東京大学 理系 2006年度 第3問 解説
問題編
【問題】
Oを原点とする座標平面上に、y軸上の点$\mathrm{ P }(0,p)$と、直線$m:y=(\tan \theta)x$が与えられている。ここで、$p\gt 1$、$\displaystyle 0 \lt \theta \lt \frac{\pi}{2}$とする。いま、傾きが$\alpha$の直線lを対称軸とする対称移動を行うと、原点Oは直線$y=1$上の、第1象限の点Qに移り、y軸上の点Pは直線m上の、第1象限の点Rに移った。
(1) このとき、$\tan\theta$を$\alpha$とpで表せ。
(2) 次の条件を満たす点Pが存在することを示し、そのときのpの値を求めよ。
条件:どのような$\displaystyle \theta \ (0 \lt \theta \lt \frac{\pi}{2})$に対しても、原点を通り直線lに垂直な直線は$\displaystyle y=\left(\tan\frac{\theta}{3}\right)x$となる。
【考え方】
まず(1)です。lの傾きがわかっていますが、切片がわかっていません。これをまず求めます。これはOの移動に着目すれば求めることができます。
lの方程式がわかれば後は簡単ですが、計算が結構やっかいです。答えは複雑で、とても不安な形になります。
(2)はlの傾き$\alpha$と$\theta$の関係式がもう1つ増えたので、(1)と合わせれば解けそうです。しかし、ここも計算がやっかいです。三倍角の公式を使って、あとはひたすら計算するだけです。答えはきれいな値になります。
(2)については、図形的にも解くことができます。(1)を解いた後に、図形的に解こうという気にはなかなかなりにくいですが、図形的にはわりとすっきり解けます。解答後に別解として記載します。
解答編
【問題】
Oを原点とする座標平面上に、y軸上の点$\mathrm{ P }(0,p)$と、直線$m:y=(\tan \theta)x$が与えられている。ここで、$p\gt 1$、$\displaystyle 0 \lt \theta \lt \frac{\pi}{2}$とする。いま、傾きが$\alpha$の直線lを対称軸とする対称移動を行うと、原点Oは直線$y=1$上の、第1象限の点Qに移り、y軸上の点Pは直線m上の、第1象限の点Rに移った。
(1) このとき、$\tan\theta$を$\alpha$とpで表せ。
【解答】
lの方程式を$y=\alpha x+b$とおく。
点Qの座標を$(q,1)$とすると、OQの垂直二等分線がlであることから、\[ \alpha \cdot \frac{1}{q}=-1 \]より$q=-\alpha$であることがわかる。また、\[ \frac{1}{2} = \alpha \cdot \frac{q}{2} +b \]より、$\displaystyle b=\frac{\alpha^2+1}{2}$であることがわかる。
点Rの座標を$(r,r\tan\theta)$とする。PRの垂直二等分線が$\displaystyle y=\alpha x+\frac{\alpha^2+1}{2}$であることから、
\begin{eqnarray}
\alpha\cdot\frac{r\tan\theta -p}{r} &=& -1 \\[5pt]
r\tan\theta -p &=& -\frac{r}{\alpha} \quad \cdots (A)
\end{eqnarray}が成り立つ。また、
\begin{eqnarray}
\frac{p+r\tan\theta}{2} &=& \alpha \cdot \frac{r}{2} +\frac{\alpha^2+1}{2} \\[5pt]
r\tan\theta+p &=& \alpha r +\alpha^2+1 \cdots (B)
\end{eqnarray}が成り立つ。
(A)-(B)より、
\begin{eqnarray}
-2p &=& -\frac{r}{\alpha} -(\alpha r +\alpha^2+1) \\[5pt]
-2p\alpha &=& -r -\alpha^2 r -\alpha^3 -\alpha \\[5pt]
(1+\alpha^2)r &=& 2p\alpha -\alpha^3 -\alpha \\[5pt]
r &=& \frac{2p\alpha -\alpha^3 -\alpha}{1+\alpha^2} \cdots (C)
\end{eqnarray}が得られる。
(A)は、
\begin{eqnarray}
r\tan\theta -p &=& -\frac{r}{\alpha} \\[5pt]
\tan\theta &=& \frac{p}{r} -\frac{1}{\alpha} \\[5pt]
\end{eqnarray}と変形できるので、(C)をこれに代入すると、
\begin{eqnarray}
\tan\theta
&=&
p\cdot\frac{1+\alpha^2}{2p\alpha -\alpha^3 -\alpha} -\frac{1}{\alpha} \\[5pt]
&=&
\frac{p+p\alpha^2 -(2p -\alpha^2 -1)}{2p\alpha -\alpha^3 -\alpha} \\[5pt]
&=&
\frac{(\alpha^2-1)p +\alpha^2 +1}{2p\alpha -\alpha^3 -\alpha} \\[5pt]
