【標準】部分分数分解と不定積分
ここでは、部分分数分解を利用して不定積分を求める計算を見ていきます。なお、 $C$ は積分定数です。
部分分数分解と不定積分その1
分数に関する不定積分は、【基本】xのp乗の不定積分で見た、\[ \int \dfrac{1}{x} dx=\log|x|+C \]が使えそうです。しかし、例題の不定積分は、 $\log|x(x+1)|+C$ ではありません。微分してみると、\[ \frac{2x+1}{x(x+1)} \]となってしまいます。分母が二次式なので、分子に一次式が残ってしまうんですね。
分数式の分母が、二次式ではなく一次式になっていれば、 $\log$ が使えるようになります。このような、分数式の分母の次数を下げたい場合には、部分分数分解を試してみましょう。
部分分数分解とは、分数式を複数の分数式に分解することを言います。過去では、【基本】和の記号Σと部分分数分解などで出てきています。
以下の場合、被積分関数の分母を見ると、\[ \dfrac{1}{x(x+1)}=\dfrac{a}{x}+\dfrac{b}{x+1} \]と分解できるんじゃないか、できたらうれしいな、と考えられます。この右辺をまとめると、\[ \frac{(a+b)x+a}{x(x+1)} \]なので、 $a=1$, $b=-1$ となればいいことがわかります。
このことと、 $\dfrac{1}{x}$ の不定積分を使えば
\begin{eqnarray}
& &
\int \dfrac{1}{x(x+1)} dx \\[5pt]
&=&
\int \left(\frac{1}{x}-\frac{1}{x+1}\right) dx \\[5pt]
&=&
\log |x| -\log |x+1| +C \\[5pt]
&=&
\log \left|\frac{x}{x+1}\right| +C \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。最後の式を微分してみると、たしかに $\dfrac{1}{x(x+1)}$ となることがわかります。
部分分数分解と不定積分その2
先ほどの例題とよく似ていますが、 $x$ のところが $x^2$ になっています。
これもそのままでは積分できないので、部分分数分解を行います。今回は、 $\dfrac{1}{x^2}$ と $\dfrac{1}{x+1}$ の部分に分けることになります。
ただ、注意が必要なのは、 $\dfrac{1}{x^2}$ の分子は、定数とは限らないという点です。 $ax+b$ の形になっている可能性があるわけですね。
結局、\[ \dfrac{1}{x^2(x+1)}=\frac{a}{x}+\dfrac{b}{x^2}+\dfrac{c}{x+1} \]を満たすように、 $a,b,c$ を求めることになります。この右辺を通分して、分母を $x^2(x+1)$ とすると、分子は
\begin{eqnarray}
& &
ax(x+1)+b(x+1)+cx^2 \\[5pt]
&=&
(a+c)x^2+(a+b)x+b \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。よって、この分子が $1$ となるには、 $a=-1$, $b=1$, $c=1$ とすればいいことがわかります。よって、
\begin{eqnarray}
& &
\int \dfrac{1}{x^2(x+1)} dx \\[5pt]
&=&
\int \left(-\frac{1}{x}+\frac{1}{x^2}+\frac{1}{x+1}\right) dx \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。1つ目と3つ目の項は $\dfrac{1}{x}$ の不定積分を、2つ目は $x^{-2}$ の不定積分を利用して、
\begin{eqnarray}
& &
-\log |x| -\frac{1}{x} +\log|x+1| +C \\[5pt]
&=&
\log \left|\frac{x+1}{x}\right| -\frac{1}{x} +C \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。
おわりに
ここでは、部分分数分解を用いた不定積分の計算を見ました。部分分数分解を用いる場面はいくつかありますが、積分の分野では、被積分関数が、不定積分を計算できるものに分解するために使います。分解した後の分母が二次式の場合には、分子は一次式となることがある点に注意しましょう。