【標準】等比数列の極限
ここでは、等比数列を含んだ数列の極限を求める問題を見ていきます。
等比数列を含んだ数列の極限その1
【基本】等比数列の極限で見た通り、 $\{r^n\}$ の極限は、 $r=1$ や $r=-1$ を境目にして状況が変わるのでした。今の場合、 $3^n$ は公比が1より大きいため、無限大に発散し、 $(-2)^n$ は公比が-1より小さいため、振動します。
こういう収束しないもの同士の場合は、【標準】数列の極限で見たように、うまく変形する必要があります。式を見てわかると思いますが、 $3^n$ のほうが $(-2)^n$ よりも値の大きさの影響が大きいですね。なので、極限は正の無限大に発散することがわかります。このことをはっきりと示すなら、次のようになります。
\begin{eqnarray}
& &
\lim_{n\to\infty} \{ 3^n+(-2)^n \} \\[5pt]
&=&
\lim_{n\to\infty} 3^n\left\{1+\left(-\frac{2}{3}\right)^n\right\}
\end{eqnarray}$\left(-\frac{2}{3}\right)^n$ の部分は、公比の絶対値が1未満なので、波かっこの中は、1に収束します。その結果、 $3^n$ の影響が大きくなり、正の無限大に発散することがわかります。
奇数のときには、 $(-2)^n$ は負の数で、絶対値が大きくなっていきますが、それよりも $3^n$ の影響が大きいため、打ち消されてしまうんですね。
なお、 $\displaystyle \lim_{n\to\infty} \{ 3^n+(-3)^n \}$ や $\displaystyle \lim_{n\to\infty} \{ 3^n+(-4)^n \}$ の場合は、どちらも振動します。
等比数列を含んだ数列の極限その2
今度は、分母も分子も正の無限大に発散します。こういう場合は、【標準】数列の極限で見たように、分母・分子を同じ数で割るといいのでした。
今の場合、分母・分子の大きさに一番影響を与えるのは、 $3^n$ なので、これで分母・分子を割ってみましょう。
\begin{eqnarray}
& &
\lim_{n\to\infty} \frac{3^n-2^n}{3^{n+1}+2^{n+1} } \\[5pt]
&=&
\lim_{n\to\infty} \frac{1-\left(\frac{2}{3}\right)^n}{3+2\left(\frac{2}{3}\right)^n} \\[5pt]
\end{eqnarray}ここで、分母と分子にある $\left(\dfrac{2}{3}\right)^n$ は公比が正で1未満なので、0に収束します。よって、分母と分子は収束するため、極限は\[ \frac{1}{3} \]と求められることがわかります。 $\dfrac{1-0}{3+0}$ になるということですね。
おわりに
ここでは、等比数列を含んだ極限について見てきました。最終的には「公比の値のチェック」になるのですが、そこに至るまでに式変形が必要な例を見ました。式のうち、大きさに一番影響を与える部分はどこか、を意識して式変形をしましょう。