\end{eqnarray}となる。
【解答終】
【解説】
文字が多くて混乱してきますが、lの方程式を出した後は、rを消すことを目標に式変形をしていきます。
【問題】
(2) 次の条件を満たす点Pが存在することを示し、そのときのpの値を求めよ。
条件:どのような$\displaystyle \theta \ (0 \lt \theta \lt \frac{\pi}{2})$に対しても、原点を通り直線lに垂直な直線は$\displaystyle y=\left(\tan\frac{\theta}{3}\right)x$となる。
【解答】
lに垂直な直線の傾きは$\displaystyle -\frac{1}{\alpha}$である。
$\tan\frac{\theta}{3}=-\frac{1}{\alpha}$とすると、三倍角の公式から
\begin{eqnarray}
\tan\theta
&=&
\frac{3\tan\frac{\theta}{3} -\tan^3\frac{\theta}{3} }{1-3\tan^2\frac{\theta}{3} } \\[5pt]
&=&
\frac{-3\frac{1}{\alpha} +\frac{1}{\alpha^3} }{1-3\frac{1}{\alpha^2} } \\[5pt]
&=&
\frac{-3\alpha^2 +1}{\alpha^3-3\alpha} \\[5pt]
\end{eqnarray}となる。
(1)の結果から、このとき、さらに次が成り立つ。
\begin{eqnarray}
\frac{(\alpha^2-1)p +\alpha^2 +1}{2p\alpha -\alpha^3 -\alpha} &=& \frac{-3\alpha^2 +1}{\alpha^3-3\alpha} \\[5pt]
\{(\alpha^2-1)p +\alpha^2 +1\}(\alpha^3-3\alpha) &=& (-3\alpha^2 +1)(2p\alpha -\alpha^3 -\alpha) \\[5pt]
\{(\alpha^2-1)p +\alpha^2 +1\}(\alpha^2-3) &=& (-3\alpha^2 +1)(2p -\alpha^2 -1) \\[5pt]
\end{eqnarray}さらに変形すると
\begin{eqnarray}
\{(\alpha^2-1)p +\alpha^2 +1\}(\alpha^2-3) -(-3\alpha^2 +1)(2p -\alpha^2 -1) &=& 0 \\[5pt]
(\alpha^2-1)(\alpha^2-3)p +(\alpha^2 +1)(\alpha^2-3) -2p(-3\alpha^2 +1)-(-3\alpha^2 +1)(-\alpha^2 -1) &=& 0 \\[5pt]
(\alpha^4-4\alpha^2+3 +6\alpha^2-2)p +\alpha^4-2\alpha^2-3 -3\alpha^4-2\alpha^2+1 &=& 0 \\[5pt]
(\alpha^4+2\alpha^2+1)p -2\alpha^4-4\alpha^2-2 &=& 0 \\[5pt]
(\alpha^2+1)^2p -2(\alpha^2+1)^2 &=& 0 \\[5pt]
(\alpha^2+1)^2(p-2) &=& 0 \\[5pt]
\end{eqnarray}となる。$p=2$とすると、$\theta$の値によらず、この式は必ず成り立つ。よって、$p=2$のとき、$\tan\frac{\theta}{3}=-\frac{1}{\alpha}$が成り立つ。
よって、$p=2$のとき、条件を満たすことがわかる。
【解答終】
【解説】
途中の計算は大変ですが、やるべきことは「$\theta$がいくらであっても条件を満たすp」なので、条件を変形していけば求めることができます。
図形的に解くなら、次のように解くこともできます。
【別解】
点Aの座標を$(1,0)$とし、$\angle \mathrm{ QOA }=\beta$とする。このとき、$\angle \mathrm{ ROQ }=\theta-\beta$、$\angle \mathrm{ RQO }=\angle \mathrm{ POQ }=\frac{\pi}{2}-\beta$なので、\[\angle \mathrm{ ORQ }=\pi-(\theta-\beta)-(\frac{\pi}{2}-\beta) = \frac{\pi}{2}-\theta+2\beta\]である。
よって、「$\angle \mathrm{ QOA }=\frac{\theta}{3}$」と「$\angle \mathrm{ RQO }=\angle \mathrm{ ORQ }=\frac{\pi}{2}-\frac{\theta}{3}$」は同値である。さらにこれは、「三角形ROQは$\mathrm{ OR }=\mathrm{ OQ }$の二等辺三角形」とも同値であり、「三角形POQは$\mathrm{ PQ }=\mathrm{ OQ }$の二等辺三角形」とも同値である。$y=1$はQからOPに下した垂線と一致するから、これはさらに「$p=2$」とも同値となる。よって、$\angle \mathrm{ QOA }=\frac{\theta}{3}$と$p=2$は同値となる。よって、条件を満たすPが存在し、$p=2$となる。
【別解終】