【基本】比例を表す式
ここでは、比例の関係を表す式を見ていきます。
ともなって変わる数量
一次方程式では、「2つのものが等しくなるとき」を考えました。例えば、【基本】一次方程式の利用(速さ)では、「弟の歩いた距離と兄の歩いた距離が等しくなるとき」を調べるために、方程式を作って考えました。
ここからしばらくは、少し視点を変えて、「時間が変化すると、距離はどう変わるか」というように、連動して動く2つのものについて考えていきます。ともなって変化する2つのものが、どのような関係で変わっていくかに注目します。
簡単なケースでは、普段からも似たようなことをしているはずです。「1ヶ月でこれだけ貯金できたから、1年後にはこれだけ貯まってるな」とか、「グランドを1周するのにこれだけ時間がかかったから、5周するにはこれだけ時間がかかるな」というような予想は、いろんなところでするはずです。
数学の世界では、このような連動して動く2つのものについていろいろ見ていくことになります。まずは、それらの中でも比較的シンプルな、比例と反比例について見ていきます。比例・反比例はすでに知っている人もいると思いますが、「ともなって変わる数量」の扱いに慣れていくには、とてもいい内容です。知っているからと油断せず、中学以降では、ともなって変わる数量をどのように扱っていくか、学んでいくようにしましょう。
比例を表す式
速さを用いて、比例について考えていきます。
分速80mで歩く人がいるとすると、この人が10分で歩く距離は、\[ 80\times 10=800 \]なので、800mとなります。20分では、1600mとなり、30分では、2400mとなります。歩く時間が2倍、3倍となると、それにともなって、歩く距離も2倍、3倍となります。
このように、ある量(x で表すとします)が、2倍、3倍、4倍、…となるにともなって、別の量(y で表すとします)が、2倍、3倍、4倍、…と変化していくとき、 y は x に比例する、と小学校では習っていたと思います。
y が x に比例するとき、 $x$ が $0$ でないときは、\[ \frac{y}{x} \]の値は一定になります。 $x$ が2倍、3倍、4倍、…となるとき、連動して $y$ も2倍、3倍、4倍、…となっていくので、この分数の値は変わりません。この値のことを、比例定数(proportionality constant) といいます。比例定数を $a$ で表すことにすると、 $y=ax$ という式で $x,y$ の関係を表すことができます。
分速80mで歩く人の例であれば、歩く時間を $x$ 分、歩く距離を $y$ mとすると、\[ y=80x \]と表すことができます。 $x$ が2倍、3倍、…となると、 $y$ も2倍、3倍、…となるので、 $y$ は $x$ に比例します。また、比例定数は $80$ となります。
ただ、「 $x$ が2倍、3倍、…となると、 $y$ も2倍、3倍、…とともなって変わるときに、 $y$ は $x$ に比例する」という表現は、少し長ったらしく、「…」のところが少しあいまいです。この条件を満たしていれば、 $y=ax$ という関係式で書けるのだから、数学の世界では、こちらを比例(proportionality) の定義に採用します。
一般的に、他の文字の値によって変わらないもののことを、一般的に定数(constant) と呼びます。先ほどの速さの例では、歩く時間や距離が変わっても、分速80mの「80」という数字は変わりません。数字であれば、変わらないことはわかりますが、 $y=ax$ という式で書くと、わからないですね。そのため、変わらないことをいうために「定数」という言葉があります。
比例定数は、比例の式に登場する定数なので、比例定数と呼んでいます。
また、比例の式 $y=ax$ で、 $a$ は動かない値でしたが、 $x,y$ はいろんな値をとり、値は変わりますね。値が変わらないものを定数と呼びましたが、これに対し、値が変わる文字を変数(variable) といいます。比例の式 $y=ax$ では、 $x,y$ が変数、 $a$ が定数です。
なお、比例することを、正比例する(directly proportional) ということもあります。
例題
(1) 縦が $4$ cm で、横が $x$ cmの長方形の面積 $y$ $\mathrm{cm}^2$
(2) 縦が $4$ cm で、横が $x$ cmの長方形の周の長さ $y$ cm
(1)は、\[ y=4x \]と表すことができます。比例を表す式 $y=ax$ で $a=4$ としたものになっているので、これは $y$ は $x$ に比例します。なお、比例定数は $4$ です。
(2)は、縦と横の長さをそれぞれ2倍して足したものが周の長さになるので、\[ y=2x+8 \]となります。比例を表す式 $y=ax$ で $a=2$ としても、 $+8$ を作り出すことができません。 $a$ にどんな値を入れても $y=ax$ が $y=2x+8$ になることはないので、比例しません。
おわりに
ここでは、比例を表す式について見てきました。 $y=ax$ と書けるとき、 $y$ は $x$ に比例する、というのでした。このとき、 $x$ を2倍、3倍、…としていくと、それにともなって $y$ も2倍、3倍、となっていきます。また、逆にこのようになっているときは、 $y=ax$ と表すことができます。式で表すと難しく感じるかもしれませんが、算数で見たときの比例の内容を簡潔に表せるようになっています。