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【基本】実数の指数

ここでは、実数乗について見ていきます。

📘 目次

指数が整数や有理数のときの復習

$a$ を正の数とします。 $a^2$ や $a^3$ は、 $a$ を2個、3個掛けたものでした。右上の数(指数)は掛ける回数を表しているので、 $n,m$ が正の整数のときは、 $a^{m}a^{n}=a^{m+n}$ が成り立ちます。

ここで $m=0$ とすれば、 $a^0=1$ が導かれ、 $m=-n$ とすれば $a^{-n}=\dfrac{1}{a^n}$ が導かれます。こうして、指数が整数の場合でも、累乗が考えられるようになりました。【基本】整数の指数でも見た内容です。

また、 $n,m$ が正の整数のときは、 $(a^{m})^{n}=a^{mn}$ が成り立ちます。ここで $m=\dfrac{1}{n}$ とすれば、 $a^{\frac{1}{n} }$ を $n$ 乗すれば $a$ になることから、\[ a^{\frac{1}{n} }=\sqrt[n]{a} \]と定義しました。こうして、指数が有理数の場合でも、累乗を考えられるようになりました。【基本】有理数の指数でも見た内容です。

ここまでくると、無理数の場合にも定義して、指数が実数の場合でも扱えるようにする、というのが自然な流れでしょう。

指数が無理数のとき

例えば、 $3^{\sqrt{2} }$ がどうなるかを考えましょう。

$3^x$ は $x$ が大きくなればなるほど大きな値になるので、 $\sqrt{2}$ の近くの数字で挟んでいけば求められそうです。つまり、 $1\lt \sqrt{2}\lt 2$ だから $3^{\sqrt{2} }$ は、 $3^1=3$ と $3^2=9$ の間にある、と考えるのが自然でしょう。

また、 $1.4\lt \sqrt{2}\lt 1.5$ なので、 $3^{1.4}=4.6555\cdots$ と $3^{1.5}=5.1961\cdots$ の間にある、と考えられます。なお、 $3^{1.4}=3^{\frac{7}{5} }$ について、7乗は計算できますが、5乗根を手で計算するのは難しいです。以下では機械を使って計算しています。

同様の計算から、 $1.41\lt \sqrt{2}\lt 1.42$ なので、 $3^{1.41}=4.7069\cdots$ と $3^{1.42}=4.7589\cdots$ の間にある、と考えられます。

もう一つ計算しましょう。 $1.414\lt \sqrt{2}\lt 1.415$ なので、 $3^{1.414}=4.7276\cdots$ と $3^{1.415}=4.7328\cdots$ の間にある、と考えられます。

さて、このように、 $\sqrt{2}$ に近づくように範囲を狭めていけば、「 $3^{\sqrt{2} }$ がここにあるだろう」という範囲が狭まっていくことがわかります。実際、桁を増やしていけば、範囲が狭まっていってることがわかります。

この範囲はさらに狭くし、幅を0に近づけていくことができ、1つの値に近づいていくことになります。 $3^{\sqrt{2} }$ は、その近づいていく値で定義します。

つまり、指数が無理数の場合、その無理数に近づく有理数の列を使って値を定める、ということです。

もう少し数式を使って書くと、無理数 $x$ に近づいていく有理数の列 $x_1,x_2,x_3,\cdots$ を使って、 $a^{x_1},a^{x_2},a^{x_3},\cdots$ が近づいていく先の値で $a^x$ を定義する、ということです。

なんだか抽象的でスッキリしない決め方ですね。このような決め方なので、具体的に値が求められることはほとんどありません。

指数法則

指数が有理数のときには、以下の指数法則が成り立っていました。 $a$ が正の数で、 $r,s$ は有理数です。
\begin{eqnarray} a^ra^s &=& a^{r+s}\\ (a^r)^s &=& a^{rs}\\ (ab)^r &=& a^r b^r\\ \end{eqnarray}これは、 $r,s$ が無理数の場合でも成り立ちます。ただ、厳密に示すのは難しいです。無理数に近づく有理数の列を使って定義したので、具体的な値が使えないからですね。厳密ではないですが、ざっくりいうと、有理数で近づけるそれぞれの地点では指数法則が成り立つので、近づいた先でも成り立つ、といった感じになるでしょう(だいぶ怪しい説明です)。

教科書でも具体的な証明が載っていることはないと思いますが、指数が実数のときにも指数法則が成り立つことは使っても構いません。

おわりに

ここでは、指数が無理数の場合にも定義をし、指数を実数の範囲まで広げました。

しかし、全体的に少しふわっとした説明なってしまっています。なぜ、こんなにふわっとした説明になるのにわざわざ指数を実数の範囲まで拡大したかというと、その理由の1つには、 $x$ に対して $a^x$ を対応させる、指数関数を扱いたいから、というものがあります。これについて考えたりグラフをかいたりするときには、実数全体で定義されていたほうがいいので、少しふわっとした説明にはなってしまうのですが、実数の範囲まで拡張しておく必要があったのです。

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