【標準】高次方程式の解と係数
ここでは、高次方程式の虚数解から係数を求める問題を考えます。
高次方程式の虚数解から係数を求める
【基本】高次方程式の解と係数と似た内容です。解から係数を求める問題ですが、リンク先の問題と異なるのは、解が1つしかわかっていないのに、2つの係数を求めないといけない、ということです。
【基本】高次方程式と重解#代数学の基本定理で見たように、三次方程式には、3つの解があります。この問題ではそのうちの1個しかわかっていません。それなのに、 a, b という2つの値を求めるのは、なんだか無理そうな気がします。3つの解のうち、少なくとも2つの解が分かっていないと解けない気がします。ですが、まぁとりあえず考えていきましょう。
$x=1+\sqrt{3}i$ を解に持つということから、これを代入すれば等式が成り立つはずです。そのまま代入してもいいのですが、【標準】式の値(次数下げを用いて計算)のように、次数を下げてから代入するようにしてみましょう。
$x=1+\sqrt{3}i$ を次のように変形していきます。
\begin{eqnarray}
x &=& 1+\sqrt{3}i \\[5pt]
x-1 &=& \sqrt{3}i \\[5pt]
(x-1)^2 &=& (\sqrt{3}i)^2 \\[5pt]
x^2-2x+1 &=& -3 \\[5pt]
x^2 &=& 2x-4 \\[5pt]
\end{eqnarray}$x=1+\sqrt{3}i$ のときは、この等式が成り立ちます。これを使えば、元の方程式の左辺は
\begin{eqnarray}
& &
x^3+ax^2+bx+4 \\[5pt]
&=&
x(2x-4)+a(2x-4)+bx+4 \\[5pt]
&=&
2x^2-4x+2ax-4a+bx+4 \\[5pt]
&=&
2(2x-4)-4x+2ax-4a+bx+4 \\[5pt]
&=&
2ax-4a+bx-4 \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。こう変形してから、 $x=1+\sqrt{3}i$ を代入すると
\begin{eqnarray}
& &
2a(1+\sqrt{3}i)-4a+b(1+\sqrt{3}i)-4 \\[5pt]
&=&
2a+2a\sqrt{3}i-4a+b+b\sqrt{3}i-4 \\[5pt]
&=&
(-2a+b-4)+(2a+b)\sqrt{3}i \\[5pt]
\end{eqnarray}となることがわかります。もちろん、直接計算しても同じ結果になります。これが $0$ になることと、 a, b が実数であることから
\begin{eqnarray}
\left\{
\begin{array}{l}
-2a+b-4 = 0 \\
2a+b=0
\end{array}
\right.
\end{eqnarray}となることがわかります。【基本】複素数で見たように、複素数の場合は、両辺の実部同士、虚部同士を比較することができます。このことから、条件式が2つ得られるんですね。解が1つしかなくても、このことを利用して2つの条件式が得られるため、 a, b が求められるようになります。
2つ目の式から $b=-2a$ なので、これを1つ目の式に代入して
\begin{eqnarray}
-2a+(-2a)-4 &=& 0 \\[5pt]
a &=& -1 \\[5pt]
\end{eqnarray}が得られます。 $b=-2a$ なので\[ b=2 \]も得られます。
最後に、残りの解を求めましょう。方程式は\[ x^3-x^2+2x+4=0 \]だとわかったので、左辺を因数分解して\[ (x+1)(x^2-2x+4)=0 \]となります。これから、解は\[ x=-1,1\pm\sqrt{3}i \]と求められます。以上から、残りの解は、\[ x=-1, 1-\sqrt{3}i \]である、とわかります。
おわりに
ここでは、虚数解から方程式の係数を求める問題を考えました。
ある虚数解を持つという条件から係数を求める場合、その係数が実数であることがわかっていると、実部同士、虚部同士を比較することができることから、条件を導き出すことができます。複素数の分野では、このテクニックをよく使うので、覚えておきましょう。