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東京大学 理系 2015年度 第6問 解説

問題編

【問題】
nを正の整数とする。以下の問いに答えよ。

(1) 関数$g(x)$を次のように定める。
\begin{eqnarray} g(x) = \left\{ \begin{array}{1} \displaystyle \frac{\cos(\pi x ) +1}{2} & &(|x| \leqq 1) \\ 0 & &(|x| \gt 1) \end{array} \right. \end{eqnarray} $f(x)$を連続な関数とし、p、qを実数とする。$\displaystyle|x| \leqq \frac{1}{n}$をみたすxに対して、$p \leqq f(x) \leqq q$が成り立つとき、次の不等式を示せ。
\[
p \leqq n \int_{-1}^1 g(nx) f(x) dx \leqq q
\]

(2) 関数$h(x)$を次のように定める。
\begin{eqnarray} h(x) = \left\{ \begin{array}{1} \displaystyle - \frac{\pi}{2} \sin(\pi x) & &(|x| \leqq 1) \\ 0 & &(|x| \gt 1) \end{array} \right. \end{eqnarray} このとき、次の極限を求めよ。
\begin{eqnarray} \lim_{n \to \infty} n^2 \int_{-1}^1 h(nx) \log (1+e ^{x+1}) dx \end{eqnarray}

【考え方】
$f(x)$に対して$\displaystyle |x| \leqq \frac{1}{n}$に関する条件しかないのに、-1から1まで積分っていうところで一瞬「?」となってしまいます。しかし、$g(x)$が0になっている範囲を考えると、実はこの積分区間はひっかけであることがわかります。

(2)の極限値は、(1)の結果を見るとはさみうちを使うことがバレバレです。また、ちょっと気づきにくいかもしれませんが、$g'(x)=h(x)$であり、このことも(2)の計算途中で使います。(1)をどう使うかを考えれば気付くと思いますが。


解答編

【問題】
nを正の整数とする。以下の問いに答えよ。

(1) 関数$g(x)$を次のように定める。
\begin{eqnarray} g(x) = \left\{ \begin{array}{1} \displaystyle \frac{\cos(\pi x ) +1}{2} & &(|x| \leqq 1) \\ 0 & &(|x| \gt 1) \end{array} \right. \end{eqnarray} $f(x)$を連続な関数とし、p、qを実数とする。$\displaystyle|x| \leqq \frac{1}{n}$をみたすxに対して、$p \leqq f(x) \leqq q$が成り立つとき、次の不等式を示せ。
\[
p \leqq n \int_{-1}^1 g(nx) f(x) dx \leqq q
\]

(2) 関数$h(x)$を次のように定める。
\begin{eqnarray} h(x) = \left\{ \begin{array}{1} \displaystyle - \frac{\pi}{2} \sin(\pi x) & &(|x| \leqq 1) \\ 0 & &(|x| \gt 1) \end{array} \right. \end{eqnarray} このとき、次の極限を求めよ。
\begin{eqnarray} \lim_{n \to \infty} n^2 \int_{-1}^1 h(nx) \log (1+e ^{x+1}) dx \end{eqnarray}

【解答】
(1)
$|x|\gt 1$のときに$g(x)=0$なので、
\begin{eqnarray} n \int_{-1}^1 g(nx) f(x) dx = n \int_{-1/n}^{1/n} g(nx) f(x) dx \quad \cdots (A) \end{eqnarray} となる。$|x|\leqq 1/n$のときに$p \leqq f(x) \leqq q$となること、および、$g(x) \geqq 0$となることから、
\begin{eqnarray} n \int_{-1/n}^{1/n} g(nx) p dx \leqq n \int_{-1/n}^{1/n} g(nx) f(x) dx \leqq n \int_{-1/n}^{1/n} g(nx) q dx \end{eqnarray} が成り立つ。

ここで、
\begin{eqnarray} n \int_{-1/n}^{1/n} g(nx) dx &=& n \int_{-1/n}^{1/n} \frac{\cos(\pi nx)+1}{2} dx \\[5pt] &=& n \int_{-1}^{1} \frac{\cos(\pi x)+1}{2} \ \frac{dx}{n} \\[5pt] &=& \int_{-1}^{1} \frac{\cos(\pi x)+1}{2} dx \\[5pt] &=& \frac{1}{2} \left[\frac{\sin(\pi x)}{\pi} + x \right]_{-1}^{1} \\[5pt] &=& 1 \end{eqnarray} なので、先の不等式は次のように変形できる。

\begin{eqnarray} p \leqq n \int_{-1/n}^{1/n} g(nx) f(x) dx \leqq q \end{eqnarray} これと(A)より、題意が示された。

(2)
$|x|\gt 1$のときに$h(x)=0$であることと $|x| \lt 1$のとき、$g'(x)=h(x)$であることから、
\begin{eqnarray} & & n^2 \int_{-1}^1 h(nx) \log (1+e ^{x+1}) dx \\[5pt] &=& n^2 \int_{-1/n}^{1/n} h(nx) \log (1+e ^{x+1}) dx \\[5pt] &=& n^2 \left[ \frac{1}{n} g(nx) \log (1+e ^{x+1}) \right]_{-1/n}^{1/n} - n^2 \int_{-1/n}^{1/n} \frac{1}{n} g(nx) \frac{e ^{x+1} }{1+e ^{x+1} } dx \\[5pt] &=& - n \int_{-1/n}^{1/n} g(nx) \frac{e ^{x+1} }{1+e ^{x+1} } dx \\[5pt] &=& - n \int_{-1}^{1} g(nx) \frac{e ^{x+1} }{1+e ^{x+1} } dx \end{eqnarray} となる。

ここで、$\displaystyle f(x)=\frac{e ^{x+1} }{1+e ^{x+1} }$とすると、これは$\displaystyle1-\frac{1}{1+e ^{x+1} }$とも書けるので、単調増加関数である。よって、$\displaystyle |x|\leqq \frac{1}{n}$のとき、$\displaystyle f(-1/n)\leqq f(x)\leqq f(1/n)$となる。よって(1)の結果から、
\begin{eqnarray} -f(1/n) \leqq - n \int_{-1}^1 g(nx) \frac{e ^{x+1} }{1+e ^{x+1} } dx \leqq -f(-1/n) \\[5pt] \end{eqnarray} が得られる。

ここで
\begin{eqnarray} \lim_{n \to \infty } f(1/n) &=& \lim_{n \to \infty } \frac{e ^{\frac{1}{n}+1} }{1+e ^{\frac{1}{n}+1} } \\[5pt] &=& \frac{e}{1+e} \\[5pt] \lim_{n \to \infty } f(-1/n) &=& \lim_{n \to \infty } \frac{e ^{\frac{-1}{n}+1} }{1+e ^{\frac{-1}{n}+1} } \\[5pt] &=& \frac{e}{1+e} \\[5pt] \end{eqnarray} なので、はさみうちの定理から、求める極限値は$\displaystyle -\frac{e}{1+e}$となる。

【解答終】

【解説】
(2)を解くときに、どうやって(1)を使うか、が少し難しいですね。$g(x)$と$h(x)$の関係にまず気づかないといけません。さらに、$f(x)$に対してp、qをどうやって決めるかも考えないといけません。気づけばそんなに難しくはないのですが、抽象的な議論で進んでいくので、「今何をしているのか」がわかりにくい問題だと思います。

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