🏠 Home / 数学II / 複素数と方程式 / 高次方程式と複素数

【発展】実数係数の方程式における虚数解と共役複素数の関係

ここでは、実数係数の方程式の虚数解に関する性質を見ていきます。虚数解を持てば、その共役複素数も解になる、という性質について、です。

📘 目次

虚数解の共役複素数

【標準】高次方程式の解と係数では、虚数解から係数を求め、他の解も求める、という問題を考えました。そこで扱った方程式は、すべての係数が実数であったため、実部同士・虚部同士を比較する、ということができたんでしたね。 $1+\sqrt{3}i$ が解であるという条件から、 $-1,1-\sqrt{3}i$ という他の解を求めました。

ところで、この2つの虚数解を見ると、虚部の符号が違うだけです。このように、虚部の符号を反転させた複素数のことを、共役複素数というのでした。【基本】複素数の四則演算で少しだけ扱っています。

上の問題で考えた方程式では、 $1+\sqrt{3}i$ は解となり、その共役複素数 $1-\sqrt{3}i$ も解となっていました。実は、これはたまたまではありません。係数が実数であれば、必ず成り立ちます。一般的に書くと、次が成り立ちます。

実数係数方程式の共役複素数解
実数係数の n 次方程式が虚数解を持つとき、その共役複素数も解となる。

つまり、上のリンク先にある問題では、「 $1+\sqrt{3}i$ という解を持つ」といっただけで、「 $1-\sqrt{3}i$ も解である」ことがわかるわけなんですね(すべての係数が実数だから)。

この事実は、教科書や参考書で紹介されていることもありますが、証明まで載っていることは少ないです。また、この事実を知らなければ解けない試験問題も、あまりないです。しかし、有名だしきれいな結果でもあるので、覚えておくといいと思います。

この性質の証明

さて、上の性質がなぜ成り立つかを考えていきましょう。共役複素数の性質を使って証明することが多いですが、ここでは、余りに着目した考え方で証明していきます。

$P(x)$ を、実数係数の整式とします。 $P(x)=0$ が虚数解を持つとし、その解を $a+bi$ と書くことにします。ここで、 $a, b$ は実数で、 $b\ne 0$ とします。このときに、 $a-bi$ も解になることを示せばいいわけですね。

$x=a+bi$ が解であることから、 $P(a+bi)=0$ が成り立ちます。ここで、【標準】高次方程式の解と係数で使った、次数下げに似たテクニックを使ってみます。 $x=a+bi$ を直接扱うのではなく、次のように変形してから考えてみましょう。
\begin{eqnarray} x &=& a+bi \\[5pt] x-a &=& bi \\[5pt] (x-a)^2 &=& (bi)^2 \\[5pt] x^2-2ax+a^2 &=& -b^2 \\[5pt] x^2-2ax+a^2+b^2 &=& 0 \\[5pt] \end{eqnarray}$x=a+bi$ を変形したものなので、最後の式に $x=a+bi$ を代入すればこの等式は成り立ちます。これを踏まえ、 $P(x)$ をこの式の左辺で割ってみましょう。商を $Q(x)$ とし、余りを $mx+n$ とします。すると、次の等式が成り立ちます。\[ P(x) = (x^2-2ax+a^2+b^2) Q(x) +mx+n \]割る式も割られる式も係数が実数なので、余りの係数も実数になります。

ここに $x=a+bi$ を代入すると、これは $P(x)=0$ の解だから、 $P(a+bi)=0$ が成り立ちます。また、右辺の1つ目のカッコ内も $0$ になります。よって、余りの部分も $0$ となるので
\begin{eqnarray} m(a+bi) +n &=& 0 \\[5pt] (am+n) +bmi &=& 0 \\[5pt] \end{eqnarray}となり、 $am+n=0$ と $bm=0$ が得られます。もともと、 $b\ne 0$ だった(虚数解を持つ、という条件だから)ので、2つ目の条件式から $m=0$ が得られ、これと1つ目の条件式から $n=0$ も得られます。つまり、余りは $0$ ということです。

以上から、\[ P(x) = (x^2-2ax+a^2+b^2) Q(x) \]が得られました。ここで、元の解の共役複素数について
\begin{eqnarray} & & (a-bi)^2 -2a(a-bi) +a^2+b^2 \\[5pt] &=& a^2 -2abi -b^2 -2a^2 +2abi +a^2+b^2 \\[5pt] &=& 0 \end{eqnarray}が成り立つので、 $x=a-bi$ を代入すると、右辺の1つ目のカッコ内は $0$ となります。よって、\[ P(a-bi)=0 \]となるため、 $x=a-bi$ も $P(x)=0$ の解となります。これで証明終わりです。

途中で出てきた式\[ x^2-2ax+a^2+b^2 = 0 \]で割ったときの余りが $0$ になること、そしてこの二次方程式の解が $x=a\pm bi$ となっていることが大きく効いています。

例えば、この性質を使えば、【標準】高次方程式の解と係数の問題では、係数が実数であるので、 $1+\sqrt{3}i$ が解であることから $1-\sqrt{3}i$ も解であることがすぐにわかります。そのため、もとの式は\[ (x-1-\sqrt{3}i)(x-1+\sqrt{3}i) \]で割り切れます。こうして、実際に割って、残りの解を求めることも可能です。

おわりに

ここでは、実数係数の方程式について、虚数解を持てば、その共役複素数も解になることを見ました。使える場面は少ないかもしれませんが、大事な性質なので知っておくといいと思います。

関連するページ

YouTubeもやってます

チャンネル登録はコチラから (以下は、動画のサンプルです)
慶應義塾大学薬学部2024年度数学第1問5 同志社大学文系2024年度数学第1問3 昭和大学医学部I期2024年度数学第2問 兵庫医科大学2024年度数学第3問 共通テスト2B2024年度第3問2のヒントについて 久留米大学医学部推薦2024年度数学第4問