京都大学 理系 2016年度 第6問 解説
問題編
【問題】
複素数を係数とする2次式$f(x)=x^2+ax+b$に対し、次の条件を考える。(イ) $f(x^3)$は$f(x)$で割り切れる。
(ロ) $f(x)$の係数a,bは少なくとも一方は虚数である。この2つの条件(イ)、(ロ)を同時に満たす2次式をすべて求めよ。
【考え方】
一般に、$F(x)$が$G(x)$で割り切れるとき、$F(x)=G(x)P(x)$と書けます。また、$G(a)=0$となるaを代入すると、$F(a)=0$となります。
ここでは、このことを利用して、$f(x)=0$の解の3乗が、再びこの方程式の解になることを利用して、解を特定していきます。解を特定すれば2次式に戻すことは簡単です。しかし、解の特定はごちゃごちゃしやすく、計算間違いやすいので要注意です。
解答編
【問題】
複素数を係数とする2次式$f(x)=x^2+ax+b$に対し、次の条件を考える。(イ) $f(x^3)$は$f(x)$で割り切れる。
(ロ) $f(x)$の係数a,bは少なくとも一方は虚数である。この2つの条件(イ)、(ロ)を同時に満たす2次式をすべて求めよ。
【解答】
$f(x)=0$の解を$\alpha ,\beta$とする。この2つの解が両方とも実数なら条件(ロ)を満たさなくなるので、$\alpha$は虚数としてよい。
$f(\alpha)=0$と条件(イ)より、\[f(\alpha^3)=(\alpha^3-\alpha)(\alpha^3-\beta)=0\]である。$\alpha^3-\alpha=0$なら$\alpha=0,\pm 1$となるが、これは$\alpha$が虚数であることに矛盾する。よって、\[ \beta = \alpha^3 \]がなりたつ。
また、$f(\beta)=0$と条件(イ)より、\[f(\beta^3)=(\beta^3-\alpha)(\beta^3-\beta)=0\]である。よって、$\beta^3$は$\alpha$か$\beta$に等しくなる。
(1) $\beta^3 = \alpha$のとき
$\beta = \alpha^3$から、$\alpha^9=\alpha$となる。$\alpha$は虚数なので、\[ \alpha = \frac{\sqrt{2} }{2} \pm \frac{\sqrt{2} }{2}i, \pm i, -\frac{\sqrt{2} }{2} \pm \frac{\sqrt{2} }{2}i \]となる。
ここで、$\alpha=-\frac{\sqrt{2} }{2} \pm \frac{\sqrt{2} }{2}i$のとき、$\beta = \alpha^3$は、$\frac{\sqrt{2} }{2} \pm \frac{\sqrt{2} }{2}i$となる。
よって、入れ替えて同じになるものを除くと、\[ (\alpha,\beta)=\left( \frac{\sqrt{2} }{2} \pm \frac{\sqrt{2} }{2}i, -\frac{\sqrt{2} }{2} \pm \frac{\sqrt{2} }{2}i \right), (\pm i, \mp i) \]となる(それぞれ複合同順)。ここで、条件(ロ)も満たす2次式は、\[x^2 \pm \sqrt{2}ix-1\]のみとなる。
(2) $\beta^3 = \beta$のとき
$\beta = 0, \pm 1 $である。$\beta = \alpha^3$から、$\alpha$の値を考える。
$\beta = 0$のとき、$\alpha$が虚数となることはない。
$\beta=1$のとき、$\alpha$は虚数なので、$\alpha = -\frac{1}{2} \pm \frac{\sqrt{3} }{2}i$となる。
$\beta=-1$のとき、$\alpha$は虚数なので、$\alpha = \frac{1}{2} \pm \frac{\sqrt{3} }{2}i$となる。
このことと条件(ロ)より、求める2次式は、
\begin{eqnarray}
x^2+\left( -\frac{1}{2} \mp \frac{\sqrt{3} }{2}i \right)x -\frac{1}{2} \pm\frac{\sqrt{3} }{2}i\\
x^2+\left( \frac{1}{2} \mp \frac{\sqrt{3} }{2}i \right)x -\frac{1}{2} \mp\frac{\sqrt{3} }{2}i
\end{eqnarray}となる(それぞれ複合同順)。
(1)(2)から、求める2次式は、次の通り。
\begin{eqnarray}
& & x^2+\left( -\frac{1}{2} + \frac{\sqrt{3} }{2}i \right)x -\frac{1}{2} -\frac{\sqrt{3} }{2}i \\
& & x^2+\left( -\frac{1}{2} -\frac{\sqrt{3} }{2}i \right)x -\frac{1}{2} +\frac{\sqrt{3} }{2}i \\
& & x^2+\left( \frac{1}{2} + \frac{\sqrt{3} }{2}i \right)x -\frac{1}{2} +\frac{\sqrt{3} }{2}i \\
& & x^2+\left( \frac{1}{2} -\frac{\sqrt{3} }{2}i \right)x -\frac{1}{2} -\frac{\sqrt{3} }{2}i \\
& & x^2 + \sqrt{2}ix-1 \\
& & x^2 - \sqrt{2}ix-1
\end{eqnarray}
【解答終】
【解説】
場合分けして考えるだけの問題ですが、ごちゃごちゃしやすく計算間違いしやすいです。
$f(x^3)$を直接$f(x)$で割って余りが0になるときを求める方法も考えられますが、余りを出すだけでも大変なのでオススメはしません。