【標準】剰余の定理
ここでは、剰余の定理を使って、整式を二次式で割ったときの余りを求める問題を見ていきます。
剰余の定理の復習
【基本】剰余の定理で見た通り、剰余の定理を使えば、整式を一次式で割ったときの余りが簡単に出せるのでした。剰余の定理とは、次のような内容です。
例えば、 $x^3+x^2+x+1$ を $2x-1$ で割ったときの余りであれば、 $x=\dfrac{1}{2}$ を代入して\[ \frac{1}{2^3}+\frac{1}{2^2}+\frac{1}{2}+1 = \frac{15}{8} \]と求めることができます。割り算をしなくても余りが求められるので楽ですね。
二次式で割ったときの余り
剰余の定理は、あくまでも「一次式で割ったときの余り」です。なので、このような「二次式で割ったときの余り」に関する問題とは関係ないような気もします。
ここで思い出したいのは、剰余の定理をどうやって導いたか、ということです。 $ax+b$ で割ったときの商を $Q(x)$ とし、余りを $r$ としたとき、元の式を\[ (ax+b)Q(x)+r \]と書いたことから導けましたね。この x に $-\dfrac{b}{a}$ を代入すると、商の部分が消えるため、商を求めることなく、余りだけが求まるのでした。商を求めなくてもいいので、割り算をしなくてもいいんですね。
二次式で割るときも、同じように上の形で書いてみましょう。一次式で割るときと異なるのは、余りの次元です。一次式で割ると余りは定数ですが、二次式で割ったときの余りは一次以下の式です。なので、二次式で割ったときの余りは\[ mx+n \]となります。
$P(x)$ を $x^2-3x+2$ で割ったときの商を $Q(x)$ とし、余りを $mx+n$ とします。すると、次の等式が成り立ちます。\[ P(x)=(x^2-3x+2)Q(x)+mx+n \]この m, n を求めればいいということですね。といっても、これはどうすれば求められるでしょうか。
一次式で割ったときのことをもう一度考えてみましょう。割ったときの商を考えなくてもいいように、割る式が $0$ になるときを考えていましたね。二次式でも同じです。割る式が $0$ になるときを考えましょう。割る式は\[ x^2-3x+2=(x-1)(x-2) \]と因数分解できます。よって、\[ P(x)=(x-1)(x-2)Q(x)+mx+n \]と変形できるので、 $x=1,2$ を代入したときの情報から、 m, n を求めればよさそうですね。しかし、 $x=1,2$ を代入したときの値はどうすれば求まるでしょうか。
これには、まだ使っていない条件が使えます。「 $x^2-1$ で割ると余りが $x+1$ 」ということは、 $x^2-1$ で割ったときの商を $Q_1(x)$ とすると\[ P(x)=(x^2-1)Q_1(x)+(x+1) \]が成り立つということです。ここで、 $x=1$ とすると、右辺の前半部分が消え、\[ P(1)=1+1=2 \]が得られます。知りたかった「 $x=1$ を代入したときの値」がわかりました。 $x=2$ を代入しても、 $Q_1(x)$ が残るので、この条件からはわかりません。
同様にして、「 $x^2-4$ で割ると余りが $4x+16$ 」について考えましょう。 $x^2-4$ に $x=2$ を代入すると $0$ になることから、商の部分が消えることがわかります。よって、\[ P(2)=4\cdot 2+16=24 \]となります。
以上から、 $x=1$ を代入した式\[ P(1)=m+n=2 \]と $x=2$ を代入したときの式\[ P(2)=2m+n=24 \]が得られます。この連立方程式を解けば、\[ m=22, n=-20 \]と求められます。よって、 $P(x)$ を $x^2-3x+2$ で割ったときの余りは\[ 22x-20 \]だということがわかります。
式を式で割ったときに\[ P(x)=Q(x)A(x)+R(x) \]の形で表現することはとても重要です。余りに関する条件しかない場合は、割る式にうまい値を入れて、この式を利用して考えれば、だいたいうまくいきます。
おわりに
ここでは、整式を二次式で割ったときの余りを求める問題を見ました。余りが一次以下の式になるため、条件式が2つ必要です。剰余の定理で使ったテクニックを繰り返し使って、条件を導き出しましょう。