共通テスト 数学I・数学A 2024年度追試 第2問 [2] 解説
【必答問題】
問題編
問題
演技などの採点において、複数の審査員による採点結果の評点のうち、最小値と最大値をそれぞれ1個ずつ除外した評点によって評価が行われることがある。
以下では、審査員がそれぞれ $1,2,3,4,5$ のいずれかの評点をつけるものとする。
$n$ は $3$ 以上の自然数とする。 $n$ 人の審査員による採点結果の評点を小さい方から順に並べたものを\[ x_1,x_2,\cdots,x_n \]と表し、これを「元の評点」と呼ぶこととし、「元の評点」の平均値を $\bar{x}$、分散を $s^2$ で表す。また、「元の評点」から最小値 $x_1$ と最大値 $x_n$ を除外した評点を並べたもの\[ x_2,x_3,\cdots,x_{n-1} \]を「調整後の評点」と呼ぶこととし、「調整後の評点」の平均値を $\bar{y}$、分散を $t^2$ で表す。さらに除外した2個の評点 $x_1,x_n$ の平均値を $\bar{z}$ で表す。
例えば、5人の審査員による採点結果の評点が $2,5,3,3,2$ であったとする。このとき「元の評点」は $2,2,3,3,5$ となり、「調整後の評点」は $2,3,3$ となる。
(1) $n=10$ とする。「元の評点」が\[ 1,2,2,3,3,3,3,4,4,5 \]であったとする。このとき $\bar{x}=3$, $\bar{y}=\myBox{シ}$, $s^2=1.2$, $t^2=\myBox{ス}.\ \myBox{セ}$ である。
(2) $n\geqq 5$ とする。 $A=x_1+x_n$, $B=x_2+x_3+\cdots+x_{n-1}$ とおくと、 $\bar{x}=\dfrac{A+B}{n}$ となり、 $\bar{z}=\dfrac{A}{2}$ と $\bar{y}=\dfrac{B}{n-2}$ を用いると\[ \bar{x}=\dBox{ソ}\bar{z}+\dBox{タ}\bar{y} \]と表すことができる。 $\bar{x}\leqq \bar{y}$ が成り立つための必要十分条件として、後の 0 ~ 5 のうち、正しいものは $\dBox{チ}$ である。
$\dbox{ソ}$, $\dbox{タ}$ の解答群(同じものを繰り返し選んでもよい。)
0: $\dfrac{1}{2}$
1: $\dfrac{1}{n-2}$
2: $2$
3: $(n-2)$
4: $\dfrac{1}{n}$
5: $\dfrac{2}{n}$
6: $\dfrac{n-2}{n}$
7: $\dfrac{n-1}{n}$
$\dbox{チ}$ の解答群
0: $\bar{z}\leqq \dfrac{n-2}{2}\bar{y}$
1: $\bar{z}\geqq \dfrac{n-2}{2}\bar{y}$
2: $\bar{z}\leqq \bar{y}$
3: $\bar{z}\geqq \bar{y}$
4: $\bar{z}\leqq \dfrac{n-2}{n-1}\bar{y}$
5: $\bar{z}\geqq \dfrac{n-2}{n-1}\bar{y}$
(3) $n=10$ とする。
(i) 「調整後の評点」が $m$ 個の $a$ と $(8-m)$ 個の $b$ であったとする。ただし、 $a\lt b$, $0\lt m\lt 8$ とする。このとき、 $\bar{y}$ は $m$ と $a,b$ を用いて、\[ \bar{y}=\frac{ma+(8-m)b}{8} \]と表せる。また、 $t^2$ は $m$ と $a,b$ を用いて、 $t^2=\dBox{ツ}$ と表すことができる。
$\dbox{ツ}$ の解答群
0: $\dfrac{m(8-m)(a-b)^2}{8}$
1: $\dfrac{m(8-m)(a+b)^2}{8}$
2: $\dfrac{m(10-m)(a-b)^2}{10}$
3: $\dfrac{m(10-m)(a+b)^2}{10}$
4: $\dfrac{m(8-m)(a-b)^2}{64}$
5: $\dfrac{m(8-m)(a+b)^2}{64}$
6: $\dfrac{m(10-m)(a-b)^2}{100}$
7: $\dfrac{m(10-m)(a+b)^2}{100}$
(ii) ある演技において、4人の $\bigcirc \llap{\text{あ}}$ ~ $\bigcirc \llap{\text{え}}$ の「元の評点」が、表1の結果であった場合を考える。
表1 選手 「もとの評点」 $\bigcirc \llap{\text{あ}}$ $1,4,4,4,4,5,5,5,5,5$ $\bigcirc \llap{\text{い}}$ $1,3,3,4,4,4,4,4,4,5$ $\bigcirc \llap{\text{う}}$ $1,2,2,2,2,4,4,4,4,4$ $\bigcirc \llap{\text{え}}$ $1,1,1,1,1,1,1,3,3,4$ 表1の4人の選手のうち、 $t^2$ が最も大きい選手は $\dBox{テ}$ である。
$\dbox{テ}$ の解答群
0: $\bigcirc \llap{\text{あ}}$
