【標準】定積分の部分積分の計算
ここでは、定積分の部分積分の計算例について見ていきます。積分定数をうまく選んで計算が簡単になるようにする例を見ていきます。
積分定数をうまく選ぶ部分積分
そのまま展開して計算することもできますが、部分積分を使うと計算が少し楽になります。
定積分の部分積分は、\[ \int_a^b f(x)g'(x)dx= \Big[ f(x)g(x) \Big]_a^b -\int_a^b f'(x)g(x) dx \]の形で変形するのでした。この $f,g$ にあたるものを考えてみましょう。
今の場合、対称性があるので、実はどちらを選んでも構いません。なので、 $f(x)=(x-\alpha)$, $g'(x)=(x-\beta)$ となっている、と考えて、部分積分を行ってみましょう。右辺では $f'(x)$ が出てきますが、ここが $1$ になるので、計算が簡単になる予感がしますね。
さて、 $g'(x)=x-\beta$ とすると、微分して右辺になるものを考えないといけません。単純に考えれば $g(x)=\dfrac{1}{2}x^2-\beta x$ としたくなるかもしれません。しかし、もっと楽に計算できる式があります。次の関数も、微分すると $x-\beta$ になりますね。\[ \frac{1}{2}(x-\beta)^2 \]なぜこれがいいかというと、定積分の計算では $x=\beta$ を代入して計算する箇所が出てくるのですが、そのときにうまく消えてくれるからなんですね。
ここまでを踏まえて、定積分を計算すると
\begin{eqnarray}
& &
\int_{\alpha}^{\beta} (x-\alpha)(x-\beta) dx \\[5pt]
&=&
\Big[ (x-\alpha)\cdot\frac{1}{2}(x-\beta)^2 \Big]_{\alpha}^{\beta} -\int_{\alpha}^{\beta} (x-\alpha)'\cdot \frac{1}{2}(x-\beta)^2 dx \\[5pt]
&=&
-\frac{1}{2}\int_{\alpha}^{\beta} (x-\beta)^2 dx \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。最後の定積分も、展開して計算するのではなく、被積分関数は $\dfrac{1}{3}(x-\beta)^3$ を微分したものだ、と考えたほうが、楽に計算できます。
\begin{eqnarray}
& &
-\frac{1}{2}\int_{\alpha}^{\beta} (x-\beta)^2 dx \\[5pt]
&=&
-\frac{1}{2} \Big[ \frac{1}{3}(x-\beta)^3 \Big]_{\alpha}^{\beta} \\[5pt]
&=&
\frac{1}{6} (\alpha-\beta)^3 \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。
$x=\alpha,\beta$ を代入したときにいろいろな式が消えるため、計算が簡単になります。なお、一番はじめに、微分して $(x-\beta)$ となる関数を考える際、 $\dfrac{x^2}{2}-\beta x$ ではなく、 $\dfrac{1}{2}(x-\beta)^2$ を選びましたが、これは、不定積分\[ \dfrac{x^2}{2}-\beta x+C \]に対して $C=\dfrac{\beta^2}{2}$ を選んだ、と考えることができます。後の計算が簡単になるように、積分定数をうまく選んだことになるわけです。このように、積分定数をうまく選んで計算する方法は、【標準】logの不定積分(部分積分)でも出てきていました。
なお、一般に、 $\alpha\lt\beta$ の場合が多いので、最後の式は $-\dfrac{1}{6}(\beta-\alpha)^3$ で書かれることが多いです。また、【応用】放物線と直線で囲まれた部分の面積を簡単に求めるでも、上で見た内容と似たような定積分を直接計算によって求めています。上のリンク先でもある程度分かりますが、この定積分と面積との関係は、また別の機会に見ることにしましょう。
部分積分を使わない方法
先ほどの計算は、部分積分を使わなくても計算することができます。少し式変形が思いつきにくいですが、こういうやり方もあります。
\begin{eqnarray}
& &
\int_{\alpha}^{\beta} (x-\alpha)(x-\beta) dx \\[5pt]
&=&
\int_{\alpha}^{\beta} (x-\beta+\beta-\alpha)(x-\beta) dx \\[5pt]
&=&
\int_{\alpha}^{\beta} \left\{(x-\beta)^2+(\beta-\alpha)(x-\beta)\right\} dx \\[5pt]
&=&
\Big[ \frac{1}{3}(x-\beta)^3 +(\beta-\alpha)\cdot\frac{1}{2}(x-\beta)^2 \Big]_{\alpha}^{\beta} \\[5pt]
&=&
-\frac{1}{3}(\alpha-\beta)^3-(\beta-\alpha)\cdot\frac{1}{2}(\alpha-\beta)^2 \\[5pt]
&=&
\left(-\frac{1}{3}+\frac{1}{2}\right)(\alpha-\beta)^3 \\[5pt]
&=&
\frac{1}{6}(\alpha-\beta)^3 \\[5pt]
\end{eqnarray}同じ結果になりましたね。
おわりに
ここでは、積分定数をうまく選んで、定積分の部分積分の計算がしやすくなる例を見ました。いつもこのようにうまく選べるわけではありませんが、最後に $x$ に値を代入するときに簡単になるように意識すると、うまく選べることがあります。