【標準】因数分解と方程式の整数解
ここでは、因数分解を利用して、積の形を作り、方程式の整数解を求める問題を見ていきます。
積と方程式の整数解
$xy=2$ となるような $x,y$ の組は、範囲に制限をつけなければ無数に存在します。しかし、例えば、「 $x,y$ は自然数」と限定すると、 $(x,y)=(1,2),(2,1)$ の2組にしぼることができます。
また、「 $x,y$ が整数」という限定の仕方だと、上の組に加えて $(-1,-2),(-2,-1)$ も満たします。
解が自然数や整数という制限があり、積に関する条件が分かっているなら、解を絞り込むことができます。これは、方程式の整数解を求めたい場合に、よく使われる手法の1つです。
因数分解と方程式の整数解
実際には、「 $xy=2$ を満たす整数解は?」といったシンプルな問題はありません。次のようにちょっとひねった形になることがほとんどです。
$xy=13$ だったら簡単だったのですが、余計な $+4x-2y$ がついています。「積がいくつになるか」という情報があれば、後は絞り込むのは簡単なのですが、こういう余分なものがついていると、困りますね。
何とか積の形に変形できればいいのですが、今の場合、左辺を因数分解することはできません。しかし、よく考えてみると、左辺を完全に因数分解する必要はないんですね。 $x,y$ を含んだ項の係数は変更することはできませんが、定数の項は好きにいじれます。定数の部分を無視して、左辺がもし因数分解できたとすると、次のようになるでしょう。\[ (x-2)(y+4) \]これを展開すると、 $xy+4x-2y-8$ となり、たしかに、 $x,y$ を含んでいる項の係数は同じです。これを利用すれば、
\begin{eqnarray}
(x-2)(y+4)
&=&
xy+4x-2y-8 \\[5pt]
&=&
13-8 \\[5pt]
&=&
5
\end{eqnarray}となることがわかります。つまり、 $(x-2)$ と $(y+4)$ の積が $5$ だ、ということですね。ここまでくれば、この2つは、 $(1,5)$, $(5,1)$, $(-1,-5)$, $(-5,-1)$ の4組しかないので、これらから\[ (x,y)=(3,1),(7,-3),(1,-9),(-3,-5) \]の4組が解になる、ということがわかります。
このように、「整数解を求めるときには、積の値から絞り込むことができる」という発想から、上のような因数分解のような変形をして、解を求めるケースがあります。
また、1つの文字を消去する、という発想で考えることも可能です。例えば
\begin{eqnarray}
xy+4x-2y &=& 13 \\[5pt]
(x-2)y &=& 13-4x \\[5pt]
\end{eqnarray}と変形できます。ここで、 $x=2$ とすると、左辺は $0$ で右辺は $0$ 以外となるので、一致することはありません。だから、 $x\ne 2$ なので、
\begin{eqnarray}
y &=& \frac{13-4x}{x-2} \\[5pt]
&=& \frac{13-4(x-2)-8}{x-2} \\[5pt]
&=& -4+\frac{5}{x-2} \\[5pt]
\end{eqnarray}と変形できます。ここで、 $y$ が整数となるには、最後に出てくる分数の部分が整数となればよく、 $x-2$ が $5$ の約数のときを考えればいい、ということがわかります。ここまで絞り込めれば後は簡単ですね。先ほどと同じ結果を得ることができます。
どちらも、ちょっと式変形がややこしいですが、整数解を求めるときの典型的な「絞り込み方」なので、マスターしておきましょう。
おわりに
ここでは、方程式の整数解を求めるときに、積の形にするために因数分解のような変形を行う方法を見ました。文字を含んだ係数は動かせませんが、定数は動かせます。そのため、展開をしたらうまく文字を含んだ係数があうような式を使うようにしましょう。