センター試験 数学II・数学B 2020年度追試 第5問 解説
【選択問題】(第3問~第5問から2問選択)
(正規分布表は省略しています)
問題編
問題
以下の問題を解答するにあたっては、必要に応じて31ページの正規分布表を用いてもよい。
有権者数が1万人を超えるある地域において、選挙が実施された。
(1) 今回実施された選挙の有権者全員を対象として、今回の選挙と前回の選挙のそれぞれについて、投票したか、棄権した(投票しなかった)かを調査した。今回の選挙については、
今回投票、今回棄権
の2通りのどちらであるかを調べ、前回の選挙については、選挙権がなかった者が含まれているので、
前回投票、前回棄権、前回選挙権なし
の3通りのいずれであるかを調べた。この調査の結果は下の表のようになった。たとえば、この有権者全体において、今回棄権かつ前回投票の割合は $10$ %であることを示している。このとき、今回投票かつ前回棄権の人の割合は $\myBox{アイ}$ %である。
前回投票 前回棄権 前回選挙権なし 今回投票 $45$ % $\mybox{アイ}$ % $3$ % 今回棄権 $10$ % $29$ % $1$ % この有権者全体から無作為に1人を選ぶとき、今回投票の人が選ばれる確率は $0.\myBox{ウエ}$ であり、前回投票の人が選ばれる確率は $0.\myBox{オカ}$ である。
また、今回の有権者全体から900人を無作為に抽出したとき、その中で、今回棄権かつ前回投票の人数を表す確率変数を $X$ とする。このとき、 $X$ は二項分布 $B(900,0.\myBox{キク})$ に従うので、 $X$ の平均(期待値)は $\myBox{ケコ}$, 標準偏差は $\myBox{サ}.\myBox{シ}$ である。
次に、 $X$ が $105$ 以上になる確率を求めよう。 $Z=\dfrac{X-\mybox{ケコ} }{\mybox{サ}.\mybox{シ} }$ とおくと、標本数は十分に大きいので、 $Z$ は近似的に標準正規分布に従う。よって、この確率は $0.\myBox{スセ}$ と求められる。
(2) 今回の有権者全体を母集団とし、支持する政党がある人の割合(母比率) $p$ を推定したい。このとき、調査する有権者数について考えよう。
母集団から $n$ 人を無作為に抽出したとき、その中で、支持する政党がある人の割合(標本比率)を確率変数 $R$ で表すと、 $R$ は近似的に平均 $p$ 、標準偏差 $\sqrt{\dfrac{p(1-p)}{n} }$ の正規分布に従う。
実際に、 $n$ 人を無作為に抽出して得られた標本比率の値を $r$ とすると、 $n$ が十分に大きいとすれば、標準偏差を $\sqrt{\dfrac{r(1-r)}{n} }$ で置き換えることにより、 $p$ に対する信頼度 $95$ % の信頼区間 $C\leqq p \leqq D$ を求めることができる。その信頼区間の幅は $L=D-C=1.96\times\myBox{ソ}$ になる。 $\myBox{ソ}$ に当てはまる最も適当なものを、次の 0 ~ 5 のうちから一つ選べ。
0: $\dfrac{\sqrt{r(1-r)} }{n}$
1: $\dfrac{\sqrt{2r(1-r)} }{n}$
2: $\dfrac{2\sqrt{r(1-r)} }{n}$
3: $\sqrt{\dfrac{r(1-r)}{n} }$
4: $\sqrt{\dfrac{2r(1-r)}{n} }$
5: $2\sqrt{\dfrac{r(1-r)}{n} }$
過去の調査から、母比率はおよそ $50$ % と予想されることから、 $r=0.5$ とする。このとき、 $L=0.1$ になるような $n$ の値を求めると、 $n=\myBox{タチツ}$ であり、この $n$ の値は十分に大きいと考えられる。ただし、 $1.96^2=3.84$ として計算すること。
$\mybox{タチツ}$ 人を調査して、 $p$ に対する信頼度 $95$ % の信頼区間を求めると、この信頼区間の幅 $L$ は $\myBox{テ}$ 。 $\myBox{テ}$ に当てはまる最も適当なものを、次の 0 ~ 2 から一つ選べ。
0: $r$ の値によって変化せず、一定である
1: $r$ の値によって変化して、 $r=0.5$ のとき最大となる
2: $r$ の値によって変化して、 $r=0.5$ のとき最小となる
