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【応用】方程式の整数解と不等式

ここでは、方程式の整数解を求めるときに、不等式を利用して解を絞り込む方法を見ていきます。

📘 目次

方程式の整数解と不等式(積と和)

例題1
$1\lt x\leqq y \leqq z$ である整数 $x,y,z$ のうち、次を満たすものを求めなさい。\[ xyz=x+2y+3z \]

条件がすごく少なく、どこから手を付けていいのかわかりにくいですね。

ここで注目すべきなのは、左辺が積で右辺が和だということです。なので、例えば $x=100$ なんてことにはなりません。左辺はすごく大きくなってしまう一方、右辺はそんなに大きくなりません。つまり、 $x,y,z$ は、あまり大きな数にはなりません。大きさの制限があります。

右辺は大きくなりにくいのですが、具体的にどれくらいの大きさになるでしょうか。与えられている不等式を利用すれば、
\begin{eqnarray} x+2y+3z\leqq z+2z+3z=6z \end{eqnarray}となることがわかります。つまり、右辺は高々 $6z$ です。左辺と比べて小さいですね。

これはとても重要な制限です。右辺が $6z$ 以下なら、左辺も $6z$ 以下だから\[ xyz\leqq 6z \]が成り立つので、\[ xy\leqq 6 \]となることがわかります。 $z$ は正の数なので、これで割ったということですね。 $1\lt x \leqq y$ なので、 $(x,y)=(2,2),(2,3)$ の組合せしかないことがわかります。

ここまで絞り込めれば、もう後は地道に代入していけばいいですね。 $(x,y)=(2,2)$ のときは\[ 4z=6+3z \]なので、 $z=6$ となります。これは条件を満たしています。また、 $(x,y)=(2,3)$ のときは、\[ 6z=8+3z \]なので、整数解はありません。

以上から、 $(x,y,z)=(2,2,6)$ となることがわかります。

方程式の整数解と不等式(分数)

例題2
$1\lt x\leqq y \leqq z$ である整数 $x,y,z$ のうち、次を満たすものを求めなさい。\[ \frac{1}{x}+\frac{1}{y}+\frac{1}{z}=1 \]

これも、やはり、どこから手を付けていいかわかりにくいですが、まずは、範囲を絞り込めないかどうかを考えます。

$x$ が大きいと、左辺はすごく小さくなってしまいます。なので、この問題でも、大きさの制限があります。今、条件式の不等式から、\[ \frac{1}{z}\leqq \frac{1}{y}\leqq \frac{1}{x} \]なので、左辺は $\dfrac{3}{x}$ 以下であることがわかります。よって、
\begin{eqnarray} \dfrac{3}{x} & \geqq & 1 \\[5pt] x & \leqq & 3 \end{eqnarray}となることがわかります。よって、 $x=2,3$ と絞りこめます。(ちなみに、もし条件式が $1\lt x$ ではなく $1\leqq x$ となっていたとしても、 $x=1$ になることはありません。 $x=1$ のときは、左辺が $1$ より大きくなってしまうからです。)

あとは、地道にやっていける量でしょう。 $x=2$ のときは、\[ \frac{1}{y}+\frac{1}{z}=\frac{1}{2} \]となります。【標準】因数分解と方程式の整数解で見た内容でやってみましょう。両辺に $2yz$ を掛ければ
\begin{eqnarray} 2z+2y &=& yz \\[5pt] yz-2y-2z &=& 0 \\[5pt] (y-2)(z-2) &=& 4 \\ \end{eqnarray}と書けます。これより、 $(y-2),(z-2)$ は4の約数なので、条件を満たすものを考えれば、\[ (y,z)=(3,6),(4,4) \]となります。

$x=3$ のときは、\[ \frac{1}{y}+\frac{1}{z}=\frac{2}{3} \]となります。上と同じようにやってみます。整数の積の形になるように少し強引な変形もありますが、両辺に $3yx$ を掛けて
\begin{eqnarray} 3z+3y &=& 2yz \\[5pt] 2yz-3y-3z &=& 0 \\[5pt] (2y-3)\left(z-\frac{3}{2}\right) &=& \frac{9}{2} \\[5pt] (2y-3)(2z-3) &=& 9 \\ \end{eqnarray}と変形できます。これより、 $(2y-3),(2z-3)$ は9の約数なので、条件を満たすものを考えれば、\[ (y,z)=(3,3) \]となります。

なお、 $x=3$ の場合は、次のように求めてもいいでしょう。 $\dfrac{1}{y}+\dfrac{1}{z}\leqq \dfrac{2}{y}$ だから、
\begin{eqnarray} \frac{2}{y} & \geqq &\frac{2}{3} \\[5pt] y & \leqq & 3 \\[5pt] \end{eqnarray}となり、 $y=3$ が得られ、条件式に代入して $z=3$ も得られます。

以上のことから、解は、\[ (x,y,z)=(2,3,6),(2,4,4),(3,3,3) \]となることがわかりました。

おわりに

ここでは、整数解を求めるときに、不等式を用いて解の範囲を制限してから考える問題を見ました。一番大きいもの、小さいものに着目して、「等式を満たすなら、解はこの範囲だ」というのを求めることができました。

整数解を求めるときに、積の値からしぼっていくやり方もありますが、ここで見たように、大きさで絞っていくやり方もあります。慣れないと思いつきにくいですね。

また、問題によっては、 $x\leqq y\leqq z$ といった条件式がない場合もあります。そのときは、自分で大小関係を仮定して、解を絞っていく必要があります。そうなると、さらに難易度が上がります。こういうときは、「条件を満たす解は、大きさの制限があるようだ」ということに気づかなければいけません。条件式に具体的な値を入れてみて、試行錯誤するうちに思いつくしかないでしょう。

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