【基本】整式の乗法
ここでは、整式の乗法について、まとめていきます。【基本】整式の加法と減法の続きです。
乗法の省略記号
乗法、つまり、掛け算は、普通は「$2\times 3$」のように書きます。しかし、この掛け算の記号と文字が混じると「$x\times x\times x\times x$」などとなり、「エックスなのか、掛け算記号なのか」見づらくなることがあります。こういったこともあり、「$x\cdot x\cdot x\cdot x$」というように、中点で掛け算のことを表すことがよくあります。
高校の教科書や問題集でも使われる記号で、当サイトでもよく使います。
計算の法則
数式の乗法に関して、次の3つの法則が成り立ちます。
【交換法則】
$AB=BA$
【結合法則】
$(AB)C=A(BC)$
【分配法則】
$A(B+C)=AB+AC$
$(A+B)C=AC+BC$
交換法則と結合法則は、【基本】整式の加法と減法でも出てきましたが、加法のときと同様に乗法でも成り立ちます。入れ替えても、計算する順番を変えても、答えは変わりません。
分配法則は、カッコの外し方についてですね。分配法則を使ってカッコを外すことを、展開するといいます。
例えば、「2人分のカレーライス」というのは、「2人分のカレーと、2人分のライス」と同じことですよね。これは計算するときも同じで、 $A(B+C)$ というのは、「$B,C$ をあわせたものを $A$ 倍」するんだから、それぞれ $A$ を掛けて「$AB,AC$ をあわせたもの」に等しいということです。
この計算で「$AC$ の $A$ を忘れてしまう」間違いがよくあります。これはカレーライスの例でいうと、「カレーのルーは2人分あるのに、ライスが1人分しかない」ということと同じです。これではダメですよね。掛け忘れには注意しましょう。
累乗
整式の積を考える前に「文字の積」についてまとめておきます。
$n$ を自然数とします。このとき、文字 $x$ を $n$ 個掛け合わせたものを、$x^n$ と書き、「x の n 乗(じょう)」と読みます。このように、$x$ をいくつか掛け合わせたものを、$x$ の累乗(るいじょう)と呼びます。
$x^n$ と書いたとき、 $x$ のことを底(てい)、 $n$ のことを指数(しすう)と呼びます。
次に、累乗を含んだ計算を考えていきましょう。 $a^2 \times a^3$ はどうなるでしょうか。 $a^2,a^3$ は、それぞれ 2個の $a$ 、3個の $a$ を掛け合わせたものです。なので、この2つを掛け合わせると、トータルで 5個の $a$ を掛け合わせることになります。よって、答えは $a^5$ となります。つまり、こういうことですね。
\begin{eqnarray}
a^2 \times a^3=a^{2+3}=a^5
\end{eqnarray}累乗の掛け算は、指数(右上の数字)の足し算になるんですね。
「累乗の累乗」はどうなるでしょうか。例えば、 $(a^2)^3$ はどうなるでしょう。これは、 $a^2$ を3個掛け合わせるということなので、全部で $a$ を6個掛け合わせることになります。つまり、こういうことです。
\begin{eqnarray}
(a^2)^3=a^{2\times 3}=a^6
\end{eqnarray}累乗の累乗は、指数(右上の数字)の掛け算になります。
今までは文字が1種類の場合でしたが、複数の場合はどうなるでしょうか。 $(ab)^3$ を考えてみます。これは、「$ab$ を3個掛け合わせる」ということですが、掛け算は順番を変えてもいいので「 $a$ の掛け算、 $b$ の掛け算を先にする」ようにしても、答えは同じです。なので、 $a^3b^3$ になります。つまり、こういうことです。
\begin{eqnarray}
(ab)^3=a^3b^3
\end{eqnarray}
以上のことをまとめて一般的な式にすると、次のようになります。
\begin{eqnarray} a^na^m = a^{n+m} \\[5pt] (a^n)^m = a^{nm} \\[5pt] (ab)^n = a^n b^n \\ \end{eqnarray}
整式の乗法
整式同士の積は、指数法則や分配法則を使って計算していきます。
例えば、「$(-2xy^2)^2$」と「$(x^2y)^3$」の積は、次のようになります。
\begin{eqnarray}
& &
(-2xy^2)^2 \times (x^2y)^3 \\
&=&
(-2)^2 x^2 (y^2)^2 \times (x^2)^3y^3 \\
&=&
4 x^2 y^4 \times x^6 y^3 \\
&=&
4 x^8 y^7 \\
\end{eqnarray}これは、指数法則を使っている例です。
また、「$x^2+x+1$」と「$x-1$」の積は、次のようになります。
\begin{eqnarray}
& &
(x^2+x+1) \times (x-1) \\
&=&
(x^2+x+1)x + (x^2+x+1)\times(-1) \\
&=&
x^3+x^2+x -x^2-x-1 \\
&=&
x^3-1 \\
\end{eqnarray}これは、分配法則を使っている例です。このように、分配法則を繰り返し使えば、どんなカッコでも(頑張れば)はずすことができます。
おわりに
ここでは、整式の乗法について見てきました。数式の乗法は、指数法則や分配法則を使えば計算することができます。式の展開(カッコをはずすこと)は、分配法則などを地道に繰り返し使えば、必ず計算できます。
ただ、よく使うものは公式として覚えておく方が早い場合もあります。展開の公式については、別の記事(【基本】展開の公式)で紹介します。