【基本】余弦定理の証明
🕒 2016/10/11
🔄 2023/05/01
【導入】正弦定理・余弦定理を使えば何ができる?では、簡単に余弦定理の紹介を行いましたが、ここでは余弦定理の証明を見ていきます。証明自体を覚えておく必要は特にありませんが、基本的な定理の証明なので、ここで紹介しておきます。
なお、辺 $\mathrm{AB}$, $\mathrm{BC}$, $\mathrm{CA}$ の長さを、それぞれ、 $c,a,b$ と書き、角 $\angle \mathrm{ CAB }$, $\angle \mathrm{ ABC }$, $\angle \mathrm{ BCA }$ の大きさを、それぞれ、 $A,B,C$ と書くことにします。
📘 目次
余弦定理の証明
余弦定理は次のような内容です。
余弦定理
$\triangle \mathrm{ ABC }$ に対し、次が成り立つ。
$a^2=b^2+c^2 -2bc\cos A$
$b^2=c^2+a^2 -2ca\cos B$
$c^2=a^2+b^2 -2ab\cos C$
$a^2=b^2+c^2 -2bc\cos A$
$b^2=c^2+a^2 -2ca\cos B$
$c^2=a^2+b^2 -2ab\cos C$
この証明を行います。基本的な流れは、【標準】2つの直角三角形に分解して三角比を求めるで見たものと同じです。途中でいくつか場合分けが出てきますが、鋭角か鈍角かによって、長さの表し方が異なってくるためです。
証明
まず、 $a^2=b^2+c^2 -2bc\cos A \cdots (1)$ を示す。
A が直角のときは、三平方の定理より $a^2=b^2+c^2$ が成り立ち、 $\cos A=0$ なので、(1)が成り立つ。また、B が直角のときは、 $b^2=a^2+c^2$ が成り立ち、 $b\cos A=c$ なので、 \begin{eqnarray} & & b^2+c^2 -2bc\cos A \\ &=& (a^2+c^2)+c^2 -2c^2 \\ &=& a^2 \\ \end{eqnarray}となる。よって、 $A,B$ のどちらかが直角の場合は、(1)が成り立つことが分かる。
以下では、 $A,B$ が「ともに鋭角」、「片方が鋭角で片方が鈍角」の場合を考える。
C から AB に垂線をおろし、その足を H とする。 $\mathrm{ AH }=x$, $\mathrm{ CH }=h$ とする。
直角三角形 ACH について、三平方の定理より次が成り立つ。
\begin{eqnarray} \mathrm{ AH }^2 +\mathrm{ CH }^2 &=& \mathrm{ AC }^2 \\ x^2 +h^2 &=& b^2 \\ \end{eqnarray}ここで、 A が鋭角の場合は $x=b\cos A$ となる。鈍角の場合は\[ x = b\cos (180^{\circ}-A)=-b\cos A \]となる。
以上から、 A が鋭角でも鈍角でも、次が成り立つ。\[ b^2 \cos^2 A +h^2 = b^2 \cdots (2) \]
次に、 BH の長さを考える。
$A,B$ がともに鋭角のときは、
\begin{eqnarray} \mathrm{ BH } &=& \mathrm{ AB }-\mathrm{ AH } \\ &=& c-x=c-b\cos A \end{eqnarray}となる。
$A$ が鈍角の場合は
\begin{eqnarray} \mathrm{ BH } &=& \mathrm{ AB }+\mathrm{ AH } \\ &=& c+b\cos(180^{\circ}-A) \\ &=& c-b\cos A \end{eqnarray}となる。
$B$ が鈍角の場合は
\begin{eqnarray} \mathrm{ BH } &=& \mathrm{ AH }-\mathrm{ AB } \\ &=& b\cos A-c \end{eqnarray}となる。
以上より、どの場合であっても、 $\mathrm{ BH }^2=(c-b\cos A)^2$ となることがわかる。
直角三角形 BCH について、三平方の定理と BH の長さから
\begin{eqnarray} \mathrm{ BH }^2 +\mathrm{ CH }^2 &=& \mathrm{ BC }^2 \\ (c-b\cos A)^2 +h^2 &=& a^2 \cdots (3) \\ \end{eqnarray}が成り立つ。
(2): $b^2 \cos^2 A +h^2 = b^2$ と (3): $(c-b\cos A)^2 +h^2 = a^2$ を辺々引くと
