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東京大学 文系 2022年度 第2問 解説

問題編

問題

 $y=x^3-x$ により定まる座標平面上の曲線を $C$ とする。 $C$ 上の点 $\mathrm{ P }(\alpha,\alpha^3-\alpha)$ を通り、点 P における $C$ の接線と垂直に交わる直線を $\ell$ とする。 $C$ と $\ell$ は相異なる3点で交わるとする。

(1) $\alpha$ のとりうる値の範囲を求めよ。

(2) $C$ と $\ell$ の点 P 以外の2つの交点の $x$ 座標を $\beta,\gamma$ とする。ただし $\beta\lt \gamma$ とする。 $\beta^2+\beta\gamma+\gamma^2-1\ne 0$ となることを示せ。

(3) (2)の $\beta,\gamma$ を用いて、\[ u=4\alpha^3+\frac{1}{\beta^2+\beta\gamma+\gamma^2-1} \]と定める。このとき、 $u$ のとりうる値の範囲を求めよ。

考え方

$C$ と $\ell$ との交点のうち、1つはすぐにわかるのでそれを利用します。(2)は(3)の式の分数が定義できることを示す問題ですが、これを解くと(3)の分数も扱いやすい式に変形できる、という誘導になっています。


解答編

問題

 $y=x^3-x$ により定まる座標平面上の曲線を $C$ とする。 $C$ 上の点 $\mathrm{ P }(\alpha,\alpha^3-\alpha)$ を通り、点 P における $C$ の接線と垂直に交わる直線を $\ell$ とする。 $C$ と $\ell$ は相異なる3点で交わるとする。

(1) $\alpha$ のとりうる値の範囲を求めよ。

解答

(1)
$f(x)=x^3-x$ とすると $f'(x)=3x^2-1$ なので、点 P での接線の傾きは $3\alpha^2-1$ である。これが $0$ とすると $\ell$ は $y$ 軸と平行になるので $\ell$ と $C$ が相異なる3点で交わることはない。よって、 $3\alpha^2-1\ne 0$ である。

よって、 $\ell$ の方程式は\[ y-f(\alpha)=-\frac{1}{3\alpha^2-1}(x-\alpha) \]となる。これと $C$ との交点の $x$ 座標は\[ f(x)=-\frac{x-\alpha}{3\alpha^2-1}+f(\alpha) \]を満たす。これを変形すると
\begin{eqnarray} f(x)-f(\alpha)+\frac{x-\alpha}{3\alpha^2-1} &=& 0 \\[5pt] (x-\alpha)(x^2+\alpha x+\alpha^2)-(x-\alpha)+\frac{x-\alpha}{3\alpha^2-1} &=& 0 \\[5pt] (x-\alpha)\left\{x^2+\alpha x+\alpha^2-1+\frac{1}{3\alpha^2-1} \right\} &=& 0 \\[5pt] \end{eqnarray}となる。ここで最後の式の波かっこ内の式を $g(x)$ とおくと \begin{eqnarray} g(\alpha) &=& \alpha^2+\alpha^2+\alpha^2-1+\frac{1}{3\alpha^2-1} \\[5pt] &=& 3\alpha^2-1+\frac{1}{3\alpha^2-1} \\[5pt] &=& \frac{(3\alpha^2-1)^2+1}{3\alpha^2-1} \\[5pt] \end{eqnarray}であり、分子が $0$ になることはないので、 $x=\alpha$ は $g(x)=0$ の解ではない。よって、 $g(x)=0$ が異なる2つの実数解をもつための条件を考えればよい。つまり、 $g(x)=0$ の判別式が正のときを考えればよいので \begin{eqnarray} \alpha^2 -4\left(\alpha^2-1+\frac{1}{3\alpha^2-1}\right) & \gt & 0 \\[5pt] -3\alpha^2 +4 -\frac{4}{3\alpha^2-1} & \gt & 0 \\[5pt] \frac{(-3\alpha^2 +4)(3\alpha^2 -1)-4}{3\alpha^2-1} & \gt & 0 \\[5pt] \frac{-9\alpha^4 +15\alpha^2-4-4}{3\alpha^2-1} & \gt & 0 \\[5pt] \frac{9\alpha^4 -15\alpha^2+8}{3\alpha^2-1} & \lt & 0 \\[5pt] \frac{9\left(\alpha^2-\frac{5}{6}\right)^2+\frac{7}{4} }{3\alpha^2-1} & \lt & 0 \\[5pt] \end{eqnarray}となる。最後の式の左辺の分子は正なので、 $3\alpha^2-1\lt 0$ が得られる。これを満たすとき、 $g(x)=0$ は $\alpha$ 以外の異なる2つの実数解をもち、 $C$ と $\ell$ が相異なる3点で交わることがわかる。

