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【基本】1の3乗根

ここでは、高次方程式の解の例として、1の3乗根について見ていきます。

📘 目次

高次方程式の解

一次方程式や二次方程式の解く問題は、今までに何度も扱ってきました。ここからは、三次以上の方程式、いわゆる高次方程式について考えていきます。

高次方程式の場合、簡単な解の公式はありません。三次方程式には、一応、解の公式がありますが、複雑すぎて使い物になりません。それではどうやって解くかというと、【基本】因数定理で見た内容などを利用して、二次式以下の積に因数分解するんですね。

なので、高次方程式は、解けるものと解けないものがあります。「解けない」というのは、具体的な値が求められない、ということです。なんだか不安定ですが、試験で「次の高次方程式の解を求めなさい」と言われれば、普通は因数分解ができるはずです。

1の3乗根

さて、具体的な高次方程式を解いてみましょう。まずは、最もシンプルなものです。

例題1
$x^3=1$ を解きなさい。

$x=1$ が解であることはすぐにわかりますが、他に解はないでしょうか。

まず、移行をして $x^3-1=0$ とします。次にこれを、二次式以下の積にすることを考えます。「3乗引く3乗」の因数分解の公式を使う、と考えてもいいですし、因数定理から $(x-1)$ で割り切れる、と考えてもいいのですが、因数分解をすると次のようになります。
\begin{eqnarray} x^3-1=(x-1)(x^2+x+1) \end{eqnarray}一つ目のカッコから、 $x=1$ が得られます。二つ目のカッコ内は、二次方程式なので\begin{eqnarray} x = \frac{-1\pm\sqrt{1^2-4} }{2} = \frac{-1\pm\sqrt{3}i}{2} \end{eqnarray}と求められます。

以上から、この三次方程式の解は
\begin{eqnarray} x = 1, \frac{-1\pm\sqrt{3}i}{2} \end{eqnarray}と求めることができます。

これらの解は、3乗して1になるものなので、1の3乗根(cubic root)といいます。立方根ということもあります。また、1の3乗根のうち、虚数のものを $\omega$ で表すことがあります。これは、オメガというギリシャ文字の1つです。

1の3乗根を使った計算問題

1の3乗根を使った計算をしてみましょう。少しパズルチックです。

例題2
1の3乗根のうち、虚数のものを $\omega$ とする。次の値を求めなさい。
(1) $\omega^2+\omega+1$
(2) $\omega^4+\omega^2+1$
(3) $\omega+\dfrac{1}{\omega}+1$

$\omega = \dfrac{-1\pm\sqrt{3}i}{2}$ なので、これを2乗するのは大変だな、と思うかもしれませんが、実はそんな計算をする必要はありません。上の例題1からわかるように、 $\omega$ は次の二次方程式の解でしたね。\[
x^2+x+1=0 \]つまり、 $x=\omega$ とすれば、この等式が成り立ちます。実際に代入すると\[
\omega^2+\omega+1=0 \]となります。この左辺は(1)そのものです。つまり、(1)の答えは $0$ です。

(2)についても考えましょう。4乗がありますが、これも真面目に計算する必要はありません。なぜなら、 $\omega$ は1の3乗根なので、「3乗すれば1である」ことが使えるからです。これを使えば\[ \omega^4+\omega^2+1 = \omega+\omega^2+1 \]となり、(1)と同じ式になるので、(2)の答えも $0$ です。

最後の(3)を考えましょう。 $\dfrac{1}{\omega}$ がやっかいです。分母の実数化をしないといけない気がしますが、これもやはり真面目に計算する必要はありません。 $\omega^3=1$ なのでこれを掛けると
\begin{eqnarray} \omega+\dfrac{1}{\omega}+1 &=& \omega+\dfrac{1}{\omega} \times \omega^3+1 \\[5pt] &=& \omega+\omega^2+1 \\[5pt] \end{eqnarray}となり、結局(3)も $0$ となります。

1の3乗根 $\omega$ を使う計算では、次の2つの性質が重要です。

  • $\omega^2+\omega+1=0$
  • $\omega^3=1$
これらを使って簡単な式に変形してから、計算するようにしましょう。やっかいな計算はいらないことがほとんどです。

おわりに

ここでは、高次方程式の解の例として、1の3乗根について見てきました。少しパズルチックな計算をすることがありますが、使う道具は2つだけなので、工夫して計算しましょう。

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