\begin{eqnarray} b^2 \cos^2 A -(c-b\cos A)^2 &=& b^2-a^2 \\ -c^2 +2bc\cos A &=& b^2-a^2 \\ a^2 &=& b^2 +c^2 -2bc\cos A \\ \end{eqnarray}となり、(1)が成り立つ。
よって、 A,B がどんな場合でも、(1)が成り立つことがわかる。
また、同様にすれば、 $b^2=c^2+a^2 -2ca\cos B$, $c^2=a^2+b^2 -2ab\cos C$ が成り立つこともわかる。以上より、余弦定理が証明された。
【証明終】
A が直角のときは、三平方の定理より $a^2=b^2+c^2$ が成り立ち、 $\cos A=0$ なので、(1)が成り立つ。また、B が直角のときは、 $b^2=a^2+c^2$ が成り立ち、 $b\cos A=c$ なので、 \begin{eqnarray} & & b^2+c^2 -2bc\cos A \\ &=& (a^2+c^2)+c^2 -2c^2 \\ &=& a^2 \\ \end{eqnarray}となる。よって、 $A,B$ のどちらかが直角の場合は、(1)が成り立つことが分かる。
以下では、 $A,B$ が「ともに鋭角」、「片方が鋭角で片方が鈍角」の場合を考える。
C から AB に垂線をおろし、その足を H とする。 $\mathrm{ AH }=x$, $\mathrm{ CH }=h$ とする。
直角三角形 ACH について、三平方の定理より次が成り立つ。
\begin{eqnarray} \mathrm{ AH }^2 +\mathrm{ CH }^2 &=& \mathrm{ AC }^2 \\ x^2 +h^2 &=& b^2 \\ \end{eqnarray}ここで、 A が鋭角の場合は $x=b\cos A$ となる。鈍角の場合は\[ x = b\cos (180^{\circ}-A)=-b\cos A \]となる。
以上から、 A が鋭角でも鈍角でも、次が成り立つ。\[ b^2 \cos^2 A +h^2 = b^2 \cdots (2) \]
次に、 BH の長さを考える。
$A,B$ がともに鋭角のときは、
\begin{eqnarray} \mathrm{ BH } &=& \mathrm{ AB }-\mathrm{ AH } \\ &=& c-x=c-b\cos A \end{eqnarray}となる。
$A$ が鈍角の場合は
\begin{eqnarray} \mathrm{ BH } &=& \mathrm{ AB }+\mathrm{ AH } \\ &=& c+b\cos(180^{\circ}-A) \\ &=& c-b\cos A \end{eqnarray}となる。
$B$ が鈍角の場合は
\begin{eqnarray} \mathrm{ BH } &=& \mathrm{ AH }-\mathrm{ AB } \\ &=& b\cos A-c \end{eqnarray}となる。
以上より、どの場合であっても、 $\mathrm{ BH }^2=(c-b\cos A)^2$ となることがわかる。
直角三角形 BCH について、三平方の定理と BH の長さから
\begin{eqnarray} \mathrm{ BH }^2 +\mathrm{ CH }^2 &=& \mathrm{ BC }^2 \\ (c-b\cos A)^2 +h^2 &=& a^2 \cdots (3) \\ \end{eqnarray}が成り立つ。
(2): $b^2 \cos^2 A +h^2 = b^2$ と (3): $(c-b\cos A)^2 +h^2 = a^2$ を辺々引くと
\begin{eqnarray} b^2 \cos^2 A -(c-b\cos A)^2 &=& b^2-a^2 \\ -c^2 +2bc\cos A &=& b^2-a^2 \\ a^2 &=& b^2 +c^2 -2bc\cos A \\ \end{eqnarray}となり、(1)が成り立つ。
よって、 A,B がどんな場合でも、(1)が成り立つことがわかる。
また、同様にすれば、 $b^2=c^2+a^2 -2ca\cos B$, $c^2=a^2+b^2 -2ab\cos C$ が成り立つこともわかる。以上より、余弦定理が証明された。
【証明終】
おわりに
ここでは、余弦定理の証明を見てきました。直角三角形を無理やり作って三平方の定理を繰り返し使っているだけですが、場合分けが多いので難しく見えるかもしれません。