考え方
題材が珍しいですが、問題の流れは例年とほとんど変わりません。二項分布に関連する計算、正規分布表を使った確率の計算、母比率の推定など、毎年よく出るものが出題されているので、過去問をよくやっていればだいたい解けるでしょう。難しい計算もほとんどありません。
【選択問題】(第3問~第5問から2問選択)
(正規分布表は省略しています)
解答編
問題
以下の問題を解答するにあたっては、必要に応じて31ページの正規分布表を用いてもよい。
有権者数が1万人を超えるある地域において、選挙が実施された。
(1) 今回実施された選挙の有権者全員を対象として、今回の選挙と前回の選挙のそれぞれについて、投票したか、棄権した(投票しなかった)かを調査した。今回の選挙については、
今回投票、今回棄権
の2通りのどちらであるかを調べ、前回の選挙については、選挙権がなかった者が含まれているので、
前回投票、前回棄権、前回選挙権なし
の3通りのいずれであるかを調べた。この調査の結果は下の表のようになった。たとえば、この有権者全体において、今回棄権かつ前回投票の割合は $10$ %であることを示している。このとき、今回投票かつ前回棄権の人の割合は $\myBox{アイ}$ %である。
前回投票 前回棄権 前回選挙権なし 今回投票 $45$ % $\mybox{アイ}$ % $3$ % 今回棄権 $10$ % $29$ % $1$ %
解説
有権者全体を表にある6つのカテゴリーに分けているので、すべて足すと $100$ % になります。なので、今回投票かつ前回棄権の人の割合は
\begin{eqnarray}
100-(45+3+10+29+1)
&=&
100-88 \\[5pt]
&=&
12
\end{eqnarray}% となります。
解答
アイ:12
解答編 つづき
問題
この有権者全体から無作為に1人を選ぶとき、今回投票の人が選ばれる確率は $0.\myBox{ウエ}$ であり、前回投票の人が選ばれる確率は $0.\myBox{オカ}$ である。
解説
今回投票の人の割合は\[ 45+12+3=60 \]% なので、無作為に1人を選んで、その人が今回投票の人である確率は $0.60$ となります。
前回投票の人の割合は\[ 45+10=55 \]% なので、無作為に1人を選んで、その人が前回投票の人である確率は $0.55$ となります。
解答
ウエ:60
オカ:55
解答編 つづき
問題
また、今回の有権者全体から900人を無作為に抽出したとき、その中で、今回棄権かつ前回投票の人数を表す確率変数を $X$ とする。このとき、 $X$ は二項分布 $B(900,0.\myBox{キク})$ に従うので、 $X$ の平均(期待値)は $\myBox{ケコ}$, 標準偏差は $\myBox{サ}.\myBox{シ}$ である。
解説
今回棄権かつ前回投票の人の割合は、全体の $10$ % なので、 $X$ は二項分布 $B(900, 0.10)$ に従います。
$X$ の期待値は\[ 900\times 0.10=90 \]であり、標準偏差は\[ \sqrt{900\times 0.1\times(1-0.1)}=9.0 \]となります。
解答
キク:10
ケコ:90
サシ:90
解答編 つづき
問題
次に、 $X$ が $105$ 以上になる確率を求めよう。 $Z=\dfrac{X-\mybox{ケコ} }{\mybox{サ}.\mybox{シ} }$ とおくと、標本数は十分に大きいので、 $Z$ は近似的に標準正規分布に従う。よって、この確率は $0.\myBox{スセ}$ と求められる。
解答
$X$ に関する条件を $Z$ に関する条件に変形して考えます。
\begin{eqnarray}
& &
P\left( X \geqq 105 \right) \\[5pt]
&=&
P\left( X-90 \geqq 105-90 \right) \\[5pt]
&=&
P\left( \frac{X-90}{9} \geqq \frac{15}{9} \right) \\[5pt]
&=&
P\left( Z \geqq \frac{5}{3} \right) \\[5pt]
&=&
\frac{1}{2} -P\left(0\leqq Z \lt \frac{5}{3} \right) \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。ここで、正規分布表で $1.66$ の部分を見ると、 $0.4515$ なので、この確率は\[
