【発展】三次方程式の解と係数の関係
ここでは、三次方程式の解と係数の関係を見ていきます。
三次方程式の解と係数の関係
【基本】二次方程式の解と係数の関係では、二次方程式における、解と係数の関係を見ました。二次方程式の場合は、解の公式があったので、解の和と解の積を係数を用いて表すことは簡単でした。
三次方程式の場合にも、解の和などを係数を用いて表すことができます。ただ、三次方程式の場合は、少し違った導き方をします。
三次方程式\[ ax^3+bx^2+cx+d = 0 \]について考えましょう。複素数の世界で考えれば、この方程式には3つの解があります(参考:【基本】高次方程式と重解#代数学の基本定理)。これらの解を $\alpha$, $\beta$, $\gamma$ とおきます。3つ目は「ガンマ」というギリシャ文字です(参考:ギリシャ文字一覧)。
因数定理から、方程式の左辺は、 $x-\alpha$, $x-\beta$, $x-\gamma$ のどれで割っても割り切れます。また、最高次数の係数は $a$ なので、次のように因数分解できることがわかります。\[ a(x-\alpha)(x-\beta)(x-\gamma)=0 \]この左辺を展開すると
\begin{eqnarray}
& &
a(x-\alpha)(x-\beta)(x-\gamma) \\[5pt]
&=&
ax^3 -a(\alpha+\beta+\gamma)x^2 \\
& &
+a(\alpha\beta+\beta\gamma+\gamma\alpha)x -a\alpha\beta\gamma
\end{eqnarray}となります。この式と元の方程式の左辺は一致します。このようにして各係数を比較して得られる関係式が、三次方程式における解と係数の関係です。
\begin{eqnarray} & & \alpha+\beta+\gamma = -\frac{b}{a} \\[5pt] & & \alpha\beta+\beta\gamma+\gamma\alpha = \frac{c}{a} \\[5pt] & & \alpha\beta\gamma = -\frac{d}{a} \\[5pt] \end{eqnarray}
2つ目の式は少し複雑ですね。しかし、こう考えてみましょう。1つ目は、1つだけを掛けた結果(つまり、それ単体)を足したもの、2つ目は、2つを掛けた結果を足したもの、3つ目は3つを掛けた結果を足したもの(といっても項は1つしかないですが)となっています。また、符号が順番に入れ替わっていることにも注意しましょう。
二次方程式の解と係数の関係も、上と同じように因数定理から導くこともできます。また、上と同じように、代数学の基本定理と因数定理をベースに考えれば、四次以上の場合でも、解と係数の関係を得ることができます。例えば、\[ x^5+x^3+x^2+x+1=0 \]という五次方程式があった場合、この解をすべて足したものは、計算しなくても $0$ だとわかります。四次の係数を五次の係数で割って $-1$ を掛けたものが解の和になりますが、四次の項がないので $0$ だとわかるからです。計算しなくても、また、解が1つもわからない状態でも、解の和だけはすぐにわかる、というのは少し不思議ですね。
例題
【基本】高次方程式の解と係数 で見た例題を、解と係数の関係を使って解き直してみます。
3つ目の解を $\alpha$ とすると、解と係数の関係から、次の3つの関係式が成り立ちます。
\begin{eqnarray}
1+2+\alpha &=& -a \\[5pt]
1\cdot2+2\cdot\alpha+\alpha\cdot 1 &=& -10 \\[5pt]
1\cdot 2\cdot\alpha &=& -b \\[5pt]
\end{eqnarray}
2つ目の式から $3\alpha=-12$ から $\alpha=-4$ だとわかるので、3つ目の解は $-4$ だとわかります。
これを1つ目の式に代入すると $-a=1+2-4=-1$ より $a=1$ と求められます。また、3つ目の代入すると $-b=-8$ より、 $b=8$ と求められます。
「解と係数の関係」は、その名の通り、解と係数の関係を表しているものなので、【基本】高次方程式の解と係数 で見たような、関数に解を代入するステップがなくても解けます。この問題のように、解と係数の関係を使うと、スッキリと説けることがあります。
おわりに
ここでは、三次方程式の解と係数の関係を見ました。また、同じ考え方を用いれば、二次方程式の場合は四次以上の場合でも、解と係数の関係を導けることを見ました。解を求めなくても、解に関する情報を知ることができる、というのがおもしろいですね。