【標準】定積分で表された関数を微分する
ここでは、定積分で表された関数を微分する計算について見ていきます。
定積分で表された関数の微分その1
【基本】定積分と微分の関係の復習で見たように、次の関係式が成り立ちます。\[ \dfrac{d}{dx}\int_a^x f(t) dt=f(x) \]$a$ から $x$ までの定積分を $x$ について微分すると、被積分関数に戻る、ということですね。これを使えば「この例題の答えは $(x^2-x^2)=0$ になるのではないか」という気がしますが、そうではありません。この例題は直接計算しても簡単なので、実際に計算してみましょう。
この定積分は次のように計算できます。
\begin{eqnarray}
& &
\int_0^x (x^2-t^2) dt \\[5pt]
&=&
\Big[ x^2t-\dfrac{1}{3}t^3 \Big]_0^x \\[5pt]
&=&
x^3-\dfrac{1}{3}x^3 \\[5pt]
\end{eqnarray}1行目から2行目は、 $t$ について積分をするので、 $x$ は定数のように扱っています。これを $x$ について微分すれば、\[ 3x^2-x^2 \]となりますね。2項目の $-x^2$ は、もとの被積分関数の $-t^2$ の部分で、 $t$ を $x$ に置き換えたものになっています。ここは単純に置き換えた結果になっていますが、1項目の $3x^2$ はもとの被積分関数の $x^2$ とは異なっています。
なぜこのようになってしまうかは、次のように積分を分解すればわかりやすくなります。
\begin{eqnarray}
& &
\int_0^x (x^2-t^2) dt \\[5pt]
&=&
\int_0^x x^2 dt-\int_0^x t^2 dt \\[5pt]
&=&
x^2 \int_0^x dt-\int_0^x t^2 dt \\[5pt]
\end{eqnarray}$t$ について積分をするので、 $x$ は定数のように扱います。最後の式について、2項目を $x$ で微分すると $x^2$ になることは、冒頭で見た「定積分と微分の関係」から直接わかります。一方、1項目は、積の微分をすることになります。1項目の微分は
\begin{eqnarray}
& &
\left(x^2 \int_0^x dt\right)' \\[5pt]
&=&
(x^2)' \int_0^x dt +x^2 \left(\int_0^x dt\right)' \\[5pt]
&=&
2x \cdot (x-0) +x^2 \cdot 1 \\[5pt]
&=&
3x^2
\end{eqnarray}となります。こうして、もとの定積分を微分したものは\[ 3x^2-x^2=2x^2 \]となることがわかります。
被積分関数に $x$ が含まれる場合は、単純に $t$ を $x$ に置き換えるだけではダメで、被積分関数から $x$ を出すように変形しないといけません。
定積分で表された関数の微分その2
先ほどの例題の内容を踏まえて考えてみましょう。大事なのは、被積分関数から、 $x$ を出すように変形することです。まずは、次のように変形しましょう。
\begin{eqnarray}
& &
\int_0^x (x^2-t^2)e^t dt \\[5pt]
&=&
\int_0^x x^2 e^t dt -\int_0^x t^2 e^t dt \\[5pt]
&=&
x^2\int_0^x e^t dt -\int_0^x t^2 e^t dt \\[5pt]
\end{eqnarray}$t$ で積分をするので、 $x$ は定数のように扱います。2項目を $x$ で微分すると $x^2 e^x$ になることは、冒頭で見た「定積分と微分の関係」からわかります。1項目は、先ほどの例題と同じように、積の微分だと考えればいいですね。以上から、 $x$ で微分した結果は
\begin{eqnarray}
& &
2x \int_0^x e^t dt +x^2 e^x -x^2 e^x \\[5pt]
&=&
2x \Big[ e^t \Big]_0^x \\[5pt]
&=&
2x(e^x-1) \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。
おわりに
ここでは、定積分と微分の関係を用いて、定積分で表された関数を微分する方法を見ました。被積分関数に $x$ が入っている状態で $x$ で微分する際には、被積分関数から $x$ を出してから計算するようにしましょう。そうでないと、積の微分を使わないといけないことに気付かず、間違った計算をしてしまう可能性があります。