東京大学 文系 2018年度 第2問 解説
問題編
問題
数列 $a_1,a_2,\cdots$ を\[ a_n=\frac{ {}_{2n} \mathrm{ C }_n}{n!}\quad(n=1,2,\cdots) \]で定める。
(1) $a_7$ と $1$ の大小を調べよ。
(2) $n\geqq 2$ とする。 $\dfrac{a_n}{a_{n-1} }\lt 1$ をみたす n の範囲を求めよ。
(3) $a_n$ が整数となる $n\geqq 1$ をすべて求めよ。
考え方
(1)は計算するだけです。
(2)は少し実験してから予想しましょう。階乗を使って二項係数を変形していきましょう。値はどんどん小さくなることがわかります。
(3)は、(1)(2)を用います。(1)や(2)で、1との大小を比較していましたが、これらを使うと、 n が大きくなると $a_n$ は整数にならないことが示せます。
解答編
問題
数列 $a_1,a_2,\cdots$ を\[ a_n=\frac{ {}_{2n} \mathrm{ C }_n}{n!}\quad(n=1,2,\cdots) \]で定める。
(1) $a_7$ と $1$ の大小を調べよ。
(2) $n\geqq 2$ とする。 $\dfrac{a_n}{a_{n-1} }\lt 1$ をみたす n の範囲を求めよ。
(3) $a_n$ が整数となる $n\geqq 1$ をすべて求めよ。
解答
(1)
\begin{eqnarray}
a_7
&=&
\frac{ {}_{14}\mathrm{ C }_7}{7!} \\[5pt]
&=&
\frac{14\cdot13\cdot12\cdot11\cdot10\cdot9\cdot8}{(7\cdot6\cdot5\cdot4\cdot3\cdot2\cdot1)^2} \\[5pt]
&=&
\frac{14\cdot13\cdot12\cdot11\cdot10\cdot2}{(7\cdot6\cdot5\cdot4)^2} \\[5pt]
&=&
\frac{14\cdot13\cdot3\cdot11\cdot5}{(7\cdot6\cdot5)^2} \\[5pt]
&=&
\frac{14\cdot13\cdot3\cdot11\cdot5}{7\cdot6\cdot5\cdot7\cdot6\cdot5} \\[5pt]
&=&
\frac{13\cdot11}{7\cdot6\cdot5} \\[5pt]
&=&
\frac{143}{210} \\[5pt]
&\lt&
1 \\[5pt]
\end{eqnarray}なので、 $a_7 \lt 1$ である。
(2)
\begin{eqnarray}
{}_{2n} \mathrm{ C }_n=\frac{(2n)!}{n!n!}
\end{eqnarray}なので
\begin{eqnarray}
\frac{a_n}{a_{n-1} }
&=&
\frac{(2n)!}{n!n!n!} \times \frac{(n-1)!(n-1)!(n-1)!}{(2n-2)!} \\[5pt]
&=&
\frac{2n(2n-1)}{n^3} \\[5pt]
&=&
\frac{2(2n-1)}{n^2} \\[5pt]
\end{eqnarray}となる。
$n=2$ のとき、\[ \frac{a_2}{a_1}=\frac{2(2\cdot2-1)}{2^2}=\frac{3}{2}\gt 1 \]となる。 $n=3$ のときは、\[ \frac{a_3}{a_2}=\frac{2(2\cdot3-1)}{3^2}=\frac{10}{9}\gt 1 \]となる。
$n \geqq 4$ のときは
\begin{eqnarray}
\frac{a_n}{a_{n-1} }
&=&
\frac{2(2n-1)}{n^2} \\[5pt]
&\leqq&
\frac{2(2n-1)}{4n} \\[5pt]
&=&
\frac{4n-2}{4n} \\[5pt]
&\lt&
1 \\[5pt]
\end{eqnarray}となる。
よって、 $\dfrac{a_n}{a_{n-1} }\lt 1$ を満たす n の範囲は $n\geqq 4$ となる、
(3)
$a_1$ から $a_3$ までを順番に調べる。
\begin{eqnarray}
a_1
&=&
\frac{ {}_2 \mathrm{ C }_1}{1!}
=
2
\\[5pt]
a_2
&=&
\frac{ {}_4 \mathrm{ C }_2}{2!}
=
3
\\[5pt]
a_3
&=&
\frac{ {}_6 \mathrm{ C }_3}{3!}
=
\frac{10}{3} \\[5pt]
\end{eqnarray}となる。
${}_8 \mathrm{ C }_4$ は $3$ で割り切れないため、 $4!$ で割り切れないから、 $a_4$ は整数ではない。
${}_{10} \mathrm{ C }_5$ は $5$ で割り切れないため、 $5!$ で割り切れないから、 $a_5$ は整数ではない。
${}_{12} \mathrm{ C }_6$ は $9$ で割り切れないため、 $6!$ で割り切れないから、 $a_6$ は整数ではない。
また、(1)より、 $a_7$ は $1$ より小さい正の数なので、整数ではない。
(2)より、 $n\gt 7$ のときは
\begin{eqnarray}
a_n
&=&
a_7\times \frac{a_8}{a_7} \times \cdots \times \frac{a_n}{a_{n-1} } \\[5pt]
&\lt&
1 \\[5pt]
\end{eqnarray}だから、 $1$ より小さい正の数なので、整数ではない。
以上から、 $a_n$ が整数となる n は $n=1,2$ となる。
(終)