【基本】整数の指数
ここでは、0乗や負の整数乗などについて見ていきます。
自然数乗の復習
すでに習ったことのある内容ですが、 $2^3$ は、 $2\times2\times2$ のことです。 $2^3$ は、$2$ を$3$ 個掛ける、ということです。
このように、 a を n 個掛けたもの(n は自然数)を、 $a^n$ とかき、「a の n 乗」というのでしたね。 $a^n$ に対し、 n のことを指数(exponent) といいます。なお、 $n=1$ のときは、 $a^1$ とは書かずに $a$ と書きます。
また、2乗、3乗、4乗、…などをまとめて、累乗と呼びます。
$m,n$ を自然数とするとき、次の指数法則が成り立ちます。「何個掛けるか」に注目すれば、それぞれの式が成り立つことはすぐに確かめられるでしょう。
\begin{eqnarray}
a^ma^n &=& a^{m+n}\\
(a^m)^n &=& a^{mn}\\
(ab)^n &=& a^n b^n\\
\end{eqnarray}【基本】整式の乗法でも少し取り上げているので、そちらも参考にしてみてください。
ゼロ乗
ここでは、 $2^0$ がどうなるかを考えます。すでにわかっているものを利用しましょう。
\begin{eqnarray}
2^5 &=& 32 \\
2^4 &=& 16 \\
2^3 &=& 8 \\
2^2 &=& 4 \\
2^1 &=& 2 \\
\end{eqnarray}このように、指数(2の右上の数)が1減ると、値は $\dfrac{1}{2}$ 倍になることがわかります。この流れで行けば、\[ 2^0=1 \]と考えるのが自然でしょう。
一般に、 $a\ne 0$ のとき、 $a^0=1$ と定めます。「0回掛けるのだから0では?」と思う人もいるかもしれませんが、「0回掛ける=何も掛けない=掛けた結果が変わらない」という発想で、「1を掛ける」ことと等しくなる、と考えればわかりやすいかもしれません。
先ほど、指数法則で、 $m,n$ が自然数のときには $a^ma^n=a^{m+n}$ が成り立つ、と書きました。これは、 $n=0$ でも成り立ちます。両辺に $n=0$ を代入すると\[ a^ma^0,\ a^{m+0} \]となります。 $a^0=1$ としたので、この2つは一致します。このことからも、 $a^0=1$ と定めることの方が自然であることがわかるでしょう。
なお、 $a=0$ のとき、つまり、 $0^0$ のときは、考えないことが普通です。 $a\ne0$ のときに $a^0=1$ となるので $0^0=1$ となるような気もします。しかし、一方で、 $0^1$, $0^2$ などはすべて $0$ なので、0乗だけ突然 $1$ となるのも何か変な感じがします。そのため、 $0^0$ は定義しないことが多いです。
この「ゼロのゼロ乗」問題は少しややこしい事情があります。「定義しない」とする場合もありますが、「1と定義したほうが便利なので1と定義する」ケースや「0と定義したほうが便利なので0と定義する」ケースもあります。とりあえず、 $0^0$ だけは特殊扱いなんだな、ということを知っておきましょう。
負の整数乗
先ほどは $2^0$ を考えましたが、同じ流れで $2^{-1}$ や $2^{-2}$ といった、マイナス乗も考えることができます。
\begin{eqnarray}
2^3 &=& 8 \\
2^2 &=& 4 \\
2^1 &=& 2 \\
2^0 &=& 1 \\
\end{eqnarray}このように、指数が1減ると、値は $\dfrac{1}{2}$ 倍になることから、\[ 2^{-1}=\dfrac{1}{2} , \quad 2^{-2}=\dfrac{1}{4} \]と考えるのが自然でしょう。
$2^{-2}=\dfrac{1}{4}$ をよく見ると、分母は $2^2$ となっています。つまり、 $2^{-2}$ は $2^2$ の逆数になっている、ということですね。これは、先ほどの指数法則 $a^ma^n=a^{m+n}$ で、 $m=-n$ とすればわかります(n は自然数)。右辺は $a^0$ なので $1$ となります。左辺は\[ a^{-n}a^n \]となります。これが $1$ ということは、\[ a^{-n}=\dfrac{1}{a^n} \]が成り立つ、ということですね。
一般に、 $a\ne0$ で、 n が自然数のとき、\[ a^{-n}=\dfrac{1}{a^n} \]と定めます。逆数を掛けることとマイナス乗を掛けることは同じ、というわけです。
\begin{eqnarray} a^0 &=& 1 \\ a^{-n} &=& \frac{1}{a^n} \\ \end{eqnarray}
整数の指数の指数法則
指数が $0$ のときや負の整数のときも、指数法則が成り立つことはすぐにわかります。例えば、 $a,b\ne0$ で、 $m=5, n=-3$ のときは
\begin{eqnarray}
& & a^5a^{-3}=a^5\times\dfrac{1}{a^3} =a^{2} =a^{5-3} \\
& & (a^5)^{-3}=\frac{1}{(a^5)^3}=\frac{1}{a^{15} } =a^{-15} =a^{5\times(-3)} \\
& & (ab)^{-3}=\frac{1}{(ab)^3}=\frac{1}{a^3b^3}=\frac{1}{a^3}\times\frac{1}{b^3}=a^{-3}b^{-3} \\
\end{eqnarray}などと確かめられます。
\begin{eqnarray} a^ma^n &=& a^{m+n}\\ (a^m)^n &=& a^{mn}\\ (ab)^n &=& a^n b^n\\ \end{eqnarray}
また、マイナス乗は逆数をあらわすことから、\[ \dfrac{a^m}{a^n}=a^m\times a^{-n}=a^{m-n} \]が成り立ちます。これは指数法則の1つ目の応用バージョンと考えることができますが、この変形もよく使います。
おわりに
ここでは、指数の拡張として、自然数の場合を復習したあと、ゼロ乗や負の整数乗を考えました。今後、さらに拡張していくことになります。