【標準】複数の文字の入った整式の割り算
ここでは、複数の式が入った場合の整式の割り算を考えていきます。1つの文字に着目し、他の文字は定数のように扱うのがポイントです。
複数の文字の入った整式の割り算
(1) A, B を x についての整式だとみて、 A を B で割ったときの、商と余りを求めなさい。
(2) A, B を y についての整式だとみて、 A を B で割ったときの、商と余りを求めなさい。
まず、(1)を考えましょう。
x についての整式と見るので、まずは、 A, B を x の降べきの順にします。こうすることで、「まだ割れるかどうか」がわかりやすくなります。
$A = x^2 +(2y+3)x +y^2+4y+5$, $B=x+y+1$ となります。
A を B で割るには、普通は筆算を使いますが、ここでは筆算を使わずに計算していきましょう(ただし、実質的に、筆算と同じ計算をしています)。
まず、 A の最高次数の項は $x^2$ です。なので、 B で割ったときの商として、まず $x$ が出てきます。 $xB$ を計算すると
\begin{eqnarray}
xB
&=&
x(x+y+1) \\
&=&
x^2+(y+1)x \\
\end{eqnarray}となります。これを A から引けば、 $x^2$ の項は消え、残りは\[ (y+2)x +y^2+4y+5 \]となります。この最高次数の項は $(y+2)x$ なので、商には $y+2$ がでてきます。 $(y+2)B$ を計算すると
\begin{eqnarray}
(y+2)B
&=&
(y+2)(x+y+1) \\
&=&
(y+2)x+(y+2)(y+1) \\
&=&
(y+2)x +y^2+3y+2 \\
\end{eqnarray}となります。これを先ほどの結果から引けば、残りは
\begin{eqnarray}
& &
(y^2+4y+5) -(y^2+3y+2) \\
&=&
y+3 \\
\end{eqnarray}となります。この結果は、 $B=x+y+1$ よりも次数が低いので、これ以上割ることはできません。
以上から、商は $x+y+2$ で、余りは $y+3$ となります。
なお、この結果から、次の式が成り立ちます。\[ A=(x+y+2)B+y+3 \]上の計算では、商を $x$, $y+2$ の順に求めたことになります。
別の文字に着目した割り算
(1) A, B を x についての整式だとみて、 A を B で割ったときの、商と余りを求めなさい。
(2) A, B を y についての整式だとみて、 A を B で割ったときの、商と余りを求めなさい。
(2)は、同じ割り算ですが、違う文字に着目して計算します。ここでも、降べきの順にしておきます。
$A = y^2 +(2x+4)y +x^2+3x+5$, $B=y+x+1$ となります。
先ほどと同じように、筆算を使わずに考えてみましょう。
A で一番次数の高い項は $y^2$ なので、 B で割ったときの商として、まず $y$ が出てきます。 $yB$ を計算すると
\begin{eqnarray}
yB
&=&
y(y+x+1) \\
&=&
y^2 +(x+1)y \\
\end{eqnarray}となります。これを A から引けば、残りは $(x+3)y+x^2+3x+5$ となります。この最高次数は $(x+3)y$ なので、 $B=y+x+1$ で割ると、商は $x+3$ となることがわかります。 $(x+3)B$ を計算すると
\begin{eqnarray}
(x+3)B
&=&
(x+3)(y+x+1) \\
&=&
(x+3)y +(x+3)(x+1) \\
&=&
(x+3)y +x^2+4x+3 \\
\end{eqnarray}となります。これを先ほどの残りから引けば、 $-x+2$ となります。これは B より次数が低いので、これ以上割ることはできません。
よって、商は $y+x+3$ で、余りは $-x+2$ となります。
なお、この結果から、次の式が成り立ちます。\[ A=(y+x+3)B -x+2 \]上の計算では、商を $y$, $-x+2$ の順に求めたことになります。
(1)と(2)の結果を比較するとわかりますが、注目する文字によって、商と余りは変わることがあります。
おわりに
ここでは、複数の文字が入っていた場合の、整式の割り算についてみました。1つの文字に着目し、降べきの順に並べてから割るようにしましょう。他の文字は定数のように考えて、文字が1つのときと同じように計算しましょう。