0.5-0.4515=0.0485 \]となります。解答欄に合う形に四捨五入すると、 $0.05$ となります。
解答
スセ:05
解答編 つづき
問題
(2) 今回の有権者全体を母集団とし、支持する政党がある人の割合(母比率) $p$ を推定したい。このとき、調査する有権者数について考えよう。
母集団から $n$ 人を無作為に抽出したとき、その中で、支持する政党がある人の割合(標本比率)を確率変数 $R$ で表すと、 $R$ は近似的に平均 $p$ 、標準偏差 $\sqrt{\dfrac{p(1-p)}{n} }$ の正規分布に従う。
実際に、 $n$ 人を無作為に抽出して得られた標本比率の値を $r$ とすると、 $n$ が十分に大きいとすれば、標準偏差を $\sqrt{\dfrac{r(1-r)}{n} }$ で置き換えることにより、 $p$ に対する信頼度 $95$ % の信頼区間 $C\leqq p \leqq D$ を求めることができる。その信頼区間の幅は $L=D-C=1.96\times\myBox{ソ}$ になる。 $\myBox{ソ}$ に当てはまる最も適当なものを、次の 0 ~ 5 のうちから一つ選べ。
0: $\dfrac{\sqrt{r(1-r)} }{n}$
1: $\dfrac{\sqrt{2r(1-r)} }{n}$
2: $\dfrac{2\sqrt{r(1-r)} }{n}$
3: $\sqrt{\dfrac{r(1-r)}{n} }$
4: $\sqrt{\dfrac{2r(1-r)}{n} }$
5: $2\sqrt{\dfrac{r(1-r)}{n} }$
解説
正規分布表を見ると、 $\dfrac{0.95}{2}=0.475$ となるのは $z_0=1.96$ のときです。つまり、 $Z$ が標準正規分布に従うとすると\[ P(-1.96\leqq Z \leqq 1.96)=0.95 \]ということです。このときの信頼区間は $1.96\times 2$ です。
これより、 $p$ に対する信頼区間の幅は\[ 1.96\times 2\sqrt{\frac{r(1-r)}{n} } \]となります。
解答
ソ:5
解答編 つづき
問題
過去の調査から、母比率はおよそ $50$ % と予想されることから、 $r=0.5$ とする。このとき、 $L=0.1$ になるような $n$ の値を求めると、 $n=\myBox{タチツ}$ であり、この $n$ の値は十分に大きいと考えられる。ただし、 $1.96^2=3.84$ として計算すること。
解説
\begin{eqnarray} 0.1 &=& 1.96\times 2\sqrt{\frac{0.5(1-0.5)}{n} } \\[5pt] 0.1 &=& 1.96\times \sqrt{\frac{1}{n} } \\[5pt] \sqrt{n} &=& 1.96\times 10 \\[5pt] n &=& 1.96^2 \times 100 \\[5pt] \end{eqnarray}となります。問題文に $1.96^2=3.84$ で計算するように指定されているので、 $n=384$ となります。解答
タチツ:384
解答編 つづき
問題
$\mybox{タチツ}$ 人を調査して、 $p$ に対する信頼度 $95$ % の信頼区間を求めると、この信頼区間の幅 $L$ は $\myBox{テ}$ 。 $\myBox{テ}$ に当てはまる最も適当なものを、次の 0 ~ 2 から一つ選べ。
0: $r$ の値によって変化せず、一定である
1: $r$ の値によって変化して、 $r=0.5$ のとき最大となる
2: $r$ の値によって変化して、 $r=0.5$ のとき最小となる
解説
$p$ に対する信頼区間の幅 $L$ は $1.96\times 2\sqrt{\dfrac{r(1-r)}{384} }$ と書けます。ここで、
\begin{eqnarray}
r(1-r)
&=&
-r^2+r \\[5pt]
&=&
- \left(r-\dfrac{1}{2}\right)^2+\dfrac{1}{4}
\end{eqnarray}だから、 $L$ は $r$ の値によって変化し、 $r=0.5$ のときに最大になることがわかります。
解答
テ:1