よって $3\alpha^2-1\lt 0$ を解いて、 $\alpha$ のとりうる値の範囲は\[ -\frac{\sqrt{3} }{3} \lt \alpha \lt \frac{\sqrt{3} }{3} \]となる。(答)

解答編 つづき

問題

(2) $C$ と $\ell$ の点 P 以外の2つの交点の $x$ 座標を $\beta,\gamma$ とする。ただし $\beta\lt \gamma$ とする。 $\beta^2+\beta\gamma+\gamma^2-1\ne 0$ となることを示せ。

解答

(2)
$\beta,\gamma$ は (1)の $g(x)=0$ の解なので、解と係数の関係から
\begin{eqnarray} \beta+\gamma &=& -\alpha \\[5pt] \beta\gamma &=& \alpha^2-1+\frac{1}{3\alpha^2-1} \\[5pt] \end{eqnarray}なので \begin{eqnarray} & & \beta^2+\beta\gamma+\gamma^2-1 \\[5pt] &=& (\beta+\gamma)^2-\beta\gamma-1 \\[5pt] &=& (-\alpha)^2-\left(\alpha^2-1+\frac{1}{3\alpha^2-1}\right)-1 \\[5pt] &=& -\frac{1}{3\alpha^2-1} \\[5pt] \end{eqnarray}なので、 $\beta^2+\beta\gamma+\gamma^2-1\ne 0$ である。(終)

解答編 つづき

問題

(3) (2)の $\beta,\gamma$ を用いて、\[ u=4\alpha^3+\frac{1}{\beta^2+\beta\gamma+\gamma^2-1} \]と定める。このとき、 $u$ のとりうる値の範囲を求めよ。

解答

(3)
(2)より
\begin{eqnarray} u &=& 4\alpha^3+\frac{1}{\beta^2+\beta\gamma+\gamma^2-1} \\[5pt] &=& 4\alpha^3+\frac{1}{-\frac{1}{3\alpha^2-1} } \\[5pt] &=& 4\alpha^3-3\alpha^2+1 \\[5pt] \end{eqnarray}となる。最後の式を $h(\alpha)$ とおくと\[ h'(\alpha)=12\alpha^2-6\alpha =6\alpha(2\alpha-1) \]となるから、 $h'(\alpha)=0$ とすると $\alpha=0,\dfrac{1}{2}$ となる。よって、増減表は次のようになる。 \begin{array}{c|ccccccc} \alpha & -\frac{\sqrt{3} }{3} & \cdots & 0 & \cdots & \frac{1}{2} & \cdots & \frac{\sqrt{3} }{3} \ \\ \hline h'(\alpha) & & + & 0 & - & 0 & + & \\ \hline h(\alpha) & \times & \nearrow & & \searrow & & \nearrow & \times \end{array}

ここで
\begin{eqnarray} h\left( -\frac{\sqrt{3} }{3} \right) &=& 4\cdot\frac{-\sqrt{3} }{9}-3\cdot\frac{1}{3}+1 \\[5pt] &=& -\frac{4\sqrt{3} }{9} \\[5pt] h\left( 0 \right) &=& 1 \\[5pt] h\left( \frac{1}{2} \right) &=& 4\cdot\frac{1}{8}-3\cdot\frac{1}{4}+1 \\[5pt] &=& \frac{2-3+4}{4}=\frac{3}{4} \\[5pt] h\left( \frac{\sqrt{3} }{3} \right) &=& 4\cdot\frac{\sqrt{3} }{9}-3\cdot\frac{1}{3}+1 \\[5pt] &=& \frac{4\sqrt{3} }{9} \\[5pt] \end{eqnarray}である。 $h\left( -\dfrac{\sqrt{3} }{3} \right) \lt h\left( \dfrac{1}{2} \right)$ であり、\[ \frac{4\sqrt{3} }{9} \lt \frac{4\cdot 2}{9} \lt 1 \]より $h\left( \frac{\sqrt{3} }{3} \right) \lt h(0)$ であるから、 $u$ のとりうる値の範囲は\[ -\frac{4\sqrt{3} }{9} \lt u \leqq 1 \]となる。(答)

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