【標準】数列の極限
ここでは、工夫をして数列の極限を求める問題を考えていきます。
数列の極限(カッコでくくる)
【基本】数列の極限の性質で見たように、収束する数列同士の差や商の極限は、極限値を使って求めることができます。しかし、発散する場合には、【基本】数列の極限(無限大÷無限大の形)で見たような、工夫をして計算をする必要があります。
$n^2$, $3n$ は、どちらも正の無限大に発散します。この差 $n^2-3n$ の極限は、「無限大引く無限大だから0」ということにはなりません。「無限大」は普通の数のような計算はできません。
今の場合は、 $n^2$ の方が大きくなるスピードが速いです。そのため、次のように変形してみます。\[ n^2-3n=n^2 \left(1-\frac{3}{n}\right) \]カッコの中は $1$ に収束します。 $n=1,2,3$ のとき、カッコ内は負や0となりますが、 $n$ を大きくしていくと、 $1$ に近づく、つまり、正の値をとるようになります。また、カッコの前にある $n^2$ は限りなく大きくなっていきます。そのため、\[ \lim_{n\to\infty}(n^2-3n)=\infty \]となります。
「無限大引く無限大」の形になる場合、もっとも影響の大きいものでくくることで、極限値を求めることができる場合があります。他の例も挙げると、
\begin{eqnarray}
\lim_{n\to\infty}(3n^2-5n^3)=\lim_{n\to\infty}n^3\left(\frac{3}{n}-5\right)=-\infty
\end{eqnarray}となります。
数列の極限(分母分子を割る)
分母と分子は、それぞれ正の無限大に発散します。こういう場合は、【基本】数列の極限(無限大÷無限大の形)で見たように、分母分子を同じ数で割って考える、というのがよく使われる手法です。
今の場合、分子を $n$ で割れば、収束するようになります。また、分母も計算すれば収束するようになり、
\begin{eqnarray}
\lim_{n\to\infty}\frac{2n+4}{\sqrt{n^2+3n+5} }
&=&
\lim_{n\to\infty}\frac{2+\frac{4}{n} }{\frac{1}{n}\sqrt{n^2+3n+5} } \\[5pt]
&=&
\lim_{n\to\infty}\frac{2+\frac{4}{n} }{\sqrt{1+\frac{3}{n}+\frac{5}{n^2} }} \\[5pt]
&=&
2 \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。最後の式の部分は、 $\dfrac{2+0}{\sqrt{1+0+0}}$ と考えたわけですね。
影響の一番大きいところを考えればいいので、例えば\[ \lim_{n\to\infty}\frac{n(n+1)(n+2)}{(2n+1)(2n+3)(2n+5)} \]を考えたいときは、分母・分子を $n^3$ で割って、\[ \lim_{n\to\infty}\frac{\left(1+\frac{1}{n}\right)\left(1+\frac{2}{n}\right)}{\left(2+\frac{1}{n}\right)\left(2+\frac{3}{n}\right)\left(2+\frac{5}{n}\right)} \]と変形します。こうすれば、 $\dfrac{1}{8}$ と求められますね。分母・分子を展開する必要はありません。
数列の極限(有理化)
これは、はじめと同じ、「無限大 引く 無限大」の形ですが、 $n$ でくくっても計算できません。\[ n \left(\sqrt{1+\frac{1}{n} }-1\right) \]となりますが、このような「無限大 掛ける 0」の形も、ケースによって答えが変わってきます。それは、\[ n^2\times \frac{1}{n^3},\ n^2\times \frac{1}{n^2},\ n^2\times \frac{1}{n}\]の3つの例を考えればわかるでしょう。どれも、「無限大 掛ける 0」の形になっていますが、それぞれ、極限は、 $0$, $1$, 正の無限大、となります。
これは自力で思いつくのはなかなか難しいですが、分母の有理化のときに行った変形(参考:【標準】分母に項が複数あるときの有理化)を応用して求めることができます。
\begin{eqnarray}
& &
\lim_{n\to\infty} (\sqrt{n^2+n}-n) \\[5pt]
&=&
\lim_{n\to\infty} \frac{(\sqrt{n^2+n}-n)(\sqrt{n^2+n}+n)}{\sqrt{n^2+n}+n} \\[5pt]
&=&
\lim_{n\to\infty} \frac{(n^2+n)-n^2}{\sqrt{n^2+n}+n} \\[5pt]
&=&
\lim_{n\to\infty} \frac{n}{\sqrt{n^2+n}+n} \\[5pt]
&=&
\lim_{n\to\infty} \frac{1}{\sqrt{1+\frac{1}{n} }+1} \\[5pt]
&=&
\frac{1}{2}
\end{eqnarray}最後の部分は、2つ目の例題で見た手法を使って、分母・分子を $n$ で割っています。こうすることで、極限を求めることができます。
おわりに
ここでは、「無限大 引く 無限大」「無限大 割る 無限大」「無限大 掛ける 0」といった形となる場合の数列の極限を求める方法を見ました。ここで使った手法は今後もよく出てくるので、使えるように練習しておきましょう。