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東京大学 理系 2006年度 第4問 解説

問題編

【問題】
 次の条件を満たす組$(x,y,z)$を考える。

 条件(A):$x,y,z$は正の整数で、$x^2+y^2+z^2=xyz$および$x\leqq y \leqq z$を満たす。

以下の問いに答えよ。

(1) 条件(A)を満たす組$(x,y,z)$で、$y\leqq 3$となるものをすべて求めよ。

(2) 組$(a,b,c)$が条件(A)を満たすとする。このとき、組$(b,c,z)$が条件(A)を満たすようなzが存在することを示せ。

(3) 条件(A)を満たす組$(x,y,z)$は、無数に存在することを示せ。

【考え方】
(1)は、$x,y$の組が限定されるので考えやすいですね。まず、$x=y=1$のときを考えてみます。このとき、zがわかればいいのですが、zを出すには条件式をzの二次方程式を見ればいいことがわかります。

条件の式をzの方程式をとしてみると、zは$x,y$を用いて表せるので、zは簡単に求めることができます。

(2)は、2組が条件を満たすとしたときに、zが満たす条件を考えれば求めることができます。zを具体的に$a,b,c$を用いて表現できます。

(3)は、(1)と(2)を用いれば、ほぼ明らかな結果です。


解答編

【問題】
 次の条件を満たす組$(x,y,z)$を考える。

 条件(A):$x,y,z$は正の整数で、$x^2+y^2+z^2=xyz$および$x\leqq y \leqq z$を満たす。

以下の問いに答えよ。

(1) 条件(A)を満たす組$(x,y,z)$で、$y\leqq 3$となるものをすべて求めよ。

【解答】
条件の式は\[ z^2 -xyz +(x^2+y^2)=0 \]と書けるので、\[ z=\frac{xy \pm\sqrt{(xy)^2-4(x^2+y^2)} }{2} \]である。

$x=1$のとき、$(xy)^2-4(x^2+y^2)=-4-3y^2\lt 0$なので、条件を満たすものはない。

$x=2$のとき、$(xy)^2-4(x^2+y^2)=-16\lt 0$なので、条件を満たすものはない。

よって、$y\leqq 3$のときに条件を満たすものがあるとすると、$x=y=3$しかない。このとき、
\begin{eqnarray} z &=& \frac{xy \pm\sqrt{(xy)^2-4(x^2+y^2)} }{2} \\[5pt] &=& \frac{9 \pm\sqrt{9^2-4(9+9)} }{2} \\[5pt] &=& \frac{9 \pm 3}{2} \\[5pt] \end{eqnarray}なので、$z=3,6$となる。

以上から、条件(A)を満たす$(x,y,z)$の組は、$(3,3,3)$と$(3,3,6)$となる。

【解答終】

【解説】
zの二次方程式、と見るのが少し難しいです。しかし、$x=y=1$などとして具体的にzを求めようとすると、自然とこの見方ができるようになるでしょう。

【問題】
(2) 組$(a,b,c)$が条件(A)を満たすとする。このとき、組$(b,c,z)$が条件(A)を満たすようなzが存在することを示せ。

【解答】
$a^2+b^2+c^2=abc$ と $b^2+c^2+z^2=bcz$ が成り立つとする。辺々を引くと
\begin{eqnarray} a^2-z^2 &=& abc-bcz \\ (a+z)(a-z) &=& bc(a-z) \\ \end{eqnarray}となる。$a\ne z$とすると、$a+z=bc$より、$z=bc-a$となる。よって、条件(A)を満たすものがあるとすると、$z=a$または$z=bc-a$となる。

$z=bc-a$とする。このとき、上の式から$b^2+c^2+z^2=bcz$は成り立つ。また、(1)の解答中の前半の議論より、$a=1,2$となることはないので、$b$は3以上だから、
\begin{eqnarray} z-c &=& (bc-a)-c \\ & \geqq & 3c-a-c \\ &=& c+(c-a) \\ & \gt & 0 \quad \cdots (B) \end{eqnarray}となるので、$c\leqq z$である。よって、$z=bc-a$とすれば、$(b,c,z)$は条件(A)を満たす。

【解答終】

【解説】
当たり前ですが、$x\leqq y\leqq z$の確認をする必要があります。

なお、$z=a$となるときは、$a=b=c$のときしかありません。

【問題】
(3) 条件(A)を満たす組$(x,y,z)$は、無数に存在することを示せ。

【解答】
$a_1=3$,$a_2=3$,$a_3=6$とすると、(1)より$(a_1,a_2,a_3)$は条件(A)を満たす。

nを自然数とするとき、$a_{n+3}=a_{n+2}a_{n+1}-a_n$とする。このとき、(2)より、すべての自然数nに対して、$(a_n,a_{n+1},a_{n+2})$は条件(A)を満たす。

また、(2)の解答中の(B)より、$a_{n+2} \lt a_{n+3}$なので、$(a_n,a_{n+1},a_{n+2})$と$(a_{n+1},a_{n+2},a_{n+3})$は異なる。

以上から、条件(A)を満たすものは無数に存在する。

【解答終】

【解説】
(1)で初期値があること、(2)で既にある組から新しい組を作り出せることがわかるので、無数にあることを示すのは難しくありません。

ここで注意しないといけないのは、「新しく作り出した組が、すでにある組と異なる」ということを示さないといけない点です。例えば、$a_1=a_2=a_3=3$、$a_{n+1}=a_n$とすると、条件を満たす新しい組は作れますが、元の組と同じなので「無数に存在する」とは言えません。そのため、新しい組は既存の組とは異なる、と示すことが必要です。

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