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【応用】メネラウスの定理の逆

ここでは、メネラウスの定理の逆について見ていきます。教科書ではまったく紹介されていないか、証明なしで内容だけの紹介にとどまっているかもしれません。大学入試でもそんなに使う場面は多くないです。

📘 目次

メネラウスの定理の逆

【応用】チェバの定理とメネラウスの定理でも見た通り、メネラウスの定理は、次のような内容です。直線と三角形の辺との交点が2個のときだけでなく、0個の場合でも構いません。0個の場合とは、3点とも辺の延長線上にある、ということです。

メネラウスの定理
$\triangle \mathrm{ABC}$ と、その頂点を通らない直線 $\ell$ がある。このとき、直線 $\ell$ と、直線 $\mathrm{BC,CA,AB}$ との交点をそれぞれ $\mathrm{P, Q, R}$ とする。
このとき、次の等式が成り立つ。\[ \frac{\mathrm{AR}}{\mathrm{RB}} \cdot \frac{\mathrm{BP}}{\mathrm{PC}} \cdot \frac{\mathrm{CQ}}{\mathrm{QA}}= 1 \]

実は、メネラウスの定理の逆も成り立ちます。ただし、少し注意が必要です。【応用】メネラウスの定理の逆のときと同様、そのまま逆にするだけではいけません。チェバの定理もメネラウスの定理も、最後に出てくる式は同じなので、仮定と結論をそのまま入れ替えるだけではダメなことはわかります。

チェバの定理の逆の場合でも考えましたが、メネラウスの定理の仮定にあたる部分(言い換えると、「メネラウスの定理の逆」の結論にあたる部分)はなんでしょうか。これは、答えを書いてしまうと、「直線 $\ell$ の存在」です。つまり、3点 $\mathrm{P,Q,R}$ が同一直線上にあること、です。

以上を踏まえると、「メネラウスの定理の逆」のおおざっぱな内容は以下の通りです(まだ正しくはないですが、最終的に正しいものに修正します)。

「$\triangle \mathrm{ABC}$ について、直線 $\mathrm{BC,CA,AB}$ 上に点 $\mathrm{P,Q,R}$ をとる。このとき、$\frac{\mathrm{AR}}{\mathrm{RB}} \cdot \frac{\mathrm{BP}}{\mathrm{PC}} \cdot \frac{\mathrm{CQ}}{\mathrm{QA}}= 1$ が成り立てば、3点 $\mathrm{P,Q,R}$ は同一直線上にある。」

これはメネラウスの定理の逆っぽい内容ですが、実は正しくありません。「3つの積が $1$ になる」というのは、チェバの定理の結論にもなっていました。少なくとも、両者を区別する条件が必要です。

ではどういう条件をつければいいかというと、それが、【応用】チェバの定理とメネラウスの定理で見た内容につながってきます。3点 $\mathrm{P,Q,R}$ のうち、辺上にあるのはいくつあるか、というポイントです。このリンク先で見たように、辺上にあるのが0個または2個のときがメネラウスの定理に対応するので、これを仮定する必要があります。(チェバの定理のときは、ここが1個または3個でした。)

こうして、メネラウスの定理の逆は、次のような内容となります。

メネラウスの定理の逆
$\triangle \mathrm{ABC}$ について、直線 $\mathrm{BC,CA,AB}$ 上に点 $\mathrm{P,Q,R}$ をとる。この3点のうち、辺上にあるものは、0個または2個とする。
このとき、次の等式\[\frac{\mathrm{AR}}{\mathrm{RB}} \cdot \frac{\mathrm{BP}}{\mathrm{PC}} \cdot \frac{\mathrm{CQ}}{\mathrm{QA}}= 1 \]が成り立てば、3点 $\mathrm{P,Q,R}$ は同一直線上にある。

もとの命題にはなかったものが追加されているため、いわゆる「命題の逆」とは異なるのですが、これを「メネラウスの定理の逆」といいます。3点が同一直線上にあることを証明したいときに、この「メネラウスの定理の逆」が使われることがあります。