1: $\bigcirc \llap{\text{い}}$
2: $\bigcirc \llap{\text{う}}$
3: $\bigcirc \llap{\text{え}}$
考え方
やっていること自体は理解しやすいと思いますが、後半は計算が少し大変です。最後は、 $t^2$ を全部求めずに、もっと簡単に答えを出すようにしましょう。
【必答問題】
解答編
問題
演技などの採点において、複数の審査員による採点結果の評点のうち、最小値と最大値をそれぞれ1個ずつ除外した評点によって評価が行われることがある。
以下では、審査員がそれぞれ $1,2,3,4,5$ のいずれかの評点をつけるものとする。
$n$ は $3$ 以上の自然数とする。 $n$ 人の審査員による採点結果の評点を小さい方から順に並べたものを\[ x_1,x_2,\cdots,x_n \]と表し、これを「元の評点」と呼ぶこととし、「元の評点」の平均値を $\bar{x}$、分散を $s^2$ で表す。また、「元の評点」から最小値 $x_1$ と最大値 $x_n$ を除外した評点を並べたもの\[ x_2,x_3,\cdots,x_{n-1} \]を「調整後の評点」と呼ぶこととし、「調整後の評点」の平均値を $\bar{y}$、分散を $t^2$ で表す。さらに除外した2個の評点 $x_1,x_n$ の平均値を $\bar{z}$ で表す。
例えば、5人の審査員による採点結果の評点が $2,5,3,3,2$ であったとする。このとき「元の評点」は $2,2,3,3,5$ となり、「調整後の評点」は $2,3,3$ となる。
(1) $n=10$ とする。「元の評点」が\[ 1,2,2,3,3,3,3,4,4,5 \]であったとする。このとき $\bar{x}=3$, $\bar{y}=\myBox{シ}$, $s^2=1.2$, $t^2=\myBox{ス}.\ \myBox{セ}$ である。
解説
(1)
「調整後の評点」は\[ 2,2,3,3,3,3,4,4 \]なので、平均値 $\bar{y}$ は $3$ です。分散は\[ \frac{(-1)^2+(-1)^2+0+0+0+0+1^2+1^2}{8}=\frac{1}{2}=0.5\]となります。
解答
シ:3 (2点)
スセ:05 (2点)
解答編 つづき
問題
(2) $n\geqq 5$ とする。 $A=x_1+x_n$, $B=x_2+x_3+\cdots+x_{n-1}$ とおくと、 $\bar{x}=\dfrac{A+B}{n}$ となり、 $\bar{z}=\dfrac{A}{2}$ と $\bar{y}=\dfrac{B}{n-2}$ を用いると\[ \bar{x}=\dBox{ソ}\bar{z}+\dBox{タ}\bar{y} \]と表すことができる。 $\bar{x}\leqq \bar{y}$ が成り立つための必要十分条件として、後の 0 ~ 5 のうち、正しいものは $\dBox{チ}$ である。
$\dbox{ソ}$, $\dbox{タ}$ の解答群(同じものを繰り返し選んでもよい。)
0: $\dfrac{1}{2}$
1: $\dfrac{1}{n-2}$
2: $2$
3: $(n-2)$
4: $\dfrac{1}{n}$
5: $\dfrac{2}{n}$
6: $\dfrac{n-2}{n}$
7: $\dfrac{n-1}{n}$
$\dbox{チ}$ の解答群
0: $\bar{z}\leqq \dfrac{n-2}{2}\bar{y}$
1: $\bar{z}\geqq \dfrac{n-2}{2}\bar{y}$
2: $\bar{z}\leqq \bar{y}$
3: $\bar{z}\geqq \bar{y}$
4: $\bar{z}\leqq \dfrac{n-2}{n-1}\bar{y}$
5: $\bar{z}\geqq \dfrac{n-2}{n-1}\bar{y}$
解説
(2)
$\bar{z}=\dfrac{A}{2}$ より $A=2\bar{z}$ です。また、 $\bar{y}=\dfrac{B}{n-2}$ より $B=\bar{y}(n-2)$ です。これらを $\bar{x}=\dfrac{A+B}{n}$ に代入すると
\begin{eqnarray}
\bar{x} &=& \dfrac{A+B}{n} \\[5pt]
&=& \dfrac{2\bar{z}+(n-2)\bar{y}}{n} \\[5pt]
&=& \dfrac{2}{n}\bar{z}+\frac{n-2}{n}\bar{y} \\[5pt]
\end{eqnarray}が得られます。これをもとに $\bar{x}\leqq \bar{y}$ を変形すると
\begin{eqnarray}
\bar{x} & \leqq & \bar{y} \\[5pt]
\dfrac{2}{n}\bar{z}+\frac{n-2}{n}\bar{y} & \leqq & \bar{y} \\[5pt]
\dfrac{2}{n}\bar{z} & \leqq & \bar{y}-\frac{n-2}{n}\bar{y} \\[5pt]
\dfrac{2}{n}\bar{z} & \leqq & \frac{2}{n}\bar{y} \\[5pt]
