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【応用】2曲線で囲まれた部分の面積と積分(交点が求められない場合)

ここでは、2曲線で囲まれた部分の面積を、積分を使って求める方法を見ていきます。2曲線の交点が具体的に求められない場合を考えます。

📘 目次

2曲線で囲まれた部分の面積と積分

例題
$a\gt 0$, $0\leqq x\leqq \dfrac{\pi}{2}$ とします。このとき、 $y=a\cos x$, $y=\sin x$, $x$ 軸で囲まれた部分の面積を求めなさい。

$0\leqq x\leqq \dfrac{\pi}{2}$ の範囲では、 $y=a\cos x$ は単調減少で、 $a$ から $0$ の値をとります。また、 $y=\sin x$ は単調増加で、 $0$ から $1$ の値をとります。なので、2つの曲線は1点で交わります。図は下のようになり、色のついた部分の面積を求めることになります。

面積を求めるには、【基本】x軸とで囲まれた部分の面積と積分で見たように、交点より左側は $\sin x$ を積分し、右側は $a\cos x$ を積分すればいいですね。問題は、積分区間をどうするかです。

積分区間を考えるには、交点を求める必要があります。交点の $x$ 座標は\[ a\cos x=\sin x \]を満たす必要がありますが、このような $x$ を具体的に求めることはできませんね。そうすると、積分区間をどうすればいいかわかりません。そのため、ここで手詰まりのように感じてしまいます。

ただ、あとでわかるように、実は交点の座標が具体的にわからなくても問題はありません。とりあえず、交点の座標がわかっているていで考えていきましょう。

$y=a\cos x$, $y=\sin x$ の交点の $x$ 座標を $p$ としましょう。つまり、$p$ は、\[ a\cos p=\sin p \]を満たす、 $0\leqq p\leqq \dfrac{\pi}{2}$ の点だということです。このような点が1点だけ存在することは、上の図からわかりますね。

交点をこのような文字で置くと、求めたい面積は次のように計算できます。
\begin{eqnarray} & & \int_0^p \sin x dx +\int_p^{\frac{\pi}{2} } a\cos x dx \\[5pt] &=& \Big[ -\cos x \Big]_0^p+\Big[ a\sin x \Big]_p^{\frac{\pi}{2} } \\[5pt] &=& (-\cos p+1) +(a-a\sin p) \\[5pt] \end{eqnarray}となります。つまり、 $p$ の値がわからなくても、 $\cos p$, $\sin p$ の値がわかれば、面積が求められる、ということです。

「 $p$ がわからないんだから $\cos p$ とかもわからないんじゃね?」と思うかもしれませんが、そんなことはありません。 $p$ は、\[ a\cos p=\sin p \]を満たす、という条件があるので、これを変形すれば求められます。

まず、 $p=\dfrac{\pi}{2}$ のときにこの等式が成り立つことはないので、両辺を $\cos p$ で割って、 $a=\tan p$ が得られます。これから、相互関係より\[ \cos^2 p=\frac{1}{1+\tan^2 p}=\frac{1}{1+a^2} \]が得られます。また、同じく相互関係から\[ \sin^2 p=1-\cos^2 p=\frac{a^2}{1+a^2} \]がわかります。今考えている範囲は $0\leqq p\leqq \dfrac{\pi}{2}$ なので、\[ \cos p=\dfrac{1}{\sqrt{1+a^2} }, \ \sin p=\dfrac{a}{\sqrt{1+a^2} } \]となることがわかります。

これらを先ほどの積分の結果に代入すると
\begin{eqnarray} & & (-\cos p+1) +(a-a\sin p) \\[5pt] &=& -\dfrac{1}{\sqrt{1+a^2} }+1 +a-a\cdot \dfrac{a}{\sqrt{1+a^2} } \\[5pt] &=& 1+a-\dfrac{1+a^2}{\sqrt{1+a^2} } \\[5pt] &=& 1+a-\sqrt{1+a^2} \\[5pt] \end{eqnarray}と求められます。

2曲線で囲まれた部分の面積を求めるときには、積分区間を複数に分けて積分をします。そのとき、積分区間を分けるために、2曲線の交点の座標を使いますが、この例題のように、その座標が具体的に求められない場合があります。しかし、そのような場合でも、積分の計算結果には具体的な座標の情報が現れないこともあります。座標が具体的に求められないからといって、投げ出してしまわないようにしましょう。

おわりに

ここでは、2曲線で囲まれた部分の面積を、積分を使って求める方法を見ました。特に、2曲線の交点の座標が具体的には求められない場合を取り上げました。具体的にはわからなくても、交点の座標を何か別の文字で置いて、計算をすすめていきましょう。

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