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【標準】定積分の部分積分(sinとeの積)

ここでは、 $\sin x$ と $e^x$ の積の定積分を求める計算を見ていきます。

📘 目次

sinとeの積の定積分について考える

次の定積分を考えてみましょう。\[ \int_0^{\frac{\pi}{2} } e^x \sin x dx \]そのまま計算するのも置換積分をするのも難しそうです。ただ、部分積分を使うことはできそうですね。 $e^x$, $\sin x$ はどちらも微分・積分の形がわかりますからね。まずは、 $e^x$ は $(e^x)'$ だと考えて部分積分を使って計算してみましょう。
\begin{eqnarray} & & \int_0^{\frac{\pi}{2} } e^x \sin x dx \\[5pt] &=& \Big[ e^x \sin x \Big]_0^{\frac{\pi}{2} } -\int_0^{\frac{\pi}{2} } e^x \cos x dx \\[5pt] &=& e^{\frac{\pi}{2} } -\int_0^{\frac{\pi}{2} } e^x \cos x dx \\[5pt] \end{eqnarray}$\sin x$ と $e^x$ の積の定積分は姿を消しましたが、新たに $\cos x$ と $e^x$ の積の定積分が出てきてしまいました。

ここでもう一度部分積分をしてみましょう。元に戻ってしまうんじゃないか、と思う人もいるかもしれませんが、符号がうまい具合になって、結果的に値を求める手がかりが出てきます。ここでも、 $e^x$ は $(e^x)'$ と考えて部分積分を行います。
\begin{eqnarray} & & e^{\frac{\pi}{2} } -\int_0^{\frac{\pi}{2} } e^x \cos x dx \\[5pt] &=& e^{\frac{\pi}{2} } -\Big[ e^x \cos x \Big]_0^{\frac{\pi}{2} } +\int_0^{\frac{\pi}{2} } e^x (\cos x)' dx \\[5pt] &=& e^{\frac{\pi}{2} } +1 -\int_0^{\frac{\pi}{2} } e^x \sin x dx \\[5pt] \end{eqnarray}最後の式の定積分は元の定積分と同じ形ですが、符号が違いますね。このことから、もとの定積分を2倍したものが $e^{\frac{\pi}{2} }+1$ となることがわかるので、\[ \int_0^{\frac{\pi}{2} } e^x \sin x dx=\frac{e^{\frac{\pi}{2} }+1}{2} \]となることがわかります。

cosの場合も同時に求める

先ほどと同じような計算をすれば、\[ \int_0^{\frac{\pi}{2} } e^x \cos x dx \]も求めることができます。しかし、再び2回も部分積分をするのは少し面倒ですね。先ほどの計算では、 $\sin x$ を含んだ式から $\cos x$ の式が出てきたわけなので、このことを利用して次のように一度に計算してしまうテクニックがあります。

まず、
\begin{eqnarray} I &=& \int_0^{\frac{\pi}{2} } e^x \sin x dx \\[5pt] J &=& \int_0^{\frac{\pi}{2} } e^x \cos x dx \\[5pt] \end{eqnarray}とおきましょう。先ほどの計算と同じようにして、 $I$ に対して部分積分を行うと\[ I=e^{\frac{\pi}{2} } -J \]となることがわかります。また、 $J$ に対して部分積分を行うと \begin{eqnarray} J &=& \int_0^{\frac{\pi}{2} } e^x \cos x dx \\[5pt] &=& \Big[ e^x \cos x \Big]_0^{\frac{\pi}{2} } -\int_0^{\frac{\pi}{2} } e^x (-\sin x) dx \\[5pt] &=& -1+I \\[5pt] \end{eqnarray}となります。

以上から、\[ I+J=e^{\frac{\pi}{2} },\ I-J=1 \]なので、辺々足せば\[ I=\frac{e^{\frac{\pi}{2} }+1}{2} \]が得られ、辺々引けば\[ J=\frac{e^{\frac{\pi}{2} }-1}{2} \]が得られます。

このようにして
\begin{eqnarray} \int_0^{\frac{\pi}{2} } e^x \sin x dx &=& \frac{e^{\frac{\pi}{2} }+1}{2} \\[5pt] \int_0^{\frac{\pi}{2} } e^x \cos x dx &=& \frac{e^{\frac{\pi}{2} }-1}{2} \\[5pt] \end{eqnarray}となることがわかります。

$\sin x$ を微分すれば $\cos x$ が得られ、 $\cos x$ を微分すれば $-\sin x$ が得られることから、似たような形の積分が一度に求められるんですね。

この手法を使った問題が出題される場合は、ヒントがついていることが多いです。もしヒントがついていなくて、この手法が思いつかなくても、冒頭で見たように部分積分を2回行えばできるので、手が出せないわけではないです。

おわりに

ここでは、 $\sin x$ と $e^x$ の積の定積分について考えました。 $\sin x,\cos x$ は、微分し続けると、同じ関数や符号の違う関数が出てきますが、そのことを利用して求められる定積分もあるんですね。 $\sin x,\cos x$ をペアにして一度に定積分を求める方法も、入試問題で出題されることもあるので、使えるようになっておきましょう。

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