\bar{z} & \leqq & \bar{y} \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。
解答
ソタ:56 (3点)
チ:2 (3点)
解答編 つづき
問題
(3) $n=10$ とする。
(i) 「調整後の評点」が $m$ 個の $a$ と $(8-m)$ 個の $b$ であったとする。ただし、 $a\lt b$, $0\lt m\lt 8$ とする。このとき、 $\bar{y}$ は $m$ と $a,b$ を用いて、\[ \bar{y}=\frac{ma+(8-m)b}{8} \]と表せる。また、 $t^2$ は $m$ と $a,b$ を用いて、 $t^2=\dBox{ツ}$ と表すことができる。
$\dbox{ツ}$ の解答群
0: $\dfrac{m(8-m)(a-b)^2}{8}$
1: $\dfrac{m(8-m)(a+b)^2}{8}$
2: $\dfrac{m(10-m)(a-b)^2}{10}$
3: $\dfrac{m(10-m)(a+b)^2}{10}$
4: $\dfrac{m(8-m)(a-b)^2}{64}$
5: $\dfrac{m(8-m)(a+b)^2}{64}$
6: $\dfrac{m(10-m)(a-b)^2}{100}$
7: $\dfrac{m(10-m)(a+b)^2}{100}$
解説
(3)
(i)
分散は、「2乗の平均 引く 平均の2乗」で求めることもできます(参考:【標準】データの分散)。これを使います。2乗の平均とは、 $m$ 個の $a^2$ と $(8-m)$ 個の $b^2$ の平均だから、 $\dfrac{ma^2+(8-m)b^2}{8}$ となります。平均の2乗は $\left(\dfrac{ma+(8-m)b}{8}\right)^2$ なので、これらを使えば、 $t^2$ の値は
\begin{eqnarray}
& & \frac{ma^2+(8-m)b^2}{8}-\left(\frac{ma+(8-m)b}{8}\right)^2 \\[5pt]
&=& \frac{ma^2+(8-m)b^2}{8}-\frac{m^2a^2+2ma(8-m)b+(8-m)^2b^2}{64} \\[5pt]
&=& \frac{8ma^2-m^2a^2-2m(8-m)ab+8(8-m)b^2-(8-m)^2b^2}{64} \\[5pt]
&=& \frac{m(8-m)a^2-2m(8-m)ab+m(8-m)b^2}{64} \\[5pt]
&=& \frac{m(8-m)(a^2-2ab+b^2)}{64} \\[5pt]
&=& \frac{m(8-m)(a-b)^2}{64} \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。
ちなみに、もし $a=b$ だったとすると、分散は $0$ になるので、奇数の選択肢はすべて正しくないとわかります。また、個数が $8$ 個なので、 $10$ に関連する 2 と 6 の選択肢も正しくないとわかります。
解答
ツ:4 (3点)
解答編 つづき
問題
(ii) ある演技において、4人の $\bigcirc \llap{\text{あ}}$ ~ $\bigcirc \llap{\text{え}}$ の「元の評点」が、表1の結果であった場合を考える。
表1 選手 「もとの評点」 $\bigcirc \llap{\text{あ}}$ $1,4,4,4,4,5,5,5,5,5$ $\bigcirc \llap{\text{い}}$ $1,3,3,4,4,4,4,4,4,5$ $\bigcirc \llap{\text{う}}$ $1,2,2,2,2,4,4,4,4,4$ $\bigcirc \llap{\text{え}}$ $1,1,1,1,1,1,1,3,3,4$ 表1の4人の選手のうち、 $t^2$ が最も大きい選手は $\dBox{テ}$ である。
$\dbox{テ}$ の解答群
0: $\bigcirc \llap{\text{あ}}$
1: $\bigcirc \llap{\text{い}}$
2: $\bigcirc \llap{\text{う}}$
3: $\bigcirc \llap{\text{え}}$
解説
調整後の評点を考えると、どの選手も2種類なので、(3)(i)の結果が使えます。結局、 $m(8-m)(a-b)^2$ が最大のものを選べばいいです。
$m$ | $a$ | $b$ | $m(8-m)(a-b)^2$ | |
$\bigcirc \llap{\text{あ}}$ | $4$ | $4$ | $5$ | $16$ |
---|---|---|---|---|
$\bigcirc \llap{\text{い}}$ | $2$ | $3$ | $4$ | $12$ |
$\bigcirc \llap{\text{う}}$ | $4$ | $2$ | $4$ | $64$ |
$\bigcirc \llap{\text{え}}$ | $6$ | $1$ | $3$ | $48$ |
以上より、$\bigcirc \llap{\text{う}}$ の選手だとわかります。
解答
テ:2 (2点)