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【応用】定積分と極限

ここでは、定積分と極限をからめた問題を見ていきます。

📘 目次

定積分と極限をからめた問題その1

例題1
次の極限値を求めなさい。\[ \lim_{x\to 0} \dfrac{1}{x}\int_0^x e^t\cos t dt \]

定積分の計算が簡単にできるなら直接計算してもいいですが、今の場合は少し難しそうです。それよりも、積分区間に $x$ が含まれていることに注目しましょう。このような形は、【基本】定積分と微分の関係の復習などでも出てきました。同じように、「微分して被積分関数になるもの」を利用して考えてみることにしましょう。

まず、\[ F'(x)=e^x\cos x \]となる関数 $F(x)$ を考えましょう。これを使えば、定積分は $F(x)-F(0)$ と表すことができるので、極限は
\begin{eqnarray} & & \lim_{x\to 0} \dfrac{1}{x}\int_0^x e^t\cos t dt \\[5pt] &=& \lim_{x\to 0} \dfrac{F(x)-F(0)}{x} \\[5pt] \end{eqnarray}と書けます。これをさらに変形して\[ \lim_{x\to 0} \dfrac{F(x)-F(0)}{x-0} \]と書けば、これはまさに微分の定義式そのままです(参考:【基本】微分係数と導関数(の復習))。上の式は、 $F(x)$ の $x=0$ での微分係数の定義式なので、 $F'(0)$ となります。 $F'(x)$ は被積分関数 $e^x\cos x$ となることから、この極限値は、\[ e^0\cdot 0=1 \]となります。これが答えです。

気付きにくいですが、この極限は、定積分の微分を行っていることになるわけなんですね(参考:【標準】定積分で表された関数を微分する)。

定積分と極限をからめた問題その2

例題2
次の極限値を求めなさい。\[ \lim_{x\to 1} \dfrac{1}{x-1}\int_1^{\sqrt{x} } t^2e^t dt \]

定積分の計算は頑張ればできますが、部分積分を2回行わなければならず、少し面倒です。直接計算するよりも、 $x\to 1$ や分母に $x-1$ があることから、微分の定義を利用して解けるのではないか、と予想して考えたほうがいいでしょう。

\[ F'(x)=x^2e^x \]としましょう。こうすると、定積分の部分は\[ F(\sqrt{x})-F(1) \]と書けるので、与えられた式は次のように変形できます。
\begin{eqnarray} & & \lim_{x\to 1} \dfrac{1}{x-1}\int_1^{\sqrt{x} } t^2e^t dt \\[5pt] &=& \lim_{x\to 1} \dfrac{F(\sqrt{x})-F(1)}{x-1} \\[5pt] &=& \lim_{x\to 1} \dfrac{F(\sqrt{x})-F(1)}{\sqrt{x}-1}\cdot\frac{\sqrt{x}-1}{x-1} \\[5pt] &=& \lim_{x\to 1} \dfrac{F(\sqrt{x})-F(1)}{\sqrt{x}-1}\cdot\frac{1}{\sqrt{x}+1} \\[5pt] &=& F'(1)\cdot\frac{1}{\sqrt{1}+1} \\[5pt] &=& 1^2\cdot e^1\cdot\frac{1}{2} \\[5pt] &=& \frac{e}{2} \\[5pt] \end{eqnarray}これが答えです。途中で、分母に $\sqrt{x}-1$ が出るように変形していますが、これは、変化率を計算するには、分母と分子で対応が同じでないといけないからです。分子が、 $\sqrt{x},1$ のときの $F(x)$ の値であれば、分母も $\sqrt{x},1$ と対応させなければ、微分の定義が使えないんですね。これに関連する話題は、【標準】微分係数を使って極限値を表すで扱っています。

おわりに

ここでは、定積分と極限が絡んだ問題を見ました。定積分を直接計算しなくても、微分係数の定義に帰着させれば、極限値を求められることがあります。積分区間に $x$ が入っている場合には、ここで見た方法が使えないか、考えるようにしましょう。

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