【標準】漸化式と等比数列の極限
ここでは、漸化式から一般項を求めて、数列の極限を求める問題を見ていきます。
漸化式と等比数列の極限
$a_{n+1}=\dfrac{2}{3}a_n+1$ のように、それ以前の項から、次の項をただ1通りに決める規則を表した式を、漸化式というのでした(参考:【基本】漸化式)。漸化式から一般項を求める方法は、漸化式のタイプに応じていろんな種類がありますが、今の場合は、【基本】漸化式(特殊解型)で見たように、特性方程式を解いて考えていきます。
$a_{n+1}$, $a_n$ の部分を $\alpha$ と置くと、
\begin{eqnarray}
\alpha &=& \dfrac{2}{3}\alpha+1 \\[5pt]
\alpha &=& 3 \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。よって、 $3=\dfrac{2}{3}\cdot 3+1$ が成り立つので、これを漸化式から辺々引くと\[ a_{n+1}-3 = \frac{2}{3}(a_n-3) \]となります。よって、数列 $\{a_n-3\}$ は、初項が $a_1-3=1$ で、公比が $\dfrac{2}{3}$ の等比数列となります。なので、
\begin{eqnarray}
a_n-3 &=& \left(\frac{2}{3}\right)^{n-1} \times 1 \\[5pt]
a_n &=& \left(\frac{2}{3}\right)^{n-1} +3 \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。ここまでは、数列の分野で学んだ内容ですが、ここまでくれば、極限を求めるのも簡単ですね。右辺の分数のところは、絶対値が 1 より小さい公比をもつ等比数列と考えられるので、 $0$ に収束します。よって、\[ \lim_{n\to\infty} a_n=3 \]となることがわかります。
特性方程式と等比数列の極限
先ほどの問題では、初項と漸化式を見ただけでは「数列が収束すること」まではわかりません。一般項を求めるまではわかりません。
しかし、もし数列が収束すると仮定すると、極限値を求めることはできます。\[ a_{n+1}=\dfrac{2}{3}a_n+1 \]という漸化式で、 $n\to\infty$ とすると、 $a_n$ も $a_{n+1}$ も同じ値に収束します。この収束値を $\alpha$ とすると、\[ \alpha=\dfrac{2}{3}\alpha+1 \]となります。これはどこかで見たことがある式ですね。特性方程式そのままです。特殊解がそのまま極限値になるんですね。
$a_{n+1}=pa_n+q$ $(p\ne1,q\ne0)$ の形をした漸化式の場合、このことは収束するなら他のケースでも成り立ちます。しかし、「収束するなら」という条件付きです。
例えば、 $a_1=1$, $a_{n+1}=2a_n+1$ という漸化式だったとしましょう。この特性方程式を考えると\[ \alpha=2\alpha+1 \]なので、 $\alpha=-1$ となりますが、これが極限値になることはないですね。どこにも負になる要素がないのに、極限値だけ負になることはありません。そもそも、この数列は、正の無限大に発散することは簡単にわかります(正の数を2倍して1を足す、を繰り返すのだから)。特殊解が極限値になるためには、「収束する」という条件が必要であることがわかります。
「収束する」という条件が必要であることから、 $a_{n+1},a_n$ を $\alpha$ で置き換えたものを解いても、それが答えになるとは限りません。なので、解答には書けないのですが、答えの予想には使えます。答えが事前に分かっていれば考えるのも楽になります。「収束すると仮定すると、極限値はこうなるよなぁ」という予想を利用することは、今後よく使います。
おわりに
ここでは、漸化式から一般項を求め、等比数列の極限に帰着させる問題を見てきました。漸化式を使って数列の極限を考える問題にはいろんな種類があり、例えば、「一般項は求められないけど、極限値はわかる」といったものもあらわれます。