東京大学 文系 2022年度 第4問 解説
問題編
問題
O を原点とする座標平面上で考える。 $0$ 以上の整数 $k$ に対して、ベクトル $\vec{v_k}$ を\[ \vec{v_k}=\left(\cos\frac{2k\pi}{3}, \sin\frac{2k\pi}{3}\right) \]と定める。投げたとき表と裏がどちらも $\dfrac{1}{2}$ の確率で出るコインを $N$ 回投げて、座標平面上に点 $\mathrm{ X }_0, \mathrm{ X }_1,\mathrm{ X }_2,\cdots,\mathrm{ X }_N$ を以下の規則(i), (ii) に従って定める。
(i) $\mathrm{ X }_0$ は O にある。
(ii) $n$ を $1$ 以上 $N$ 以下の整数とする。 $\mathrm{ X }_{n-1}$ が定まったとし、 $\mathrm{ X }_n$ を次のように定める。
・$n$ 回目のコイン投げで表が出た場合、\[ \overrightarrow{ \mathrm{ OX }_n }=\overrightarrow{ \mathrm{ OX }_{n-1} }+\vec{v_k} \]により $\mathrm{ X }_n$ を定める。ただし、 $k$ は $1$ 回目から $n$ 回目までのコイン投げで裏が出た回数とする。
・$n$ 回目のコイン投げで裏が出た場合、 $\mathrm{ X }_n$ を $\mathrm{ X }_{n-1}$ と定める。
(1) $N=5$ とする。 $\mathrm{ X }_5$ が O にある確率を求めよ。
(2) $N=98$ とする。 $\mathrm{ X }_{98}$ が O にあり、かつ、表が $90$ 回、裏が $8$ 回出る確率を求めよ。
考え方
(1)は、すべての場合を書き出して力づくで解くこともできますが、それだと(2)ができません。(2)が解けるように、うまく数えることができないか考えます。
裏が出た回数でベクトルが変わるため、裏を基準に考えると解きやすくなるかもしれません。
なお、理系でも同じ設定の問題が出題されています。東京大学 理系 2022年度 第6問 解説
解答編
問題
O を原点とする座標平面上で考える。 $0$ 以上の整数 $k$ に対して、ベクトル $\vec{v_k}$ を\[ \vec{v_k}=\left(\cos\frac{2k\pi}{3}, \sin\frac{2k\pi}{3}\right) \]と定める。投げたとき表と裏がどちらも $\dfrac{1}{2}$ の確率で出るコインを $N$ 回投げて、座標平面上に点 $\mathrm{ X }_0, \mathrm{ X }_1,\mathrm{ X }_2,\cdots,\mathrm{ X }_N$ を以下の規則(i), (ii) に従って定める。
(i) $\mathrm{ X }_0$ は O にある。
(ii) $n$ を $1$ 以上 $N$ 以下の整数とする。 $\mathrm{ X }_{n-1}$ が定まったとし、 $\mathrm{ X }_n$ を次のように定める。
・$n$ 回目のコイン投げで表が出た場合、\[ \overrightarrow{ \mathrm{ OX }_n }=\overrightarrow{ \mathrm{ OX }_{n-1} }+\vec{v_k} \]により $\mathrm{ X }_n$ を定める。ただし、 $k$ は $1$ 回目から $n$ 回目までのコイン投げで裏が出た回数とする。
・$n$ 回目のコイン投げで裏が出た場合、 $\mathrm{ X }_n$ を $\mathrm{ X }_{n-1}$ と定める。
(1) $N=5$ とする。 $\mathrm{ X }_5$ が O にある確率を求めよ。
(2) $N=98$ とする。 $\mathrm{ X }_{98}$ が O にあり、かつ、表が $90$ 回、裏が $8$ 回出る確率を求めよ。
解答
$0$ 以上の整数 $k$ について
\begin{eqnarray}
\vec{v_{3k} } &=& \left(1, 0\right) \\[5pt]
\vec{v_{3k+1} } &=& \left(-\frac{1}{2}, \frac{\sqrt{3} }{2}\right) \\[5pt]
\vec{v_{3k+2} } &=& \left(-\frac{1}{2}, -\frac{\sqrt{3} }{2}\right) \\[5pt]
\end{eqnarray}が成り立つ。 $\overrightarrow{ \mathrm{ OX }_n }$ を定めるまでに $\vec{v_0}$, $\vec{v_1}$, $\vec{v_2}$ を足した回数をそれぞれ $a,b,c$ とすると、 $\mathrm{ X }_n$ が O にあることは
\begin{eqnarray}
a-\frac{b}{2}-\frac{c}{2} &=& 0 \\
b-c &=& 0
\end{eqnarray}の2つが成り立つことと同値である。つまり、 $a=b=c$ であることと同値である。
$\mathrm{ X }_n$ を定めるときに、$\vec{v_0}$, $\vec{v_1}$, $\vec{v_2}$ を足したことをそれぞれ $A,B,C$ で表し、裏が出たことを $X$ で表したものを、「結果」と呼ぶことにする。例えば、コインが「表裏表裏表」の順で出れば、結果は $AXBXC$ となる。
(1)
$a=b=c$ なので、 $0,1$ の場合がありうる。
(ア) $a=b=c=0$ のとき
すべて裏の場合なので、1通り。
(イ) $a=b=c=1$ のとき
このとき、裏が2回である。結果から、 $X$ の部分だけを抜き出すと $XX$ となる。 $A$ が現れるところは、1つ目の $X$ の前だけである。 $B$ は1つ目の後で、 $C$ は2つ目の後である。つまり、結果は $AXBXC$ となるしかなく、1通りである。
(ア)(イ)より、 $\mathrm{ X }_5$ が $\mathrm{ O }$ にあるようなコインの出方は $2$ 通りであるから、こうなる確率は\[ \frac{2}{2^5}=\frac{1}{16} \]である。(答)
(2)
$a=b=c$ なので、いずれも $30$ である。
結果から $X$ の部分だけを抜き出すと、 $X$ が $8$ 個並ぶ。 $A$ が現れるところは、 $1,4,7$ 番目の前だけであり、$A$ は合計で $30$ 個現れる。この場合の数は、 $30$ 個の〇と $2$ 個の|を並び替える場合の数と等しく、 ${}_{32}\mathrm{C}_2$ 通りである。
$B$ が現れる場所、 $C$ が現れる場所も同じようにして ${}_{32}\mathrm{C}_2$ 通りだとわかるので、求める確率は
\begin{eqnarray}
\frac{({}_{32}\mathrm{C}_2)^3}{2^{98} }
&=&
\frac{(16\cdot 31)^3}{2^{98} } \\[5pt]
&=&
\frac{31^3}{2^{86} }
\end{eqnarray}となる。(答)