【標準】三角関数の定積分
ここでは、三角関数を含んだ定積分のうち、少し変形が必要なものを見ていきます。
三角関数の定積分その1
定積分を求めるときには、まずは不定積分を求めるのが基本です。なので、不定積分の計算で使ったテクニックは、定積分の計算でも使うことがあります。
この定積分のように、被積分関数が $\cos^2 x$ となっている場合は、2乗の部分の次数を下げれないかを考えるのでした。そこで、【標準】三角関数の不定積分で見たように、半角の公式を使えばいいのでしたね。
【標準】半角の公式により、\[ \cos^2 \frac{\alpha}{2}=\frac{1+\cos \alpha}{2} \]が成り立つことから、 $\alpha$ を $2x$ で置き換えると\[ \cos^2 x=\frac{1+\cos 2x}{2} \]となることがわかります。よって、微分して右辺の形になる関数を考えればいいですね。
微分して $\dfrac{1}{2}$ になるものは、 $\dfrac{x}{2}$ です(積分定数は無視します)。また、微分して $\dfrac{\cos 2x}{2}$ となるものは、 $\dfrac{\sin 2x}{4}$ ですね。 $\sin 2x$ を微分すれば $2\cos 2x$ となることから、 $\sin 2x$ を $2$ で割れば、微分によって元に戻ります。
以上から、次のように計算することができます。
\begin{eqnarray}
& &
\int_0^{\pi} \cos^2 x dx \\[5pt]
&=&
\int_0^{\pi} \frac{1+\cos 2x}{2} dx \\[5pt]
&=&
\Big[ \frac{x}{2}+\frac{\sin 2x}{4} \Big]_0^{\pi} \\[5pt]
&=&
\frac{\pi}{2} \\[5pt]
\end{eqnarray}となることがわかります。
三角関数の定積分その2
この定積分のように、被積分関数が三角関数の積になっている場合は、和や差に分解できたほうが計算が簡単になります。そこで、【標準】三角関数の不定積分で見たように、積を和に変換する式を使いましょう。
【標準】三角関数の積から和への公式で見たように、\[ \sin \alpha\sin \beta=-\frac{1}{2} \left\{\cos(\alpha+\beta)-\cos(\alpha-\beta)\right\} \]となることから、\[ \sin 3x\sin 2x=-\frac{1}{2} \left\{\cos(3x+2x)-\cos(3x-2x)\right\} \]となります。
微分して $\cos 5x$ になるものは、 $\dfrac{\sin 5x}{5}$ です。よって、定積分は、次のように計算することができます。
\begin{eqnarray}
& &
\int_0^{\frac{\pi}{2} } \sin 3x\sin 2x dx \\[5pt]
&=&
\int_0^{\frac{\pi}{2} } -\frac{1}{2}(\cos 5x-\cos x) dx \\[5pt]
&=&
-\frac{1}{2} \Big[ \frac{\sin 5x}{5}-\sin x \Big]_0^{\frac{\pi}{2} } \\[5pt]
&=&
-\frac{1}{2}\cdot \left(\frac{1}{5}-1\right) \\[5pt]
&=&
\frac{2}{5} \\[5pt]
\end{eqnarray}となることがわかります。
おわりに
ここでは、三角関数を含む定積分のうち、三角関数で出てきた公式を使って式変形をしてから積分を計算する問題を見てきました。被積分関数が、三角関数の絡んだ2乗や積となっている場合は、計算しやすい形に変形しておく必要があります。不安な人は、三角関数の内容も復習しておきましょう。