メネラウスの定理の逆の証明

メネラウスの定理の逆の証明には、チェバの定理の逆のときと同様、同一法という手法が使われます。

まず、わかりやすいように、点 $\mathrm{P,Q}$ は辺上にあるとします。仮定から、 $\mathrm{R}$ は、辺の延長線上にあります。

次に、直線 $\mathrm{AB,PQ}$ の交点を $\mathrm{R}'$ とします。点 $\mathrm{P,Q}$ の位置より、点 $\mathrm{R'}$ は辺 $\mathrm{AB}$ 上ではなく、辺の延長線上にあることがわかります。

一旦、 $\mathrm{R}$ のことは忘れて、 $\mathrm{R}'$ について考えます。ここで、メネラウスの定理を使います。メネラウスの定理の逆を示している途中ですが、メネラウスの定理自体はすでに示しているので、使っても問題ありません。メネラウスの定理から、次の式が成り立ちます。\[ \frac{\mathrm{AR'}}{\mathrm{R'B}} \cdot \frac{\mathrm{BP}}{\mathrm{PC}} \cdot \frac{\mathrm{CQ}}{\mathrm{QA}}= 1 \]また、仮定から、次が成り立ちます。\[ \frac{\mathrm{AR}}{\mathrm{RB}} \cdot \frac{\mathrm{BP}}{\mathrm{PC}} \cdot \frac{\mathrm{CQ}}{\mathrm{QA}}= 1 \]この2つから、\[ \mathrm{AR:RB=AR':R'B} \]となります。点 $\mathrm{R,R'}$ はどちらも辺 $\mathrm{AB}$ の延長上の点(外分点)だったので、この2点は同じ点であることがわかります。

直線 $\mathrm{PQ}$ が点 $\mathrm{R}'$ を通るので、点 $\mathrm{R}$ も通ることがわかり、3点 $\mathrm{P,Q,R}$ が同一直線上にあることが示せました。

なお、 $\mathrm{P,Q}$ がともに辺の延長線上にある場合も同様に示せます。

メネラウスの定理の逆を使った例題

メネラウスの定理の逆は、3点が同一直線上にあることを示すときに使える場合があります。

例題
$\triangle \mathrm{ABC}$ について、 $\angle \mathrm{A}$ の二等分線と辺 $\mathrm{BC}$ との交点を $\mathrm{P}$ とし、$\angle \mathrm{B}$ の二等分線と辺 $\mathrm{CA}$ との交点を $\mathrm{Q}$ とし、$\angle \mathrm{C}$ の外角の二等分線と直線 $\mathrm{AB}$ との交点を $\mathrm{R}$ とする。
このとき、3点 $\mathrm{P,Q,R}$ が同一直線上にあることを示せ。

(この時点では同一直線上にあるかどうかはわからないので、破線で表しています)

まず、内角の二等分線の性質から\[ \mathrm{BP:PC=AB:AC} \]となります。また、\[ \mathrm{CQ:QA=BC:BA} \]も成り立ちます。外角の二等分線の性質から\[ \mathrm{AR:RB=CA:CB} \]が成り立ちます。

以上から、
\begin{eqnarray} & & \frac{\mathrm{AR}}{\mathrm{RB}} \cdot \frac{\mathrm{BP}}{\mathrm{PC}} \cdot \frac{\mathrm{CQ}}{\mathrm{QA}} \\[5pt] &=& \frac{\mathrm{CA}}{\mathrm{CB}} \cdot \frac{\mathrm{AB}}{\mathrm{AC}} \cdot \frac{\mathrm{BC}}{\mathrm{BA}} =1 \end{eqnarray}となるので、メネラウスの定理の逆から3点 $\mathrm{P,Q,R}$ が同一直線上にあることが示せました。

おわりに

ここでは、メネラウスの定理の逆について見てきました。メネラウスの定理をそのまま逆にするだけではなく、条件がつくことに注意しましょう。例題で見た通り、メネラウスの定理の逆は、3点が同一直線上にあることを示すときに使えることがあります。

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