【応用】数列の極限(二項定理)

ここでは、数列の極限を求めるときに、二項定理を利用するものを見ていきます。

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数列の極限と二項定理

二項定理を用いて数列の極限を考える、というのは、【基本】等比数列の極限のところで見ています。 $\{r^n\}$ の極限は、 $r\gt 1$ なら正の無限大に発散しますが、そのことを示すときに使いました。

$r=1+h$ とすると、 $r\gt 1$ なら $h\gt 0$ となります。これに加え、二項定理から、
\begin{eqnarray}
r^n
&=&
(1+h)^n \\[5pt] &\geqq &
1+nh \\[5pt] \end{eqnarray}が言えるのでした(参考:【標準】n乗の展開と二項定理)。最後の部分は、二項定理を使って展開すると出てくる項 ${}_{n}\mathrm{C}_k h^k$ はすべて0以上なので、 $k\geqq 2$ の部分を無視したわけですね。

この不等式を見れば、最後の式が $n\to\infty$ のときに $1+nh\to\infty$ となることがわかるので、 $r^n\to\infty$ となることもわかります。

この手法を応用すれば、他の場合の極限も考えることができます。

二項定理を用いた数列の極限の例1

例題1
次の極限を求めなさい。\[ \lim_{n\to\infty} \dfrac{n}{2^n} \]

分母も分子も正の無限大に発散します。しかし、【標準】数列の極限で見たように、分母・分子を同じ数で割る方法もあまりうまくいきません。 $n,2^n$ が似た形をしていないため、直接比べることは難しいんですね。

そこで、先ほど見た手法が使えます。二項定理を使えば、 $2^n$ の部分から、 $n$ の1乗や2乗が出てきます。二項定理を使うと、 $n\geqq 2$ のときは、
\begin{eqnarray}
2^n
&=&
(1+1)^n \\[5pt] &\geqq&
1+n+\dfrac{n(n-1)}{2} \\[5pt] \end{eqnarray}となります。二項定理を使って展開した項のうち、3つだけを取り出しています。他の項は0以上ですね。これより、
\begin{eqnarray}
\dfrac{n}{2^n}
&\leqq &
\dfrac{n}{1+n+\dfrac{n(n-1)}{2}} \\[5pt] &\leqq &
\dfrac{\frac{1}{n}}{\frac{1}{n^2}+\frac{1}{n}+\dfrac{(n-1)}{2n}} \\[5pt] \end{eqnarray}となります。ここで、 $n\to\infty$ としたとき、最後の式の分子は $0$ に収束し、分母は $\dfrac{1}{2}$ となるため、全体では最後の式は $0$ に収束します。また、 $\dfrac{n}{2^n}$ は正なので、はさみうちの原理から\[ \lim_{n\to\infty} \dfrac{n}{2^n}=0 \]となることがわかります。

これは、 $\lim_{n\to\infty} \dfrac{n^2}{2^n}$ や $\lim_{n\to\infty} \dfrac{n^3}{2^n}$ の場合も、同じように $0$ に収束することがわかります。二項定理で、分子より速く大きくなるようなところまで抜き出せば、分母の方がはやく無限大に行くことがわかります。同じようにはさみうちの原理から示せます。

また、 $2^n$ の $2$ のところも、 $1$ より大きければ、他の数字でも成り立ちます。本質的には、 $1+h$ とおいたときに、 $h\gt 0$ となる条件が大事なので、この条件があれば、同様に示せます。

このことは、別のところでも将来出てきますが、「 $n$ の多項式よりも、 $n$ 乗の方が発散するスピードが速い」ということは今のうちに知っておくといいでしょう。

二項定理を用いた数列の極限の例2

例題2
$0\lt x\lt1$ のとき、次の極限を求めなさい。\[ \lim_{n\to\infty} n x^n \]

$n$ は限りなく大きくなり、 $x^n$ は0に近づいていきます。こういう場合、積の極限は工夫して求めなければいけません。

ただ、さきほど $n$ 乗に関する極限を考えましたね。これを使いまわすことを考えてみましょう。

$r=\dfrac{1}{x}$ とすると、 $r\gt 1$ となります。また、\[ n x^n=\dfrac{n}{r^n} \]となるため、これは先ほどと同じ極限を考えることになります。よって、極限値は同じで、\[ \lim_{n\to\infty} n x^n =0 \]となります。

おわりに

ここでは、二項定理を用いた数列の極限を考える問題を見てきました。将来、関数の極限のところでもう一度詳しく見ることになりますが、ここでは「 $n$ 乗の方がはやい」ことを知っておきましょう。また、示すには、二項定理を使って展開し、一部の項だけ使う、ということも知っておきましょう。