \frac{n}{m}-\frac{n}{m+1}\lt \frac{n}{m^2}\lt 1 \]である。 $m=n+1$ のときに $\left[ \dfrac{n}{m} \right]=0$ となるので、自然数 $m$ が $m\gt \sqrt{n}$ を満たしながら動くとき、 $\left[ \dfrac{n}{m} \right]$ は、 $0$ 以上\[ \left[ \frac{n}{[\sqrt{n}]+1} \right] \]以下の整数値をすべて取ることがわかる。

$[\sqrt{n}]\leqq \sqrt{n}\lt [\sqrt{n}]+1$ だから、
\begin{eqnarray} \frac{n}{[\sqrt{n}]+1} & \lt & \frac{n}{\sqrt{n} } \\[5pt] & = & \sqrt{n} \end{eqnarray}であり、 \begin{eqnarray} \frac{n}{[\sqrt{n}]+1} & \geqq & \frac{n}{\sqrt{n}+1} \\[5pt] &=& \frac{n-1}{\sqrt{n}+1}+\frac{1}{\sqrt{n}+1} \\[5pt] &\geqq& \sqrt{n}-1 \\[5pt] \end{eqnarray}なので、\[ \left[ \frac{n}{[\sqrt{n}]+1} \right] \]は、 $[\sqrt{n}]$ または $[\sqrt{n}]-1$ となる。よって、0以上でこの値以下の整数の個数は、 $([\sqrt{n}]+1)$ 個、または $[\sqrt{n}]$ 個となる。

次に、$m\leqq \sqrt{n}$ のとき、つまり、 $2\leqq m\leqq [\sqrt{n}]$ のときを考える。\[ \frac{n}{m-1}-\frac{n}{m}\gt \frac{n}{m^2}\geqq 1 \]だから、\[ \left[ \frac{n}{2}\right],\left[ \frac{n}{3}\right],\cdots \left[ \frac{n}{[\sqrt{n}]}\right] \]は、すべて異なる整数である。また、
\begin{eqnarray} \frac{n}{[\sqrt{n}]} & \geqq & \frac{n}{\sqrt{n} } \\[5pt] & = & \sqrt{n} \\[5pt] \end{eqnarray}であるから、上で挙げた $([\sqrt{n}]-1)$ 個の整数は、すべて $[\sqrt{n}]$ 以上なので、これらのうち、 $m\gt \sqrt{n}$ のときに得られる $\left[ \dfrac{n}{m} \right]$ とのダブりは、高々1個である。

以上から、 $\left[ \dfrac{n}{m} \right]$ が取りうる値は、 $m\gt \sqrt{n}$ の範囲では、 $([\sqrt{n}]+1)$ 個、または $[\sqrt{n}]$ 個、 $m\leqq \sqrt{n}$ の範囲では、 $([\sqrt{n}]-1)$ 個、両者のダブりは高々1個なので、 $T_n$ は、 $2[\sqrt{n}]-2$ 以上 $2[\sqrt{n}]$ 以下の整数である。よって、\[ T_n=2\sqrt{n}+\varepsilon \]と書くことができる。ここで、 $\varepsilon$ は絶対値が4以下の実数である。

\begin{eqnarray} \frac{\log T_n}{\log n} &=& \frac{\log (2\sqrt{n}+\varepsilon) }{\log n}\\[5pt] &=& \frac{\log\sqrt{n}+\log \left(2+\frac{\varepsilon}{\sqrt{n} }\right) }{\log n}\\[5pt] \end{eqnarray}なので、\[ \lim_{n\to\infty} \frac{\log T_n}{\log n}=\frac{1}{2} \]である。

(終)

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