【標準】余弦定理と比
ここでは、辺の長さの比が与えられている状況で、角を求める問題を考えます。一見すると、余弦定理が使えないようにも思えますが、少し工夫すれば使えるようになります。
なお、辺 $\mathrm{AB}$, $\mathrm{BC}$, $\mathrm{CA}$ の長さを、それぞれ、 $c,a,b$ と書き、角 $\angle \mathrm{ CAB }$, $\angle \mathrm{ ABC }$, $\angle \mathrm{ BCA }$ の大きさを、それぞれ、 $A,B,C$ と書くことにします。
例題
3辺の長さがわかっていれば余弦定理が使えますが、今は3辺の長さの比しかわかっていません。しかし、この場合でも余弦定理が使えます。形が決まるため、角度に関する情報が確定するんですね。
$a:b:c=\sqrt{2}:2:(1+\sqrt{3})$ なので、正の数 k を用いて、 $a=\sqrt{2}k$, $b=2k$, $c=(1+\sqrt{3})k$ と書けます。このように置いて、余弦定理を使うと、後でわかる通り、うまい具合に k が消えます。
余弦定理から次のように計算できます。
\begin{eqnarray}
\cos A
&=&
\frac{ (2k)^2+\{(1+\sqrt{3})k\}^2-(\sqrt{2}k)^2 }{ 2\cdot 2k \cdot (1+\sqrt{3})k } \\[5pt]
&=&
\frac{ 4k^2+(4+2\sqrt{3})k^2-2k^2 }{ 4(1+\sqrt{3})k^2 } \\[5pt]
&=&
\frac{ 6+2\sqrt{3} }{ 4(1+\sqrt{3}) } \\[5pt]
&=&
\frac{ (6+2\sqrt{3})(1-\sqrt{3}) }{ 4(1+\sqrt{3})(1-\sqrt{3}) } \\[5pt]
&=&
\frac{ 6-6\sqrt{3}+2\sqrt{3}-6 }{ -8 } \\[5pt]
&=&
\frac{ \sqrt{3} }{ 2 } \\
\end{eqnarray}$k^2$ が分母分子にあるので、きれいに消えます。式変形の後半では、有理化を行っています。この計算が不安な人は、【標準】分母に項が複数あるときの有理化を見ましょう。
上の計算から、 $A=30^{\circ}$ と求められます。
おわりに
辺の比が与えられている場合に角度を求める問題を考えました。比が与えられている場合に、上のように k 倍して考える、というのはよくある手法なので覚えておきましょう。
ちなみに、辺の比が決まっただけでなぜ角度が出るのかというと、形が決まるからなんですね。2つの三角形があって、3辺の比が一致していたら、その2つの三角形は相似になります。形が決まるから、角度も求められる、ということです。